済州第2空港撤回闘争(10月18日発行)

未来のために政治闘争を開始
パク・ソンイン(済州)

 あちこちで空港建設の動きが起こっている。補欠選挙を目前にして、政府与党がにわかに一体となって、釜山カドク島新空港を押し出していたが、ここに来て済州第2空港も再び強行しようとする流れが出てきた。土建・投機資本の乱開発と政府の軍事基地化(済州第2空港は空軍基地として機能する可能性が高い)に立ち向かって、済州道民の反対闘争が数年間続いたが、それにかかわらず、資本の開発の論理を前面に出して、済州の未来を荒廃化させようとする者たちの動きが露骨化してきている。
 済州第2空港を最先頭で叫ぶのは現在の済州道知事であるウォン・ヒリョンをはじめとする保守野党だが、ムン・ジェイン政府も決してその責任から逃れることはできない。前回の大統領選挙で、民主党は「手続き的透明性と住民との共生方策作りを前提に、第2の空港の早期開港を支援する」と公約している。「手続き的透明性」だけを取り上げただけで、第2空港自体には反対していないのだ。
 さらに、済州第2空港建設をどうするのかの最終的な決定権はムン・ジェイン政府の国土部に移った状態だ。すでに2月の世論調査の結果、済州道民は、第2空港建設反対を選択した。したがって「第3機関を介した世論調査ではあるが、済州道と道議会が合意して公文書として結果を通知すれば政策決定に反映させる」という、当初の約束通り、国土部は、実施された世論調査の結果を受け入れて「第2空港建設基本計画の告示」を撤回すればよい。2019年2月、政府与党が党・政協議で「済州道が合理的で、客観的な手続きによって道民の意見を取りまとめて提出する場合、それを政策決定に忠実に反映し、尊重する」としていた言葉を履行すればよい。ムン・ジェイン大統領が約束した「手続き的透明性と民主性を保障する道」にそのまま従えばよいのだ。
 政府に意志さえあれば、第2空港建設は、行政手続だけで簡単に阻むことができる。例えば、第2空港建設が環境に与える影響を評価する「戦略環境影響評価」のプロセスは、現在環境部と国土部との協議の段階で中断された状態だが、第2空港の事業主体である国土部が事業の中断を決定すれば戦略環境影響評価も自動的に終了される。しかし、政府与党は責任を済州道側に押しつけるだけで、自分でできることすらしていない。
 もしも、国土部が済州道民の意志に逆って第2空港建設を強行しようとすれば、また再び賛否をめぐる済州道民を消耗させる葛藤がさらに激化する形で繰り返されるだろう。もはや「国策事業」という名分でカンチョンマに海軍基地建設を強行するような無法行為が繰り返されてはならない。済州第2空港建設をめぐる5年間にわたる議論と葛藤は今決着がつけられなければならない。それが済州道民の意志だ。

道民の決定、「第2空港反対」

 前述したように、済州道民は「第2空港建設反対」を選択した。2月18日に発表された世論調査の結果を見ると、韓国ギャラップ(反対47・0%、賛成44・1%)とエムブレイン(反対51・1%、賛成43・8%)、両機関の調査の両方で「空港建設反対」が多かった。この調査は、済州道と済州道議会の合意を経て実施したもので、国土部が要請した「客観的で合理的な手続き」に従って道民の意見を取りまとめた結果だ。世論調査の専門家の見解によると、「『誤差の範囲内』で反対優勢の決定が下された韓国ギャラップの調査結果も、住民投票法の基準を準用すれば過半数の道民の反対意見だと判断しても差支えない」ということだ。一部では、第2空港建設予定地となっているソンサン地域で賛成(韓国ギャラップ64・9%、エムブレイン65・6%)が反対(韓国ギャラップ31・4%、エムブレイン33・0%)よりも優勢な結果が出た点を強調したが、具体的に見てみると事情は全く違う。ソンサン地域14の地区のうち、第2空港の直接的な被害地域である4つの地区を除いた残りの10の地区は一種の「受益地域」であるため、賛成がより高くなったことは、予想された結果であった。まさに「住民から日常性」を取り上げる直接の被災地域である4つの地区の結果こそ尊重されなければならない。
 今回の世論調査は、済州道民の意識の変化を見せてくれたという点で、また別の意味を持つ。これまで第2空港を推進していた初期だけではあるが賛成意見が多かったけれども、今ではその結果がひっくり返った。「第2空港反対」は、単に空港をもうひとつ造ることに反対するという次元で終わらない。「開発ひとすじで走ってきた済州道に方向転換を告げる警鐘」でもあり、「量的膨張よりも質的管理、開発よりも保全に重点を移す道民の選択」である。
 済州第2空港の総事業費は約5兆2000億ウォンで、済州道1年の予算に匹敵する金額だ。ところが、今回の世論調査の結果、他の誰でもない、済州道民自らがそれを拒否した。単純な反対を超えて済州の異なる未来を選択したのだ。地下水の枯渇、大量のゴミ処理と交通問題、乱開発など「いかにも済州島が、これまでのようにより多くの観光客、より多くの開発を受け入れることができるのか」という問いに、済州道民は「そんなことはできない」と答えた。
 渡り鳥の渡来地、法定保護種、洞窟など、自然環境の破壊をこれ以上放置することはできまないし、済州の正しい未来は乱開発と過剰観光ではなく、よりよく保存された環境と持続可能性にあると決めた。気候危機の時代に莫大な炭素排出を引き起こす代表的な産業のひとつである航空産業を拡張するということは望ましいことではなく、第2の「4大河川事業」を繰り返してはならないと判断した。
 このように、済州道民は、第2空港というバラ色の展望を拒否することで、これまでの30年とは異なる、新しい未来と新しい生き方を選択した。道民世論調査の結果は、済州の異なる未来のために転換の契機となるものであり、今回確認された道民の自己決定権の行使こそ「済州の正しい発展の推進力」になるだろう。

