造船下請労組の地域ストライキ闘争 (上)

社会的連帯闘争をめざして

大宇造船非正規ストライキ闘争の指導者、キム・ヒョンス金属労組巨済統営コソン造船下請労組支会長
聞き手:クォン・ヨンスク(社会的ストライキ連帯基金代表)

日時:2022年7月5日サパ基金事務所
対談:クォン・ヨンスク社会的ストライキ連帯基金

6月7日から全面ストに突入


クォン:直接顔を見てあいさつすることができて嬉しい。巨済統営コソン造船下請支会について紹介してほしい。

キム:労組は2017年に結成した。昨年9社の塗装業者と団体交渉をして成果として、塗装工250人が下請労組に加入した。今年から21社とストライキ権を得るための団体交渉を始め、賃金引き上げ30%を要求した。6月2日に部分ストを開始し、6月7日から全面ストに突入した。

クォン:これまでのストライキの状況を簡単に教えてください。

キム:最初は8つの主要生産拠点の道路を占拠するストライキをし、半月ほど経つと生産に支障が生じ始めた。会社側が職班長など現場責任者らを投入して絶えず物理力を行使しており、私たちは公権力投入のための口実を提供する衝突を避けるために、暴力を受けながら闘争を続けている。130万坪の造船所の中で少数人材の生産拠点の占拠闘争は限界が多い。6月22日から第1ドックの終局闘争に突入した。その結果、大宇造船35年の歴史上初めて進水式ができなくなった。現在建造中の船の15m手すりに6人が高空ろう城中であり、床のケージの中にユ・チアン副支会長がシンナーの樽を抱いて座り込み中だ。救社隊と公権力の介入を防ぐ場所を探し、ドック内の構造物に鉄格子を作ったが(本来の計画と違って)狭すぎた。足をのばすことができるように鉄窓の下を切り取るといっても、ユ・チアン副支会長が断った。しかし、ユ・チアン副支会長は0・000001%も死ぬ心配はない。みんなで共に生きようとする闘争だ。死ぬつもりはない。

クォン:現在の闘争を突き進めて勝利するために何が最も重要だと思うか。

キム:現在の闘争を全国的な闘争として、社会的な連帯に拡大していくことだ。7月5日、労組に7月23日、巨済に向かう希望のバスを提案した。労組と民主労総が援護しながら力を得なければならないのとは別に、外から社会的な力が加えられてこそ、ユン・ソギョル政府と産業銀行を動かすことができる。その間に金属労組と民主労総の決議大会も開かれるだろう。7月20日、金属労組が6時間スト権を獲得し、地域別の決議大会が予定されている。地域別にしないでソウルは産業銀行、地域は巨済に集結してほしいと提案している。7月20日の前に慶南の1千人幹部大会を開くことになった。すでに6・29で定めた決議大会を延期して、大宇造船海洋ストライキを援護するために私たちが要請する日に設定することにした。

 このように労組の結合と拡大から社会的連帯闘争として進めようとしている。そして7月23日は希望のバスと労働組合を結合して社会的な闘争として進める輪をつなげようとしている。なぜなら7・23希望のバスの日から大宇造船正規職が2週間の休暇に入る。下請労働者は1週間の休暇だ。それで7月の最後の週と8月の最初の週は工場が空になる。他の労働組合もほぼすべてが休暇期間であるため、巨済全体が休暇に入る。それ以前に何らかの形で何かをしなければならないようだ。ドックが塞がっていて来週から現場が影響を受けて止まるようだ。会社側は工場をロックアウトするか、公権力の介入を積極的に要求するものと見ている。

クォン:7月23日の希望のバス発進までどんなことをやろうとしているのか?

キム:何をやるのかまだ手がかりが見えていない。それで私たちが何を決めるのか内部的に話をしなければならない。何か手がかりが見えたらいいのだろうがダメだろうと思う方が多く、その対策をしなければならない。重要なのは(決死ろう城を続けている)7人の同志が耐えなければならないが、それが今一番に重要なことだ。そして一番心配していることだ。

地域労組として闘争を束ねる

クォン:7月13日がキム支会長の3次出頭要求の期限だ。検察が逮捕状を出さずに3次まで引き延ばすのもちょっと意外でもある。3次出頭期限までに産業銀行などの動きや労使交渉や接触などがあるか?

