社会主義の大統領選

大統領選と大衆政党運動を提案して
チャン・ヘギョン(執行委員長)

 2022年には大統領選挙と地方選挙が相次いで実施される。特に大統領選挙は、権力の行方をめぐり、各政党・政治勢力のしのぎを削る闘いが繰り広げられる重要な政治日程である。加えて、民主党と国民の力などの巨大保守与野党は早くから大統領候補選出のレースに突入し、来年の大統領選挙勝利のために拍車をかけている。正義党・進歩党などの進歩政党も大統領選候補を選出したり、選挙戦を進めている最中だ。2021年の後半、韓国社会はすでに大統領選挙の政局に入っている。

歴史の変局点となった
歴代の大統領選挙

 2022年の大統領選挙は、1987年6月抗争で大統領直選制を取り戻した後、実施される8回目の選挙だ。さて、来年の大統領選挙は、その後7回実施されてきた大統領選挙の中でも歴史的激動期のど真ん中で行った3回の大統領選挙に劣らず重要な選挙だ。その3回の大統領選挙とは△1987年6月抗争と相次ぐ7・8・9月の労働者大闘争がもたらした政治・社会的波及力の中に開かれた87年の大統領選挙△1997年末IMF(通貨危機)事態直後の97年の大統領選挙△キャンドル抗争の結果として支払わされた2016年の大統領選挙である。3回とも韓国社会変局点に位置する大統領選挙だった。
 87年の大統領選挙は、民主抗争が実質的な民主主義として進展していないまま形式的・手続き的民主主義にとどまる結果となり、97年の大統領選挙は、新自由主義体制で急速に再編される契機となった。そして2016年の大統領選挙は、キャンドル抗争の結果として実施された選挙だったにもかかわらず「キャンドル政権」を自任したムン・ジェイン政府と共に民主党の度重なる退行によって、韓国社会の実質的な変化をもたらす変局点となることはなかった。
 来年の大統領選挙は、コロナ19が触発した「韓国社会再編」をめぐり、各政治勢力が激しくしのぎを削る闘いを繰り広げる場だという点では、前述した3回の大統領選挙に劣らず重要な意味がある。それゆえに、まずコロナ19が突きつけたメッセージは何であり、パンデミックが触発した変化が「どのような方向」に韓国社会を再編するのか探って見ることが重要である。

コロナ19が突きつけたメッセージ

 コロナ19は、人類にそして韓国社会に巨大なメッセージを突きつけた。
 まず、生態系破壊の深刻さを覚醒させた。利益のために、自然を限りなく破壊して収奪する資本主義の生産体制がコロナ19ウイルスのような「人獣共通感染症」(人と動物が共に感染する病気)の周期的な流行を招くという事実が分かった。すでに始まっている大災難の「気候の危機」も「より多くの生産と、より多くの消費を通したより多くの利益を追求」を原理とする資本主義的生産を停止しない限り克服することができないということを明らかにしている。つまり、コロナ19と気候危機は、資本主義が生んだ生態系破壊のコインの両面であり「必要な分を生産し、必要に応じて消費」するシステムへの大変革が今ただちに必要であることを突きつけている。
 第2に、コロナ19を契機に「資産格差の拡大」と「負債経済の危機」が深化し、不平等の問題もさらに深刻になった。2008年のグローバル金融危機以降、負債と資産バブルに支えられていた世界資本主義は、コロナ19パンデミックを契機に、その危機をはるかに進行させた。韓国を含む各国中央銀行の緩和的金融政策によって「限界企業」(営業利益でローンの利子も返済できない企業、つまり危機状態の資本)の寿命を引き延ばす「ゾンビ化」が深刻であり、「ヨンクル(霊稼)」という新造語を作り出すほどで個人が借金まで抱きこんで、資産市場に飛び込むという流れが強化され、資産バブルが膨張した。その結果、家計負債は危険な水準を超え、資産格差が日増しに広がり不平等は悪化し続ける状態だ。
 第3に、コロナ19は、私たちに仕事と労働に対する考え方の大転換と「尊厳に基づいた仕事と労働」のための実践を求めている。コロナ19で一番最初に失業や所得減少の危機に瀕した人々は、非正規職と女性などの雇用位階のどん底にいる労働者だった。コロナ19に非対面・プラットフォーム産業が急成長しながら、労働3権どころか「労働者」としての認定さえ受けられない低賃金・不安定労働者層が増えている。一方、資本主義で「生産的労働」として扱われず、性別分業構造の下で、主に女性が担ってきた家事・ケア労働の社会的重要性がコロナ19をきっかけに浮上した。つまり、仕事を希望するすべての人に生活賃金を提供する安定的な仕事と労働基本権を保障し、(資本に雇用され、賃金労働であろうがなかろうが)女性労働の価値を正しく認めるという方向で仕事と労働の問題にアプローチしなければならないことをコロナ19は突きつけている。
 結局、今日の資本主義は、生態系破壊、労働と雇用危機、深化する資産・所得の不平等によって社会の再生産自体の危機を招いた。コロナ19は資本主義を超えて新たな社会への転換と韓国社会の大変革を模索する時であることを明らかにした。2022年の大統領選挙は、このような時代的転換の必要性が強力に提起されている中で行われるということが重要である。