道民の決定覆そうとする
ウォン・ヒリョン

 ところが、このように世論調査で決着がついた後の、3月10日、済州道知事ウォン・ヒリョンは調査結果を歪曲し、「国土部は法的手続きが進行中で国策事業を当初の計画通り、推進」するとの意見書を政府に提出した。「なぜ(釜山)カドク島新空港特別法だけを通過させるか? 済州にも第2空港特別法を作ってくれ」と政治争点化に乗り出した。
 済州道は再び大騒ぎになった。「大統領になるという欲望を捨てられず憲法の精神も、民主主義の原則も」おしげもなく捨てる済州道知事に対して「ウォン・ヒリョン!あなたの時間は終わった」という批判が出た。また、「済州第2空港強行阻止非常道民会議」は、「道民の民意を裏切り、卑劣で卑屈にも土建投機勢力に恐縮して土下座する行動」だとウォン・ヒリョン 知事の辞退を要求した。2018年にもウォン・ヒリョン が世論の結果を裏返してまで営利病院を承認した過去を覚えている済州道民は「第2空港撤回!道民決定死守!」を掲げて再び週末のキャンドルを始めた。
 問題はこれだけではない。最近LH(土地住宅公社)投機疑惑が浮上した後、済州第2空港も計画が発表される前に、事業予定地の土地取引が急増するなど、事前情報流出で投機が行われた状況が明らかになっている。KBSの済州世論調査によると、「道民の意志に従って撤回」しなければならないという人が64・5%で半分をはるかに超え、「ソンサン住民の意志に基づいて事業を推進しなければならない」という意見は28・2%にとどまった。

あやしい罠に引っかかったムン・ジェイン政府

 いま第2空港は、済州の未来をめぐる政治争点として浮上した。これによって、「開発」と「民主主義(道民の自己決定権)」に対する各勢力の政治的立場と態度も明らかになっている。
 民主党は第2空港に対する賛否を党論として定めないまま責任を回避し、「紛争管理」と国土部の速やかな政策決定を促しているだけだ。民主党の一部道議員が「ウォン・ヒリョン 知事は、国土部に提出した第2空港推進の必要性を明らかにした公文書を直ちに撤回して、自ら辞退しなければならない」と主張したが、民主党所属の3人の国会議員は、「手続き的民主主義が破れる」を憂慮するだけでこれまで明確な立場を明らかにしなかった。
 2月28日、済州を訪れた民主党代表のイ・ナギョン(現在は大統領選挙出馬のために代表職辞任)は「世論調査の結果が解釈の余地を残したまま出てきた。とにかく結果は尊重しなければならない」という曖昧な態度を見せた。民主党が多数を占める済州道議会は3月25日「第2空港紛争終息のために早期決定を促す決議案」を採択したが、これも道民が出した明白な反対の意思にもかかわらず、「政府が第2空港推進の可否をすぐに決定してほしい」というあいまいなものとなった(この決議案に国民の力所属道議員5人は参加しなかった)。
 国民の力は「第2空港賛成」を党として決めて、世論調査の結果については、当初から承服しないという立場を明らかにした。「第2空港は、済州の未来成長活力であり、国策事業を世論調査で決定することは正しくない」という主張だ。これに加えてカドク島新空港と連携させて、ムン・ジェイン政府と与党が釜山では、票を意識して新空港を強行しながらも、済州ではそのような態度を示さない」という論法で政治争点化を狙っている。
 「済州道民の決定は終わった。今はムン・ジェイン政府と国土部が済州第2空港撤回を宣言しなければならない」。もちろん、現在の制度政治の現状でこう「宣言」するのは、容易ではないだろう。またその一方で、道民世論調査の結果をまったく無視することも難しいだろうが、しかし、ムン・ジェイン政府もまた第2空港建設と関連する土建・投機資本の圧力から自由ではないようだ。何よりも、現在の政府与党は、ついこないだ代表的な土建事業である釜山カドク島新空港を押し通した張本人なので、「釜山では新空港を受け付けながら、なぜ済州では受け付けてくれないのか」という保守野党の攻勢の前に苦しくなるしかない。世論調査を通じた済州道民の決定は終わったが、第2空港撤回闘争はこれから再び開始するしかないということだ。まさに今、済州の新しい未来を開いていく政治闘争を繰り広げなければならない。
(社会変革労働者党「変革政治」124号より)

朝鮮半島通信

▲ソウル中央地検は10月3日、城南都市開発公社の元幹部を、同市の不動産開発事業をめぐる背任などの疑いで逮捕した。
▲10月4日の朝鮮中央通信は、10月4日9時からすべての南北の通信連絡線が復元されると報道した。

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