キム:(笑)以前にも警察が請求した拘束令状を検察が取り消し続けた。これは政治的でしかありえないことでユン・ソギョルが検察総長になり大統領選挙の出馬説などが浮上すると警察は昨年の闘争の時も拘束令状を申請した。そしてユン・ソギョルが政権を握って大宇造船が非正規闘争の核心的事業場として浮上して、今年初め、いよいよ検察が拘束令状を発付した。その時は裁判所が棄却している。昨年23日間のストライキ当時私がクレーンを停止させたことで拘束令状を請求したのだ。

 そのように私たちはずっと試みてきた。そしてストライキも続けてきた。今回のストライキは世論化されて知られたが、私たちは毎回このようなやり方だった。現場で工程をおさえてストライキ闘争をしてきた。何年もやってきた。そのような過程を通じて現場の力量を作らなければならなかった。昨年3月初めに10日間のストライキをし、労組500人の隊伍が結集した。コロナ19の間、集会人数の統制などあずかり知ったことではないと大規模な集結ストライキをした唯一の労組だった。政府が防疫を理由に集会人員199人、99人に制限した時も、私たちはストライキ隊伍500人を集めて決行した。

非正規職が80%の造船業種

クォン:今年は何を信じて全面ストを敢行しようと決議をしたのか? 少し言い換えれば、組合を作った過程と組織化過程についてもう少し話してほしい。

キム:2014年から労組作りの準備を丹念にしてきて、2017年労組を作った。組織を作る時から生産を止め、ストライキを通じて労働者意識を高揚させようと考えていた。法の弱点を利用して正規職化し、結局自分だけ生きるという闘争はしないという決心を固めた。労組を作り、その枠内に安住せずに闘争する労働者を育てなければならないと考えた。それ以前は劣悪な条件の中で労組ではなく下請労働者委員会という組織を通じて高空ろう城などの空中戦をしなければならなかった。

 最初から組合主義に対する批判的な問題意識を持っていた。それで、ありのまま社内下請労組にしようとしたが、「巨済統営コソン」地域労組にしようと名前を決めた。理由は造船業種は離職が多い。企業間での移動も多い。広い意味で労働者を結ぶ何かが必要だと考えた。それで地域支会として発足した。巨済統営コソン地域を包括する地域労組なので、この地域の造船所どこでも闘争が繰り広げられれば労働者が要求すれば私たちは闘いにはせ参じた。

 労組に現場労働者の加入も重要だが、組合員を階級的に成長させるために小さな闘争から始めた。どんな小さなことも、組合の名前をかけて元請を相手に闘ってきた。その結果が今回のストライキまで続いたのだ。

クォン:その問題意識は非常に重要なようだ。大宇造船の下請業者が90を超えると聞いた。大宇造船の他にも様々な規模の造船所がある。それを大宇造船大企業一つに限定してしまえば、事実上労組はその企業内に留まってしまう限界があるのではないか。自動車業種の社内下請労組もそのような限界があるようだ。それでは、地域労組の枠組みが今回のストライキにどのような役割を果たしたのか。

キム:事実地域労組として労働者を組織するのはとても大変だ。造船所内で業種は非常に多様だ。労働者の利益にかかわりが多いほど組織するのは容易であるが、造船所の様々な業種の労働者をそれも地域でひとつに束ねるのが大変だった。そして利害関係で分断させて競争に縛り付けるのが資本の特技だが造船業種はその最高峰だといえる。資本の意識がそのまま労働者に浸透したのが造船業だ。

 しかし、時にはそのような業種の違い、業種間の差別なども組織化するのに逆利用した。なぜこのような違い、差別、競争体制があるのか、実際に私がそのような差別構造の中で果たして得なことだと思えるのか悩み、問題を提起し、そしてそこから抜け出す方法を一緒に講じてみようと説得した。他の職種仲間はそれぞれ違うと思うが、事実は一つだ。完成した船を見ながら、その船を作った造船労働者はみんな一つだと考えよう。資本の論理のままに労働を分業化し、それがまさに私たちみんなの利益だという論理の甘い実を出しているが、我々は絶対にその実を分けることはできないと。

 ところが意外に労働者の中にはそのような問題で悩む人々もかなりいた。私の仕事を他の人に先延ばしにし、誰かをもっと働かせる生産システムに対する問題意識もあった。

闘争から脱落する正規職労組


クォン:造船業種は代表的な労働集約的産業だ。自動車と比較して、自動車と労働工程があまり変わらないのか? 自動車の場合、脱熟練化―非正規職化と自動化を同時に構築しながら労組の現場権力を弱体化させてきた。一方、造船業種はより労働集約的で自動化が相対的に遅く少ない一方、非正規職をより急速に全面導入するという戦略を資本が進めてきた。2つの業種間の差異が非正規労組の組織化や闘争にどのような影響を及ぼしたと思われるか?

キム:結果的には大きな違いはない。造船業種は自動車ほど機械化されていないが、実質的にはベルトコンベアのように動く。ただそのベルトコンベアがあまりにも大きすぎるからベルトコンベアの工程の流れを把握できないのだ。一種の人材のベルトコンベアだといえる。形だけ異なるだけで内容的に入ってみると同じだが、造船所でベルトコンベアの役割をするのがトランスポーターだ。トランスポーターがヤードにブロックを置いて労働者に仕事をさせ、工程が終わればそれをまた引きずり、別のところに行って置く、このように工程が続く。(つづく)
チャムセサン(7月13日)

キム・ヒョンス支会長(左)、クォン・ヨンスク代表(右)

朝鮮半島通信

▲韓国の尹徳敏・新駐日大使が7月16日着任した。
▲訪日中の朴振韓国外交部長官は7月19日、岸田総理大臣を表敬訪問した。

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