高空に上がったタクシー労働者(10月25日発行)

チョン・ボクチョル(全北道党公共運輸分会長)

 6月6日、政府世宗庁舎国土交通部前でまた一人のタクシー労働者がやぐらを立て高空ろう城に突入した。民主労総公共運輸労組タクシー支部(以下「タクシー支部」)が高空に上がったのは、今回が5回目だ。月に100万ウォンにもならない賃金で生きていかなければならないタクシー労働者の現実が全く変わらなかったからである。
 数十年間に渡って、タクシー資本は、悪名高い粗金制(1日に乗客をどれだけ乗せたかに関係なく、タクシー労働者が一定の金額を会社に入金しなければならない制度)で労働者の首輪を締めてきた。これまでにも2017年9月から2019年1月まで510日間に渡って、当時のタクシー支部キム・ジェジュ支部長が高空ろう城を敢行し、「粗金制廃止、タクシー完全月給制の実施」を要求してきた。
 命をかけた世界最長の高空ろう城闘争の力で、最終的に2019年8月に、タクシー月給制関連法案である「旅客自動車運輸事業法」(略称「旅客自動車法」)と「タクシー運送事業の発展に関する法律」(略称「タクシー発展法」)が通過した。これにより、前近代的奴隷制に他ならなかった粗金制は昨年1月1日付で公式的に廃止され、粗金のない「週40時間・月209時間完全月給制」に入った。
 しかし、タクシー資本はおとなしく粗金制を放棄する考えなどなかった。これらの法律の抜け穴を掘り下げて、完全月給制を無力化し、タクシー労働者を最低賃金にも満たない「超」低賃金に縛りつけている。ここで重要なのは新設されたタクシー発展法の「第11条の2(タクシー運輸従事者の所定勤労時間の算定特例)」だ。この条項は、月給制施行のためにタクシー労働者の所定勤労時間を「1週間40時間以上」で保証しなければならないと明示した。ところが「問題は、この新設条項の「施行日」だった。ソウル市では、2021年1月1日から適用され、他のすべての地域では、この条項公布後、「5年を超えない範囲で…大統領令で定める日」として施行日を先送りした。そして、まだその「大統領令」は出ていない。タクシー資本は、この空白を利用して御用労組を前面に立てて粗金制に回帰しようとする策略を行っている。

政府の手助けで月給制を
無力化するタクシー資本

 これまでタクシー資本は粗金をむしり取るというやり方で労働者を超過搾取し、最低賃金法を無力化した。ところが粗金制が公式に廃止された今、資本家のやり口はより悪質なものに「進化」した。一日4交代で配車時間は5時間、所定勤労時間は3・5時間に減らす手法を使って労働者を月に90万ウォンほどの「アルバイト月給制」に追いやったのである。このようなやり口は、全国的に横行している。すでに指摘したように、ソウル以外の地域では、「週40時間所定勤労時間」を適用しなくてもよいからである。
 問題はこれだけではない。生活苦に直面したタクシー支部組合員たちが軽配送便や代理運転などとてもひもじい思いで走りながらどうにか生計を維持するのであるが、タクシー資本は団体協約に「二重就業禁止条項」を新設して、組合員の解雇を乱発する。資本家がこのような悪行をする理由ははっきりしている。民主労組を脱退して御用労組に加入し、従来の粗金制を受け入れるのか、でなければ会社を辞めろということだ。
 これまで資本家たちは、ひっきりなしに「最低賃金の差別的な適用」を要求してきた。このような状況で、前述した「タクシー発展法の第11条の2」条項がソウルを除く全国タクシー現場で実施されていないのは、タクシーの最低賃金を実質的に地域によって差別化することにより、資本家の要求を聞き入れるのも同然だ。政府が完全なタクシー月給制の全国施行の約束を引き延ばす状況を利用して地域別・業種別・事業の規模別最低賃金で差別化するためにタクシー現場から先行されている。
 長期勤続労働者の悩みはさらに深い。タクシー発展法の第11条の2の施行が遅れると、定年を3年後に控えたタクシー支部の組合員は、30年以上にわたって骨のズイまで搾取されてきたのに加えて、平均賃金90万ウォンで退職金まで半分に削られて事実上解雇に追いやられている。実際にタクシー支部全州スチョン・タクシー分会の組合員6人が半強制的に解雇され、全国のタクシー支部組合員のうち、定年を控えた長期勤続の組合員がすべて同じような状況だ。

安全な公共交通のために
闘うタクシー労働者たち

 今回、世宗庁舎国土交通省前で高空ろう城に突入した労働者は、タクシー支部釜山支会トンウォン運輸分会のミョン・ジェヒョン分会長だ。彼は「大統領と国土部はタクシー発展法11条の2を即刻施行せよ!」と叫んで高空に上がった。タクシー支部長期勤続の組合員たちのすべても同じ要求を掲げて先頭に立って闘っている。
 ミョン・ジェヒョン分会長がまたしても命を担保に高空に上がって闘争する理由は、完全月給制を直ちに施行することだけが利用する市民に安全で親切なタクシーによる移動権を保障することができるからである。タクシー労働者が最低賃金どころか月に100万ウォンにもならない賃金のために、どうしてもやらなければならない副業と一方での解雇の脅威に苦しめられる状況が続けば、安全で親切なタクシー運行は不可能だ。したがって週40時間・月209時間の最低賃金の保障、つまり最低限の生活の安定を担保とすることができるタクシー発展法11条の2を今すぐ全面施行しなければならない。
 ムン・ジェイン政府は現在の状況を傍観し、タクシー月給制施行を引き延ばしているが、資本はその空白を利用して、タクシー労働者を抑圧しながら粗金制復活を試みている。そのために、タクシー労働者の生存だけでなく、市民の安全も脅かされている。だからこそ、タクシー労働者は、政府と資本に立ち向かい、安全な公共交通を実現させるために立ち上がった。ミョン・ジェヒョン分会長とタクシー支部労働者の闘争に多くの関心と連帯を。

朝鮮半島通信

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