社会主義、人類と自然の共生を実現する「時代精神」にならなければ

 保守与野の巨大政党はこのような時代的転換の必要性を黙殺する。ムン・ジェイン政府の「グリーンニューディール」はまやかしに過ぎず、不動産の問題が深刻な状況でも、不労所得を断ち切る政策すら取らない。労働者民衆の生活の危機は知らないと言いながら、最近民主労総委員長の拘束で見ることができるように、集会・デモの自由さえ邪魔している。国民の力の大統領選挙候補者は核発電と市場万能主義の公約を競うように掲げている。
 労働者民衆にとって巨大与野党間の差は、ささいなものに過ぎない。もうこれ以上大統領選挙を「彼らだけのリーグ」として流されてはいけない。変革党が現在の危機を克服する代案として、私たちの生活を一緒に変える展望として、社会主義を提起する理由がここにある。社会主義は人類の安心できる未来を実現する「時代精神」でなければならず、労働者民衆の政治運動の道しるべでなければならない。変革党が2020年の定期総会と、今年9月の臨時総会で「社会主義の大統領選挙候補運動」を決定し、再確認したのはこのためだ。

社会主義の大統領選挙候補運動と
社会主義大衆政党建設運動を共に


 今回の臨時総会で決定した変革党の大統領選挙運動は「社会主義の大統領選挙候補運動―単一の社会主義大衆政党建設運動―社会主義的な課題闘争」という3つを軸として展開される。
 社会主義の大統領選候補運動は、資本主義を超えて私たちが志す韓国社会のシステム変革の必要性を大衆的に知らせながら共に闘おうという提案である。そのため、前の記事で紹介した「円卓会議」(社会主義の大統領選挙・地方選挙共同対応と、単一の社会主義大衆政党建設のための円卓会議)は、最初の対外事業として9月29日から11月10日まで隔週で4回に渡って「2022年大統領選挙、韓国社会の体制変革を語る」連続討論会を開く。10月中旬には、円卓会議の参加組織を越えて韓国社会の根本的体制変革を志向するすべての人々が集まる「大統領選挙共同闘争本部」を発足し、11月には大統領選候補を選出して、本格的な候補運動に突入するだろう。
 大統領選挙運動は、核心的な公約を中心に課題運動と並行して進むことになる。ブルジョア政治勢力とは異なり、私たちの大統領選挙運動は候補者だけが浮上したり、公約を通知するためだけに限定されている選挙運動を止揚する。民間や市場に放任させる住宅・医療・教育・ケアなどを社会(公共)の責任に転換する運動、エコ破壊・気候危機と不平等の解決を同時に志向する労働者・市民主導の正義の転換運動、財閥中心の韓国経済を「万人のための経済」に転換するための運動、家事・ケア労働などの必須労働の社会化と労働時間の短縮を通じた「国家責任の雇用」運動、女性・性的少数者・移住民・障がい者に対する差別と排除のない平等な連帯社会を作るための運動を展開する。このような運動と結合して、大統領選挙の過程で正しくその運動を創出することで大統領選挙運動が韓国社会変革のための主体を形成することができるように臨むことだ。
 また、大統領選挙運動が、単一の社会主義大衆政党建設という成果に帰結するように活動することである。運動(闘争)のない政治(政党)は、ブルジョア政治と変わらない。同時に、政治(政党)運動のない闘争は、いくら激しくても、圧力闘争に留まるのであり、労働者民衆を政治的主体として立ち上がらせることは難しい。韓国社会の根本的な変革を望むすべての人、資本主義に嫌気を感じそれに代わる世の中を夢見る人々に希望と勇気を吹き込む代案として、社会主義政治を新たに打ち立てなければならない。その道は間違いなく単一の社会主義大衆政党運動である。
 社会主義政党を旗印とする変革党と労働党はこの道を共にすることにした。まだ社会主義政治運動に踏み出せないすべての左派―社会主義運動勢力、そして韓国社会を根本的に変えることを望むすべての人たちも共にすることを提案する。韓国社会転換の分岐になる来年の大統領選挙が、私たちに投げかけている宿題はまさにこれである。
(社会変革労働者党「変革と政治」131号)

朝鮮半島通信

▲韓国の盧泰愚元大統領が10月26日、死去した。89歳だった。
▲ソウル中央地裁は10月26日、鎮静剤プロポフォールの違法投与を受けたとして麻薬類管理法違反の罪で起訴された韓国サムスン電子の李在鎔副会長に対し、罰金7千万ウォンなどの判決を言い渡した。

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