韓国はいま 民主党大統領選挙の現実(9月13日号)

キャンドルの「キ」の字も使い果した
コ・ニョン(機関紙委員会)

 歴代級に情けない大統領候補予備選挙である。保守野党では最も有力な候補だったユン・ソギョルが相次ぐ暴言で支持率をなくす中で、前監査院長のチェ・ジェヒョンも特有の国家主義的色彩と準備不足を表わにした。民主党も情けなさは同様だ。相手候補の検証こそどの選挙でも必要である。しかし、かれこれ20年になる盧武鉉(ノ・ムヒョン)弾劾当時の「身振り」と「表情」を問題にしたり、地域主義を煽る発言まで出てくる。
ブルジョア政党が選挙を控えて行う行動が大衆の眉をひそめさせることは単に昨今のことではないが、改めてより大きな怒りと嫌気を感じさせる態勢が続いている。しかし、目を凝らして見る点はまだある。民主党の先の大統領選挙レースがキャンドル抗争という情勢が内部で終了しているのならば、今回は「キャンドルの逆走行」大統領選挙であるという点がますます明らかになっている。

民主党の大統領候補
次々「右向け右」


 さしあたり予備選挙で支持率1位を走っているイ・ジェミョンから見てみよう。2017年の大統領選挙の予備選挙では、言葉の上でも「財閥改革」を前面に立てた彼が、先月の大統領選挙出馬宣言で強調したことは「企業革新のための規制合理化」であった。イ・ジェミョンの象徴とも言える基本所得については、自ら「第1公約ではない」と線を引いた。「第1公約は仕事を求めることができるようにして公正性を回復し、規制の合理化を通して、資源と機会を効率的に分配すること」というのがイ・ジェミョンの説明である。「公正経済のためには、経済発展を妨げる財閥体制を解体しなければならない」、「イ・ジェミョン副会長の有罪が確定されれば、不法財産を返還しなければならない」と主張していた彼が、今は「規制の合理化で企業の創意と革新を行うことができる自由な空間を確保しなければならない」、「大転換の時代には、公共が道を開いて、民間が投資と革新を敢行することができるようにしなければならない」と述べている。
最近、彼が発表した「基本住宅」の概念も同様である。無住宅者なら「誰でも」申請することができる長期公共賃貸住宅100万戸を新規供給するというのがこの公約の骨子である。ところがここでの、「誰でも」は事実とかけ離れているのである。無住宅世帯が890万に迫る現実に対して、わずか100万戸を供給して申込券を分けると言って問題が解決されるのか? 公共賃貸住宅は、社会構成員の必要に応じて供給しなければならないし、特に低所得層と住居脆弱階層に優先的に提供されなければならない。イ・ジェミョンの「基本住宅」は、実のところ李明博(イ・ミョンバク)―朴槿恵(パク・クネ)政権から続けられた「ニューステイ」や「幸福住宅」など、中産層に限定して公共住宅を供給する政策の延長線にある。公共性がないがしろにされた、安価でもない「公共」住宅を提供するのではなく、低所得層と無住宅世帯のための長期公共賃貸住宅の品質を向上させ、容積を拡大していかなければならない。
イ・ジェミョンと与党候補の先頭を争っているイ・ナギョンも変わらない。そもそも彼はムン・ジェイン政府最長期の首相として不動産失敗の責任者でもある。最近彼は、「ソウル空港の敷地に住宅3万戸を供給する」と提示したが、これも低価格の長期公共賃貸住宅の供給ではなかった。ソウル空港の敷地という国有地を設置しても、長期公共賃貸を供給しないで、そもそも低所得層のための公共住宅をどのように増やすか 。それさえも「土地公概念の立法を推進する」と明らかにしていたが、過去に試みた「宅地所有上限制」よりも所有上限を高めることで、その主旨までも投げ捨ててしまった。一方、イ・ナギョンが公約に掲げた「雇用170万個創出」は徹底して「民間大資本に公的資金を回す」としているムン・ジェイン政府の「グリーンニューディール」と規制緩和を継承するというレベルにとどまった。
一時「幼稚園3法」で名前を知らせたパク・ヨンジンも暇さえあれば「中間層攻略」を口にして、より確実に親資本の性向を表わにしている。1カ月前の大統領選挙出馬以後、最初に彼が提起した主張は「企業の法人税と所得税を減免させれば雇用が増える」ということだった。市場主義者たちの長年の主張だが、法人税の減免が雇用創出につながるという根拠はどこにもない。さらに低所得層の税負担軽減につながりもしない。「民主労働党出身」の候補さえも露骨に財閥と企業の肩を持つのが民主党の大統領選挙の政局だ。

社会主義政治の現住所は?


 政治の土台は大衆運動である。2017年と比較すると2022年の大統領選で民主党の態度が相対的にはるかに右傾化したことは階級闘争の現住所を物語っている。何よりも、前回の大統領選挙でキャンドル抗争の成果を社会主義勢力が束ねられず、その後、階級闘争として発展させていない問題も大きい。問題は、今回の大統領選挙が、わずか数カ月後に迫っているということだ。選挙は階級闘争の現実を反映する一種の中間成績表というものであり、今からでも突破口を見つけ出すことで有意義な成果を引き出すことで、社会主義の政治を大衆の前に登場させることができる。
道は開けている。コロナ19以降一層深刻になった失業問題、不動産と住宅の問題、人類の生存を脅かす気候危機など社会主義と連結することができる活動と闘争を作り出す契機がある。労働時間の短縮―公共部門の拡大―必要に応じた―生態的産業再編として国家の責任で仕事を実現する闘争、多住宅者所有の住宅を国有化し、すべての無住宅者に公共住宅を保障する闘争を大衆化することが緊急の課題である。これらの闘争を土台として、社会主義の大統領候補の運動を展開しなければならない。国家責任の仕事を実現して、気候危機の代案を提示する社会主義の大統領候補をだ。運動と乖離した政治、政治と乖離した運動は、空虚である。大統領選挙までの残り時間約200日、社会主義者が闘争の成果の上に政治を建設するには、さらに奔走しなければならない時だ。
(社会変革労働者党「変革政治130号」)

The KAKEHASHI

購読料
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009  新時代社