ノ・ムヒョン政権の2年―「改革」の総体的失敗
労働者・民衆運動をかく乱し、人間らしい生活を破壊
ノ政権に対する大衆的評価
同じような時期に出発したブラジルのルラ政権に対する大衆的期待が暴落したのと似ていて、ノ・ムヒョン政権に対する大衆的評価もまた極めて否定的だ。特に、労働者・民衆の立場からすれば、ノ・ムヒョン政権は悪夢そのものだった。
最近、執権2年を迎え、権力の核心である青瓦台(大統領府)の参謀たちは「政治的、社会的津波」と「葛藤の総合展示場」の中で「権威主義の打破には成功したものの、地域主義の克服には失敗した」式の我田引水的自己評価を下した経過があるが、これらの人々にとって苦痛を与えられている労働者・民衆の暮らしは眼中にさえない。
執権3年目を迎えた年頭の記者会見で明らかにされた2005年の3大課題、すなわち「①経済の再生②韓(朝鮮)半島の平和定着③国民統合」はノ・ムヒョン政権の新自由主義的改革が総体的に失敗したことを反証するものだ。長期不況に対する事実上の無策、米国の敵対的介入攻勢下で漂流している対北政策、いわゆる民主改革に対する労働者・民衆の抵抗にぶち当たって失敗した改革、時の経過とともに一層悪化する社会的両極化に対する現政権なりの苦悩と処方とが盛り込まれているというわけだ。
政治改革の失敗と新自由主義
ノ・ムヒョン政権の執権2年は文字通り02年の大統領選挙と同様に、劇的な状況の連続だった。特に、その頂点は04年初の弾劾政局であったし、弾劾政局を5月総選挙で突破したという点において、彼は政治的勝利者だったけれども「首都移転違憲判決」や「4大改革立法の漂流」は弾劾の成果を半減させる深刻な政治的敗北だった。
ノ・ムヒョン政権は基本的に前任のキム・デジュン政権を継承し、新自由主義と親米の基調を維持したにもかかわらず、野党ハンナラ党をはじめとする守旧・反改革勢力に対する権力闘争において主導権を握れないまま、絶えず動揺し、右往左往の様相を呈した。支配階級内の反対勢力の執拗な抵抗を鎮められないまま、言論界や財閥、法曹界などと絶えず衝突した。
改革対保守の対立の構図を通じて市民運動や労働者・民衆運動の一部を動員することによって階級的勢力の構図の再編を図ったものの、これまた可視的成果はあげれなかった。だが労働運動を中心に運動陣営全般に対する全方位的工作と特に社会的合意主義攻勢は、よしんば制度的完成段階に突入しているとまでは言えないとしても、労働者・民衆運動の闘争エネルギーをかく乱させ、特に大工場の労働組合に対するイデオロギー攻勢を通じて抵抗の刃を鈍らせることには成功した。特に、非正規職保護の美名の下で推進していた改悪立法案は国家保安法の廃止論争と重なり合いつつ、労働者・民衆運動の闘争戦線をかく乱させる適切なカードだった。
低成長と社会的両極化構造
現在の長期不況は「大きく心配するレベルではない」とする政府与党の安逸な評価とは対照的に、97~98年の経済危機に対する誤った処方の結果として深化した「経済的不確実性の中での経済的両極化の深化」は一層、加速化された。輸出の好調と内需の沈滞、好況業種と不況業種、独占大資本と中小資本間の重層的両極化は政府の対症療法的政策によっては解消できない構造として固定化している。
輸出増加率は02年8・0%から03年19・3%へと成長し、04年には31・2%と史上最大の実績を挙げた。経常収支も53億9千万ドルの黒字から119億5千万ドル、276億1千万ドルの黒字へと増加するとともに、1人当たりの国民所得(GNI)も02年11493ドルから03年12246ドル、04年14000ドル内外と推定されるなど、持続的増加の流れを示している。外貨保有額も2千億ドルを超え、97年末の通貨危機当時の39億ドルの50倍に達する規模だ。
だが輸出好況中心の外形的成長の成果は、甚だしい内需不振によって削減されている。任期中は6%成長を維持するとしていたノ・ムヒョン政権の公約は02年7・0%、03年3・1%、04年4・7%など、急激な低成長の流れの中で空手形となっている。特に輸出と内需のアンバランスな両極化は外華内貧の経済構造を固定化させると同時に、貧富の格差の拡大および階級的両極化を通して労働者・民衆の生存や人間らしい暮らしを根底から脅かしている。
失業率・非正規職の増加
一方、失業率は02年3・1%から03年3・4%、04年3・5%、今年初めには3・9%まで増加した。失業者数も70万8千人から03年77万7千人、04年には81万三千人へと増加するとともに、青年の失業は昨年7・9%で、99年の10・9%以降、最悪の状況だ。不完全雇用状態にある準失業者もまた平均348万5千人で03年の329万4千人よりも6・1%増加した。
