最低賃金大幅引き上げは最小限の要求だ

2021年の最賃引き上げ率は制度が導入されて以来、最も低かった

ペク・ジョンソン(政策委員長)

 2017年の大統領選挙当時、ムン・ジェイン、ユ・スンミン、シム・サンジョン候補が「2020年の最低賃金1万ウォン」の公約を、ホン・ジュンピョ、アン・チョルス候補が「2022年1万ウォン」の公約を掲げた。しかし、実際の最低賃金引き上げ率は2018年16・4%、2019年10・9%、2020年2・87%、2021年1・5%に過ぎない。「2020年の最低賃金1万ウォン」公約はないがしろにされ、2021年の最低賃金引き上げ率は、この制度が導入された1988年以来、最も低かった。結局、ムン・ジェイン政府4年間の平均最低賃金引き上げ率は7・7%で朴槿恵(パク・クネ)政府の7・4%と大差がない。
 さらに、政府と国会は、2018年の最低賃金の算入範囲を定期ボーナスと福利厚生費も最低賃金に含まれるとした。これにより、2019年から算入範囲が段階的に拡大されていて、2024年には、定期ボーナスと福利厚生費の全額を最低賃金に含めて計算される。企業は労働者の「定期給与・定期ボーナス・福利費の総額」をまったく引き上げないか、はなはだしくは削減しても、最低賃金法を守ることができるのだ。このような状況で、最低賃金の大幅引き上げを要求しないわけにはいかない。
 2020年6月に最低賃金委員会が発表した「未婚単身労働者の実態生計費の分析報告書」によると、2019年1人世帯の実態生活費は月平均218万4538ウォンだ。しかし、2021年の時間給の最低賃金は8720ウォンで、月に182万2480ウォンに過ぎない。未来を設計するところ自分ひとりの生活を維持するのにも不足している。その上に生活費支出のうち、住居費(住宅・水道・光熱費)の割合は、20・3%で最も高い。このような状況で大幅な最低賃金引き上げ要求は「不動産価格の高騰の負担を政府と資本が負わなければならない」という意味もある。

最低賃金亡国論、その悠久な歴史

 このような状況であるにもかかわらず、「最低賃金亡国論」が流れてくる。全国経済人連合会(全経連)傘下の韓国経済研究院が発行した「最低賃金引き上げによるシナリオ別雇用規模」によると、「現在の8720ウォンの最低賃金が5%上がれば雇用が10万4人減り、10%上がれば20万7千人減る」という。15%の引き上げで「最低賃金1万ウォン」になると、雇用が30万4千人消えるというものだ。
 「最低賃金の引き上げは、結局、労働者の被害として帰って来るのだから要求を自制しよう」。労働者は資本のアドバイスを受け入れて、最低賃金引き上げ闘争をやめるべきではないのか?
 しかし、最低賃金亡国論の歴史は最低賃金制度の歴史と同じである。最低賃金制導入から33年が過ぎたが、論理もまた似ている。「最低賃金引き上げは、失業の増加につながり、結局は労働者に有害だ」。
 導入初年度の1988年1月19日付の「毎日経済」のコラム「最低賃金制の最高賃金化」は、次のように「最低賃金制の導入に伴う大量失業のリスク」を論ずる。
 「最低賃金制の実施は、ほぼすべての国で、経済的な理由ということよりも、政治的な理由と密接に関連してきた。韓国の場合も例外ではない。例えば先の大統領選挙の時、大統領候補らは88年から実施する予定だった最低賃金制を控えて、その金額を30万ウォンと打ち出した。…筆者は否定的な側面を強調しないわけにはいかない…まず、最低賃金制の実施は、他の国と同様に、韓国でも失業の増加をもたらすことになるだろう。例えば、支払能力が7万ウォンしかない企業にとって11万ウォンを支払うことになれば、使用者は倒産したり、労勤者を解雇せざるをえなくなるだろう」。
 1989年適用の最低賃金を決定した後、1988年10月17日「京郷新聞」の記事「最低賃金引き上げ案に反発はげしく」は、中小資本の大量廃業の懸念はもちろん、「公益委員らが御用教授という非難を言われないように最低賃金が大挙引き上げられた」という、関係当局者の怒りも記録している。
 「最低賃金審議会が最近、来年度の最低賃金水準を月14万4千ウォンで議決するや、関係当局や零細下請業者は、『今年の11万5千ウォンから一度に26・3%も上げるのは、無理な要求』だとしながら『このような賃金案が強制実施されると、結局被害は労働者に戻ることになる』と主張。
 その根拠として△賞与や残業手当などを合わせると、最低賃金は実質で月22万3千ウォンにもなるうえ、△製造業全体の42%を占めている零細下請業者はこれ程の賃金負担に耐えられないことなど。
 ある関係当局者は『全国の1万5千の下請け業者のうち、半分以上は門を閉めることになる』と言いながら『こういう場合職を失った労働者はどこに行くのか』と気の毒がっても、この当局者は、『このような決定を下した核心的な人物は6人の大学教授で構成された公益委員』と言いながら『この人たちが学生たちから御用教授との非難を言われないように、現実を無視したまま決定を下した』と批判」。

「企業の支払能力の上昇分内で賃上げを要求しよう」?

