国有化代案の議論を本格化する時

かけはし 第2660号 2021年4月5日

ムン・ジェイン政府と産業銀行

機関紙委員会

 莫大な公的資金が投入された基幹産業を売却したり、民営化する事態が相次いで起こっている。主役はムン・ジェイン政府と産業銀行である。現代重工業と大韓航空がそれぞれ買収手続きを進めている大宇造船海洋とアシアナ航空はもちろんのこと、昨年末、売却交渉対象者が選定された韓進重工業に続き、最近では、HMM(旧現代商船)まで民営化説が報道されている。これらの企業は、すべて破産の危機に直面して、産業銀行が最大株主になることで、事実上の国有企業へと転換するのか(大宇造船海洋、韓進重工業、HMM)大規模な金融支援を受ける(アシアナ航空)など公的資金の投入で生きのびたところである。しかし、政府と産業銀行は、強力な構造調整で労働者の犠牲を強要する一方で、他の民間資本(主に財閥大企業)に売り渡すことばかりに没頭している。典型的な「損失の社会化-利益の私有化」だ。
 こうした中で、1月27日、民主労総で「造船・航空など基幹産業の財閥特恵による売却対応のための政策討論会」が開かれた。いったん引き継ぎで協約が締結されてすぐに本格的な合併手続きを進めている大宇造船海洋とアシアナ航空の問題を中心に売却と構造調整に立ち向かう共同闘争を考える出発点としての意味を持った席だった。

チョン氏一家に
造船産業貢ぐのか

 大宇造船海洋とアシアナ航空は公的資金投入の基幹産業の財閥特恵売却という共通点がある。また、政府と産業銀行が、このような方法での売却・民営化を押し進めようとしている点で、これを阻止して国有化の代案を提起する戦いを一つの典型として作り上げることができるかという問題は、今後、他の構造調整事業場闘争にも(展望が見つからず、政府と使用者側の脅迫に屈するのか、労働者の代案を持って闘って見るのかの分かれ目で)かなりの影響を与えるものだ。
討論会では、まず、現在の本格的な段階にきている2企業の売却がどのような深刻な問題点を内包・予告しているかどうかについての分析が提示された。大宇造船海洋に関する問題を提起したイ・スンチョル変革党執行委員長は「現代重工業が単独6500億ウォンをかけて2018年基準の営業利益1兆ウォンを記録した大宇造船を横取りするだろう」と指摘したが、はなはだしくはこの過程で、既存の大宇造船最大株主(持分率55・7%)の産業銀行が会社を引き渡す代価として受け取るのは、現代重工業の中間持株会社である「韓国造船海洋」(現代重工業グループが大宇造船を買収するために新たに分割・新設する法人)の「株式」だけで、現金で受け取る代金はない。
これとは別に、現代重工業グループは、そしてその総帥一家であるチョン・モンジュン―チョン・ギソンの金持ちはたっぷりと利益を享受する。大宇造船は、2015年ごろから、強力な構造調整を進めながら5000%を超えていた負債比率を200%に下げ財務上、通常企業にほぼ近づいており、2017年から3年連続で営業利益の黒字を記録し、LNG運搬船のように収益性が高い高性能の船舶受注を獲得するなど、引き継ぎ会社としては選り抜き企業になった。そのように下請労働者の大量解雇をはじめ、労働者に強要した犠牲と莫大な公的資金をもとに、財務状態を変えた後、現代重工業グループに安値で売ってしまうのだ。
それだけでなく、現代重工業総帥チョン氏一家の支配力はさらに強化される。2017年から持株会社体制への移行過程で「自社株の魔法」という汚いやり口で持ち株比率を3倍まで膨らませた総帥一家は大宇造船の買収を通して、「チョン氏一家→現代重工業持ち株→韓国造船海洋(中間持ち株)→事業会社(大宇造船・現代重工業・ミポ造船・サモ重工業)」につながる支配構造を完成することになる。イ・スンチョル同志は「そうなれば、△世界の1―2位の造船所を自分の支配構造最下段に編制することができ、△すぐにも7兆ウォンを超える事業負債を支配構造の下層で越えて△現金資産は「持株会社高配当政策」を介してチョン氏一家が簡単に持っていくことになる」という点を指摘した。現代重工業総帥一家としては、自分たちのお金はほとんどかけずに安直に、この国の造船産業を実質的に掌握することになる。
一方、労働者はまたしても、構造調整の危機の前に立たされることになる。問題提起によると、現代重工業は、大宇造船の買収契約を締結し、「生産性が維持される限り、雇用を保証する」としたが、「生産性の維持」という条件が労働者の手綱を思うがままにあやつることになるだろう。また一方では、事業会社の利益を現代重工業の持株会社が吸い上げながら「収益悪化」を口実に、構造調整を押しつけることができる。さらに、重複する事業部門の統廃合なども予想される。大宇造船に納品する機資材―産業部門の労働者も生存の脅威に出くわす可能性が大きくなる。この売却が誰の犠牲で誰の船と呼ばれるのか火を見るよりも明らかである。


