韓国サンヨン労働者たちが日本サンケン電気偽装閉業撤回を闘う

私の人生は韓国サンヨンを外して語ることはできない

毎日変わらない日常とは…

 1月12日の昼食時、サンケン電気ソウル営業所とLG・サンケン電気合弁会社(アドバンスパワーデバイステクノロジー)があるソウル江西区マゴク洞コナビル前。慶南道昌原(チャンウォン)から上京してきた韓国サンヨン解雇労働者イ・ミョンヒさん(韓国サンヨン入社33年目)とイ・ジョンヒさん(韓国サンヨン入社29年目)が情宣の準備をするのに忙しい。2020年7月15日、親企業である日本のサンケン電気による一方的な閉業(法人解散)公告後、工場前でテント座り込みを始めてから549日になる日だ。オレンジ色の労働組合のベストを着けていなければ、零下12度のソウルの寒波に備えてぶ厚いジャンパーで「完全武装」した2人の労働者を見つけ出すのは大変だった。

 「チャンウォンよりソウルはとても寒いです。ここマゴクと汝矣島(ヨイド)LGが本当に寒いです。風がなければ大丈夫なのですが…。ここはビル風が吹いて、LGは漢江があるから川風がとても冷たいです。うわー、手が冷える。手袋を着けてください」。

 ミョンヒさんとジョンヒさんは私がいかにも寒そうな服装だと心配する。2人の労働者のように、街で毎日冷たい風に立ち向かうこともない私の境遇が申し訳なく思う。
 これまで十数人の解雇労働者たちは「日本のサンケン電気による偽装廃業撤回・韓国サンヨン工場の正常化・解雇者復職」の要求を掲げてサンヨン電気ソウル営業所と日本大使館、LG電子、釜山領事館、さらに民主党慶南道党などで闘ってきた。
 慶南道馬山(マサン)自由貿易地域(旧馬山輸出自由地域)にあった韓国サンヨンは1973年に日本のサンヨン電気が100%出資して設立した会社で、電源装置とトランス・CCFL(冷陰極蛍光ランプ)・LEDなどの電気電子部品を生産してきた。これまで外国人投資促進法により租税・賃貸の減免など各種の恩恵を受けてきた韓国サンヨンはコロナ19の時期に付け込んで昨年1月20日に廃業し、生産職労働者16人を含む韓国サンヨン労働者全員を解雇した。
 そして昨年12月1日、清算登記を終えた。廃業理由は年間50億ウォンの赤字。韓国サンヨンの人材と生産製品の生産規模などを勘案してもありえない理由だ。当時、韓国サンヨン代表取締役も清算決定を知らなかったほどで日本のサンケン電気本社は秘密裏に廃業を推進した。
 「あるがままに過ごしました。何。(笑)。毎日変わらない日常ですね」。

 どのように過ごしていたのか、しばらく来られていなかったので申し訳ないという思いを込めた私の儀礼的な挨拶にイ・ミョンヒ氏が笑って話す。その「変わらない日常」というのが実はとんでもないものだ。韓国サンヨン支会(金属労組慶南支部)上京チームの起床時刻は午前5時30分。起きて洗面し、簡単な食事をして出かける準備をする。そして、一人は国会へ、もう一人は日本大使館に横断幕などを持って移動する。

 「あるチームは一人デモを終えてここ(サンケン電気ソウル営業所)にまっすぐ来て、少し早く終えたチームが宿舎に荷物を置きに行って、またスピーカーと横断幕を持ってくるんです。ここに到着してしばらく休んだり、早めにご飯を食べて昼休み時間に合わせて宣伝戦をするんですね」。

工場で30年体を使ったので体調不良も

 これで終わりではない。午後にここで宣伝戦を終えたら、汝矣島のLG本社に移動して再び宣伝戦を続ける。LGがここのコナビルでサンケン電気と合弁会社を運営するほかにも、韓国サンヨン偽装廃業に同調する様々な情況が得られるたためだ。サンケン電気は私募ファンド(IBKSセミコンPEF)を通じてLGグループ副会長の息子ク・ボンジュンから160億で買収した(株)EK(旧「チホン」)で生産されるサンケンエレクトリア製品をLGに納品している。さらに、歴代の韓国サンヨン社長のすべてがLG出身であるくらい、両社は緊密な関係を維持している。韓国サンヨン解雇労働者たちは、LGが韓国サンヨン偽装廃業撤回のために努力することと日本サンケンとの取引中断を要求し、毎日LG本社前の一人デモと宣伝戦を行っている。平日にソウルで行われる各種の集会に参加することも上京チームの日程の一つだ。

 「テントにいるときは座ることもあるが、これは休む時間もなく、立ちっぱなしじゃないですか。ここもそうで、LGもそうで休むことがないんですよ。日が暖かくなれば外で時々座ればいいんだけど、寒いのでそっと休むこともできません」(イ・ミョンヒ組合員)。
 もちろん、昌原にいたとしても楽なことは決してない。工場前テント座り場の死守と出退勤時の宣伝戦など基本的な日程を含め、投機資本を規制する立法のための街路署名、地域連帯集会への参加などのスケジュールを毎日こなさなければならない。だが、それでも昌原は言わば「ナワバリ」であり、ソウルはまったくわからない見知らぬ所だ。ミョンヒさんに昨年も悪いと聞いていた腰痛はどうかと尋ねると、「この年齢で痛い所がないのは不思議ではないか?」という。寒いなか外に長く立っているのでより痛いようだと言った。