04年8月の統計庁発表によれば、非正規職労働者は全産業平均55・4%で、全体で1415万人のうち784万人が非正規職で雇用されている。これらのうち派遣労働者11万7千人、用役勤労者41万3千人、特殊雇用形態が71万1千人、日雇い勤労者66万6千人、家庭内労働者が17万1千人に達し、労働者階級の非正規職化の傾向は一層、加速化している。
労働者たちの内部の賃金格差も拡大している。500人以上の産業体1人当たり月平均の賃金総額を基準(100)とすると、30~99人の事業体は90年77・2%から03年65・9%へと下落し、10~29人の事業体は74・1%から59・4%に、5~9人の事業体は99年59%から03年50・7%に下がって労働者間の賃金格差もまた時の経過とともに拡大している。
そればかりではない、社会的貧困が構造化されるとともに全貧困世帯(世帯所得が全体の平均所得の50%以下)の半分以上は、就業者のいる「働いている貧困世帯」だった。反面、最近の韓国銀行の統計によれば個人所得の増加率は2・6%であるのに比して企業所得の増加率は38・7%に達し、家計所得と企業所得の間の両極化も深まっていることがあらわになった。
北朝鮮の核問題と6者会談
ノ・ムヒョン政権が、ほとんど唯一ちゃんとやっている政策として掲げた対北政策もまた難関にぶつかっている。基本的にはキム・デジュン政府の太陽政策を継承したノ・ムヒョン政権は南北経協と南北和解政策を中心に韓(朝鮮)半島の平和定着方案を推進してきたものの、対外的にはブッシュ政権とネオコンの攻勢、国内的には守旧・反共諸勢力の抵抗によって、ハッキリした解決策を見いだせずにいる。特に北核危機と6者会談の局面で、北韓(北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国)と米国の間で主導性を全く発揮できないまま、中国の仲裁に頼るばかりである。
ノ・ムヒョン政権のこのようなジレンマは米国の圧力の下で、大衆的抵抗を押し切って強行したイラク派兵においても続いている。これまでのところ幸いにも(?)韓国軍の犠牲者がいないので、一部の平和運動および民衆運動陣営の反対を除けば、おおむね容認されてはいるものの、日本の小泉右派政権とともに、イラク武装抵抗闘争によって決定的危機に直面したブッシュ政権を支援することにより、国際的孤立を自ら招く愚を犯すこととなる。
また駐韓米軍の移転交渉においても対米屈従的態度を堅持することによって、韓米軍事同盟体制下で米国帝国主義の下手人の役割に忠実だった。
特に04年11月の米国大統領選挙において期待していたブッシュの敗北がなくなってしまったことにより、ノ・ムヒョン政権のジレンマは一層、加重されている。さらに、ネオコン勢力の米行政内前進配置によって政治・軍事的不安が高まっている。けれどもノ・ムヒョン政権は明確な対策を持てずにおり、現政権の政策基調や外交力は極めて微々たる水準であるがゆえに、韓半島情勢に対する憂慮は増幅されている。
階級的基盤と政治的力量が相対的に脆弱なノ・ムヒョン政権は、この2年間、自らの脆弱性を一方で新自由主義的グローバリゼーションの受容および米国帝国主義との協力を通して補完し、他方で深まりゆく社会的・階級的両極化と漸増する労働者・民衆の不満に対して直接的弾圧攻勢や間接的包摂工作を通じて巧妙にすかしなだめてきた。特に、市民運動や労働者・民衆運動右派の政治的動揺は、ノ・ムヒョン政権の新自由主義的攻勢に立ち向かった闘争戦線を絶えずかく乱する要因だった。
この半世紀の間、この国の労働者・民衆運動は数多くの政治的・社会的激変を通して社会的進歩をかちとりつつ前進してきた。時として政治権力に欺かれはしたものの、結局は自らの力によって、闘いによって、それらを審判した。
この2年間、ノ・ムヒョン政権の階級的本質や反民衆性・反労働者性は一層露骨に表れている。新自由主義的改革の制度的完成のためのノ・ムヒョン政権の総体的攻勢と対決し、特に労働者全体の非正規職化ならびに社会的包摂攻勢と対決して労働者・民衆運動は断固たる決戦を準備しなければならない。(「労働者の力」第72・73号、05年2月25日付、ウォン・ヨンス/編集委員長)
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