買収資金あてがい、
総帥の経営権まで援護してあげる

 その上に資本家の経営失敗で危機の真っただ中にあった渦中にコロナ直撃を受け、すでに国家から数兆ウォン規模の支援を受けてきたアシアナ航空の場合には、大韓航空が買収する過程で、かえって、追加の公的資金が入る。アシアナ航空売却の問題点を発表したキム・ナムグン参与連帯政策委員は、韓進グループ持株会社の韓進カルに産業銀行が8000億ウォンを支援するのと同時に、大韓航空が買収資金を調達するために有償増資を実施することにより、現在の大韓航空2大株主である国民年金も資金をより投入しなければならないので、「国民の血税は、産業銀行と国民年金2カ所を通して大韓航空に入る」ことになると指摘した。
ところが、大韓航空のアシアナ航空の買収方式はかなりまれなことである。産業銀行の支援資金は、アシアナ航空を買収する大韓航空ではなく、大韓航空親会社である韓進カルに投入される。いずれにせよアシアナ航空を買収する主体は大韓航空なので、アシアナ航空と同様に経営難に陥った大韓航空は、単独で購入代金を用意することができないので、有償増資を通じて株主から追加資金を集めるが、まさにここで韓進カルが登場して、産業銀行から受け取った資金で有償増資に参加する。それでは、なぜ産業銀行は大韓航空に直接買収資金を支援せずに韓進カルを経る奇妙な迂回路を選んだのだろうか?
ギム・ナムグン委員は「産業銀行が大韓航空ではなく、韓進カルに8000億ウォンの有償増資として投資するのは、経営権紛争中の韓進カルでチョ・ウォンテ会長個人を支援する」ことだと説明した。よく知られているように、韓進グループ総帥チョ氏一家は以前から私募ファンドのKCGIと経営権争いを繰り広げていたが、チョ・ヤンホ会長の死後、総帥一家の中でも紛争が起きて現任のチョ・ウォンテ会長を軸とする既存の経営陣とそれに対抗するKCGI―チョ・ヒョナ連合が負けず劣らずの激しい株式取得争いを展開している。ところが、ここに産業銀行が割り込んで韓進カルに8000億ウォンを支援する代わりに株式を得ることにより、この経営権紛争構図に決定的な変化が生じて、チョ・ウォンテ会長など現経営陣がアシアナ航空を引き受ける代価として、産業銀行が背後で支えてくれる役割をしてくれるならば形勢はワン・ヨンヒとチョ・ウォンテ会長に有利になる。つまり、現在の韓進グループ総帥チョ・ウォンテの立場では、アシアナ航空買収の代金も国から支援を受けるだけでなく、自身の支配権まで公的資金を通してしっかりと固められるのである。
問題はまだある。この日の討論に参加したチョン・ウォンソプ公共運輸労組組織争議局長が提起したように、アシアナ航空を決定的な不良状態まで追いやったのはクモ・アシアナグループ、特にその総帥であるパク・サムグ会長の経営失敗のためであった。2006年に大宇建設、2008年に大韓通運を無理に買収する過程でクモ・グループは、莫大な借金を積み重ねて、このグループの資金源の役割をしていたアシアナ航空も大きな損失を記録し、2008年の経済危機勃発とともに構造調整にまき込まれた。痛みは、すべての労働者が背負ったがパク・サムグは悠々と経営の一線に復帰して、再び今日の経営危機を招いた。ところが、産業銀行はクモ・グループのパク・サムグの経営失敗に対して持分消却など厳重な責任を一切問うていない。
問題提起によると、大韓航空はアシアナ航空の労働者に対して雇用維持の確約を言葉だけではなく、具体的な形で提示しておらず、アシアナ航空の労働組合は、両社の統合時に重複路線が多く重なる業務も相当あるので、構造調整が必然的に発することに懸念を表明した。大宇造船海洋の売却と同様に、大韓航空のアシアナ航空買収も、労働者の犠牲と公的資金で航空産業をチョ氏一家に引き渡すというやり方である。