 「工場で交代勤務して30年体を使ったが、体調不良も出てくる。今残っている人はすべてそうです」(イ・ミョンヒ組合員)。

心が一日に12回も変わります

 「いや、こんなに難しいのに、なぜまだ残っておられたの?」(筆者)。

 「私の言葉が…。今も地面をたたいて後悔しています。心が一日に12回も変わります。出て行くと、残っている人が気になって、いると私の体が大変で。これもできず、それもできず」(イ・ミョンヒ組合員)。

 「いまだに同志がより気になるんでしょうか?」(筆者)。
 「それは聞きやすい言葉だと。(笑)みんな大変なことを知ってるから私一人で楽になろうと出て行ったらという気になる。出て行っても顔を合わせない人ならば、ただ出て行けばいいのに、どのみち出て行っても見かける人たちだから。この時局にすべてが難しいから私一人で暮らそうと出て行くことも本当にそう…。一日に何百回も思いが変わりそうです。心の余裕もなくなってますます疲れで足が重たくなるのです。人と話すことも嫌になって、こういう時があるでしょう」(イ・ミョンヒ組合員)。

 昨年初めて会った時も、ミョンヒさんは似たような話をした。たぶん最初にやめる人が自分になるかもしれないと。しかし、年末の清算登記を終えた後、会社が組合員をゆさぶったが、ミョンヒさんは残った。おそらく「一日に何百回も変わる」思いを繰り返して頑張ったのだろう。多分残っている多くの組合員たちがそうだったのかもしれない。経済的な問題から健康問題、家族と子供たちの問題など、個人的なことが1つや2つではない。難しく見えて「最近どうしてたの?」と聞いてみれば「変わったことはない」という、何があるのか知りながらも解決してくれるわけでもないので、さらに聞くこともできない。ミョンヒさんはお互いに大変だからと言葉にできなくても心の中ではみんな爆発一歩手前ではないかという。

出退勤する人びとが一番羨ましいです

 「私たちは戻って仕事をするスペースがあればいいのに…。今一番羨ましいのが朝夕に出退勤して、週末に休む人びとです。馬山に朝出て立てば出勤時間で、このものどもが危ういことをして、そうじゃないですか。『私も前にこんな出勤時間に行ったのに』と考えてみるとどんどん私の自尊心が削られるからそれが大変です。周りでも『お姉さん、年なのにどうにか出てきたか』という話をするから周りの人にも会わない。自分は私を心配してのことだけど私も会わない。どんどん大変になる」。
 食事を終えて温かいコーヒーを持ってコナビルの前を通り、再び職場に戻る労働者たちの歩みが忙しい。ある人には多少あきあきしてしまいそうな平凡な日常かもしれないことが、それでもある人にはどんなにか羨ましくて懐かしいことなのだ。ミョンヒさんもジョンヒさんも仕事をする時は「出勤しなければ、昼休みが終わらなければ」といった日常があっただろう。一日に何百回もグルグルと変わる考えの中には闘いを続けなければならない理由が多い。

 「私の人生はサンヨンを外して語ることはできません。私の人生のだいたい180%はサンヨンでしょう。ここには多くの思い出があり、痛みもあり、喜怒哀楽がたくさんあったからです。本当に他にもたくさんがありました」。

 寒波の中で闘争する労働者たちに力になる言葉をかけてあげられればいいのだが、「新年になって、この間来れなくてあいさつでも差し上げようと思って来た」という対応が精一杯だ。宣伝戦が終わる前に、冷たい風にさらされている労働者たちに背を向けて離れなければならない境遇で美しい励ましの言葉が何の役に立つのかと思ってもいる。だが、韓国サンヨン労働者たちとこの闘争を記憶にとどめて、すべてとはいえないがそれでもかなりよく考えている話は伝えたい。帰って座り込み現場で過ごすしかない正月の連休なのだろうが、少しでも心を安めて暖かく過ごせるように願っている。

ヨンチョン(ルポ作家)チャンムセサン(真実の世の中)
1月29日

2021年を終えて韓国サンヨンのテント座り込み現場(慶南昌原市ヤンドク馬山自由貿易地区)の前で韓国サンヨン支会組合員たち(12.30)
韓国のサンケン電気ソウル営業所があるソウル江西区マゴク洞コナビルの前で昼休み宣伝戦をしているイ・ミョンヒさん

朝鮮半島通信

▲平壌で2月6~7両日に、最高人民会議第14期第6回会議が開催された。
▲平壌で2月8日、「第2回建設部門活動家大講習」が始まった。同講習会参加者に金正恩総書記が書簡「新たな建設革命により、朝鮮式社会主義の文明発展を先導していこう」を送った。
▲2月10日に報じられた韓国メディアによる書面インタビューで文在寅大統領は、日本政府が日本の佐渡島の金山を世界文化遺産候補として推薦したことについて、「歴史問題の解決と未来志向の関係発展を模索すべき時に懸念される」と述べた。

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