 最低賃金制導入から33年が過ぎて、これまでに資本は「あなた自身の利益のために賃上げ要求を自制しろ」と言ってきた。資本は、常にこのような主張をしてきた。問題は、「賃金が生産性に従属されなければならない」と主張する一部の労働運動勢力である。「2022年の最低賃金、制度の目的に合わせて決定されるべき」だという社会進歩連帯の立場を見てみよう。
 「KDI予測によると、今年の成長率は3・8%、来年は3・0%である。今年は輸出が、来年は、民間消費が成長を主導するという。最低賃金は民間消費と関連する業種で影響が大きい。昨年、今年より最低賃金引上げ率を高めても、経済状態に余力があるという意味である。…2020~22年の名目成長率が10%程度で、2020~21年の最低賃金引き上げ率は4・5%程度だったので、その差である5%の引き上げ率は十分に可能である。…生産性の向上以上に最低賃金が上昇した場合、雇用縮小という反発が大きくなるからだ。労働者側の代表が2022年の最低賃金を1万ウォン以上(約15%の引き上げ)を要求するのは度を超している」。
 要約すると、「今年は最低賃金引き上げ要求を掲げることもできた。2022年、民間消費業の主導で3・0%の成長が予想され、最低賃金の労働者が多数をしめる民間消費業資本が支払能力を持つからである。ただし、資本家の反撃で失業が誘発されることがあるので、賃金上昇率は経済成長率を超えてはならない」という主張だ。結局、賃金闘争を経済成長率・業種別の支払能力に従属させようということである。先で見たように、このような主張の歴史は永い。企業の支払い能力の心配、国家財政健全の心配は社会進歩連帯がしなくても記載部と産業資源部、全経連と経済人総連が頑張っている。
 社会進歩連帯の主張は、資本家の宿願である「業種別最低賃金差別適用」論と全く変わらない。また、この主張に基づいて、来年の経済成長率に最低賃金を効果的に従属させるには、まず専門家らで上限設定委員会を作り、その上限設定委員会が提出した限度内で、最低賃金が決定されることになるだろう。この方法も最低賃金決定に対する資本家の要求と同じである。より根本的に、社会進歩連帯が言った趣旨に沿って成長率に賃金を従属させるのなら、煩わしい来年の成長率を予測するためにKDIの報告書に引けを取らなくてもよい方法がある。すぐに最低賃金制を廃止することだ。
 社会進歩連帯の言うように最低賃金引き上げでも、協約賃金引き上げでも、資本は何とかして賃上げに対応する。その形態は、解雇と契約切れであることもあり、廃業であることもある。労働も資本の攻撃に対応する。その要求は、総雇用の保障と解雇禁止であることもあり、社内留保金の返還であることも、産業の国有化であることもある。労働者が自らの労働力を売らなければならない限り、この終わりなき闘争は、なければならないし、あり続けるしかない。社会進歩連帯はネズミの回し車の転がしに過ぎない賃金闘争の代わりに「体制に対する全階級の政治闘争」が必要だと主張しているものと思われる。しかし、賃金引き上げ幅は、企業の支払能力の上昇分を超えてはならないと主張する勢力が、体制に対抗する政治闘争を主張するのは道化芝居に過ぎないのだ。

不平等の深化に立ち向かわなければならない

 コロナの流行によってもたらされた危機が最も脆弱な労働者たちをまず犠牲にしているということは、統計上明らかである。特にコロナ19以降深化した産業不均等の影響によって対面サービス―女性―非正規労働者たちが最も大きな被害を受けている。
 2020年8月にOECDが発行した「韓国経済報告書」によると、韓国は「賃金の両極化と限定的な再分配政策で所得不平等が相対的に高い。…ほとんどのOECD加盟国に比べて租税および福祉政策を通じた所得の再分配が脆弱である。女性の雇用率が相対的に低く、性別賃金格差は、OECD加盟国の中で最も高い水準だ。コロナ19による被害が労働市場での地位が最も低い人々に集中される中で、不平等が深まっている」。
 韓国銀行も同様の統計を提示している。「コロナ19危機以降の成長不均衡の評価」によると、「対面サービス業を中心に売上と雇用が減少し、中小企業の生産と低所得家計の勤労所得が大幅に減少…2020年第2四半期で所得4~5分位世帯(上層)の勤労・事業所得が前年同期比で3・6~4・6%の減少にとどまったのに対し、1分位世帯(最下層)の所得は17・2%減少するなど、格差が拡大され、 、第3四半期中で上位世帯の所得が前年同期の水準に回復したが、1分位世帯の所得は10・4%の減少」だった。
 このように不平等が深化する状況で大幅な最低賃金引き上げは、それこそ最小限の要求である。2021年の最低賃金闘争は、経済の目的が、資本の利益ではなく大衆の必要を満たすことだという契機としなければならない。
(社会変革労働者党「変革政治128号より」)

労働部の前で最低賃金の大幅引き上げを要求する労働者

朝鮮半島通信

▲朝鮮人民軍第1回指揮官・政治活動家講習会が7月24~27日、平壌の4・25文化会館で行われた。講習会には、金正恩総書記が出席した。
▲朝鮮戦争の休戦協定締結から68周年を迎えた7月27日、平壌の祖国解放戦争勝利記念塔前で第7回全国老兵大会が開かれた。大会では、金正恩総書記が演説した。
▲韓国中部の大田を中心に7月29〜30日、記録的な大雨が降り、1人が死亡し、浸水被害が出た。

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