イ・ジュンソク国民の力党代表選出
嫌悪の軌跡を振り返る
社会主義フェミニストの集い<レッドペン>
6月11日、イ・ジュンソクが国民の力党代表に選出された。先のソウル市長選挙から、いわゆる「イデナム」(20代男性を指す)を代弁するとして、様々な議論を作り出してきたが、結局第1野党の代表になった。今回の文章では、むき出しの「アンチフェミニズム」と「無限競争能力主義」を主張して当選したイ・ジュンソクの主要発言を批判し、イ・ジュンソクが「イデナム」はもちろんのこと、彼が誰も代弁することができないことを明らかにしたい。
「フェミニズムがジェンダー葛藤を作る」?
イ・ジュンソクがふくらますジェンダー葛藤
イ・ジュンソクは「フェミニズムが作ったジェンダー枠組みがジェンダー葛藤を加速させた」と「アンチフェミニズム」を支持勢力拡大に利用するのに余念がない。特にオ・セフンがソウル市長に当選したのが「フェミニズムに対する反発」のためだと断言して論争を呼んだ。「オ・セフンの支持がフェミニズムの問題ではなく、就職難のせいでもあったのではないか」というマスコミのインタビュー質問にも「道行く男性誰それを引き留めて聞いてみなさい。フェミニズムのためだと話すだろう。最近〈ハンギョレ〉や〈女性新聞〉など多くが私を批判する。私に何だかんだしないでお金をかけて世論調査をしなさい。存在する現象を否定すれば残るのは妄想だけだ」(「週刊東亜」4月23日付)と一蹴した。フェミニズムを女性の権利のための「思想」ではなく、不必要な「妄想だ」と卑下するのにはばかりもない。
しかし、イ・ジュンソクこそ、社会の危機のすべての責任をフェミニズムに背負わせてジェンダー葛藤発言をためらうことなくぶちまけた張本人である。イ・ジュンソクが提起した、いくつかの根拠のない歪曲された主張を見てみよう。
まず、「50〜60代の女性は、時代的背景のために差別を受けたことがあるが、20代の女性ではない」というものである。これは事実と異なる。現実に、20代の女性も経歴断絶以前でも、男性よりも19・8%低い賃金を受け取っていることが確認されるからである。この数字は2008〜15年の「大卒者の職業移動経路調査」を活用して、結婚‧出産による経歴断絶の発生前、大学卒業直後(18〜24カ月)に同じ経歴を持つ20代の男女の賃金を比較した結果だ。このように、20代で、すでに15〜20%の性別による所得格差があるために、最も性別格差が激しい「ピーク年齢代」ではおおよそ30〜35%の賃金差別が発生する(2019年2月号「韓国社会学」)。
第2に、「ガラスの天井には根拠がなく、女性割当制は逆差別」という主張だ。ところが、国際的な時事週刊誌「エコノミスト」が今年発表した「ガラスの天井指数」によると、OECD29カ国のうち、韓国は△女性の上級管理職の割合(28位)△理事会内の女性の割合(29位)△女性国会議員の割合(26位)など集計した3つの指標のすべてで最下位圏に属した。このうち女性議員の割合が歴代最高の21代国会でも19%(57人)にすぎない(第18代国会41人、19代47人、20代51人)。
もちろん、これらの政・財界幹部職への進出問題は事態のごく一部だけを明らかにしただけである。そもそも、このような機会にアクセスすることさえ難しい大半の女性大衆は、前述した賃金差別だけでなく、採用の性差別にも日常的に苦しむ。むしろ、一部の「割当制」で、あたかも十分な措置を取ったかのようなそぶりをすることが問題だ。イ・ジュンソクの主張には「割当制廃止」の根拠がなく、高位職進出や比例代表割当制だけでは達成できない女性大衆の代表性を実質的に高める方案と運動を作らなければない。
第3に、「江南駅デモやイス駅事件のような単純な刑事事件がジェンダーの枠に埋め込まれる。女性だから死んだという枠に社会的ジェンダー枠を立てたもの」という主張だ。これは、女性に対する犯罪の真実を歪曲する。イ・ジュンソクのこのような主張は、凶悪犯罪(殺人、強盗、強姦、放火など)被害者の84%が女性だという簡単な統計にさえ反論できない。社会の基底に存在する性別権力関係として発生した性暴力を否定することは、被害者への厳然たる2次加害だ。2016年から浮上したMeToo運動」は、水面下にあった数多くの性暴力を犯罪として明らかにした。イ・ジュンソクの主張は、「女性に対する抑圧が普遍的であり、性暴力は、権力の問題」であることを社会的に明らかにしたMeToo運動の意味をおとしめるものだ。
イ・ジュンソクに対抗する
代替政治のために
イ・ジュンソクはフェミニズム卑下のほかにも、「能力主義」と形式的な「公正」を主張し、「誰も欠かさない公正」で青年を代弁するとした。能力主義がはたして歴代最悪の失業と青年の非正規職問題を解決することができるのか? むしろ能力主義と形式的公正は、良質の雇用を少数者の特権に制限し、大多数に低質の仕事をさらに強制にする。青年の非正規職が50%に迫る韓国では、結局、求職者の半分は非正規職として採用される。また、限りのない競争の構図は、労働者間の差別をさらに強化し、細分化する。韓国社会青年の半分が雇用競争から脱落するのを当然視するイ・ジュンソクの限りのない競争能力主義は、競争から脱落したり、最初からそのような機会さえ持つことができなかった多くの青年の怒りで粉砕しなければならない。
最近差別禁止法制定10万人の声運動が進んでいる。差別禁止法は、人種、性別、性的指向などへの差別のために経験した抑圧を終わらせようとする宣言である。差別を「公正」と擁護するイ・ジュンソクは差別禁止法と共存することができない。私たちは、女性の権利のためのすべての闘争が「ジェンダー葛藤」として片付けられてしまうことを黙って見ているわけにはいかない。いわゆる「イデナム」を打ち出したが、結局「持てる者たちの同盟」を積極的に正当化するイ・ジュンソクの政治ではなく、誰も差別されることなく、正しくその差別の根本的な構造自体を崩壊させる代替政治が必要である。
(「変革政治128号より」)
The KAKEHASHI
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