唯一の代案は、完全な国有化

 また、シン・テホ金属労組大宇造船支会の主席副支会長はこの日の討論会で、過去20年間の産業銀行の管理体制を指して、「形だけの公企業であって、20年間の構造調整継続状態が同じだった」と批判した(大宇造船海洋は、2000年の大宇グループ解体後、20年近く、産業銀行の下にあった)。産業銀行が降りると大宇造船の経営陣は、財務的な構造調整に血眼であっただけだった。つまり、現代重工業に売却されない場合でも、現在の状態を維持することを代替にすることはできないという話だ。アシアナ航空も大韓航空に合併されないとしても、産業銀行がいつまた誰に売り渡すか分からない不安定な状態を維持することに労働者が納得するはずがない。
現状維持も売却もないならば、唯一の代案は、完全な公企業化(国有化)である。しかし、今まで、産業銀行が公的資金の投入で株式を取得したり、債権団の管理下に置くなど、形式国有化だけしておいて構造調整を行った後、民間資本に再売却するというやり方を繰り返してはならない。この日の討論会では、産業銀行を糾弾する主張が多く提起されたが、キム・チョル社会公共研究院研究委員は、産業銀行が公共的運営を放棄したまま損失の社会化だけ招いていると、産業銀行に対する民主的・公共的統制を要求した。「損失の社会化に基づいた一時国有化ではなく、既存の大株主の責任を問い基幹産業に対する公的所有と統制を導入する社会化が必要」だということだ。
ホン・ソンマン真実社会研究所研究委員も最近、双竜車労働者に「スト権を停止しなければ資金支援はない」と明らかにした産業銀行会長のイ・ドンゴルの発言を引用しながら、構造調整に対する絶対的な権限を行使し、憲法上の権利まで公然と侵害する産業銀行のやり方を強く批判した。それと同時に、今まで産業銀行が行った財務的構造調整がただ債務の返済だけに熱を上げて労働者に犠牲を強要したことを指摘した。もちろん現在の売却手続きを進めているいくつかの基幹産業の事業所の場合、国有化がなければ、他の代案はないが、かといって産業銀行に任せておく問題ではないだろう。ホン・ソンマン委員は「『労働(雇用)と環境主導国営化』を進めなければならない」と提起し、「株主と債権者の責任を問い、負債を一掃して、少数の財閥や大株主の支配ではなく、国家と社会が基幹産業を支配する構造で秩序が再編されなければならない」と主張した。
会社の売却がすぐに追加的な構造調整につながるしかないということを労働者たちは、直感している。しかし、これまで「売却阻止―雇用安定」の要求で各社の闘いが個別に行われて、強力な力を構築できていない限界を痛感してきた。また、売却がなくても現状維持では、雇用の安定を達成することが難しいのが現実であり、完全国有化と公共的運営など公的資金投入による公的所有と統制を代案的要求として掲げる共同闘争の建設が求められている。大宇造船海洋とアシアナ航空はもちろん、先に挙げたように、多くの基幹産業の事業所が次々と売却・構造調整の危機の前に置かれている。すでに今年の上半期に大宇造船海洋とアシアナ航空の最終的な買収手続きを控えているだけに、国有化の代案と共同の闘争戦線を作るために議論を今から本格化しなければならない。
(社会変革労働者党「変革政治」121号より)

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