移民が多い都市ウムソン差別はおなじだった

 外国人住民が全国市郡区で最も多い忠清北道ウムソン郡。コロナ19を経てここの通りでは移住民を以前ほど見かけなくなった。コロナ19の拡散でウムソンにいた多くの移住労働者が本国に戻った影響もあるが、事業主が移住労働者を寮の外に出さなかったことも大きかった。移住民の割合が高い地域だからといって差別がないわけでもなかった。ここの移住労働者は感染の時期をどのように耐えているのだろうか。「チャムセサン」が製造業、畜産業に従事する移住労働者に会うためにウムソンを尋ねた。
 行政安全部の資料によると、ウムソン郡は2020年基準の総人口に対する外国人の割合(市郡区基準)が14・6%で最も高い地域だ。その年の移住民数は1万3千人余りだった。コロナ19の影響で移住民が本国に去り、新規入国も難しくなる中、6月30日時点でウムソンには8521人の移住民が住んでいる。その中でもウムソン郡の西側にあるテソとすぐ隣にあるクマンが最も多い。ここには工場が多いからだ。北部のセングクとそれより上のカムコクには農業分野の移住民が主に居住している。テソのターミナル近くのタクシー乗り場にいる客の70%は外国人だという。あるタクシー運転手は、本人所有の乗用車がない移住民が週末になると、一週間分の食料品を買うためにタクシーを利用すると話した。
 一時クマンの市場にも移住民がたくさんいた。しかし2019年末、護送車に乗って現れた法務部出入国職員が未登録の移住民を連行していくうちに移住民の外出がかなり減った。この事件にコロナ19まで重なったため、日曜日の夕方でも通りは閑散としている。

スリランカ移住労働者、スミット

 コロナ19の拡散がくずつく中、スリランカ移住労働者のスミットさんと彼の寮で会うことができた。夕方に訪れた記者にスミットさんと仲間たちは栽培したトマトと春唐辛子を入れたサラダとバゲットを出してくれた。寮で4人のスリランカ移住労働者と共に暮らすスミットさんは、ウムソンのスリランカコミュニティーの代表も務めている。
 韓国に来て12年目になるスミットさんは現在、クマンのある自動車部品工場に通っている。彼の会社は双竜自動車と日本の自動車会社に部品を納品している。管理者を含め約54人が働いているが、このうち20人程度が移住労働者だ。初めて韓国に来た時はスミットさんも他の移住労働者のように雇用許可制ビザとして知られる非専門就業(E―9)ビザで働いた。そうして4年前、特定活動(E―7)ビザに変えて、今会社では主任で職級も上がった。
 スミットさんは現在、時間給で会社から賃金を受けている。週52時間勤める彼は、仕事が多い時は時間給として賃金を受け取る方が有利だと述べた。彼は主任となり、現在毎月240万ウォンの給料を受け取っている。
 現在の生活に満足だというスミットさんは、そのうち本国の家族と一緒に韓国に住みたいと語った。すでに12年も韓国に住んでいるので、本国にいる子供、妻を呼んで一緒に生活していくことが良いと思い立っている。何よりも最大の問題は、デフォルト事態に陥ったスリランカの経済状況にある。彼の仲間たちもスリランカにいる家族への思いがたくさんあっただろう。彼らは本国の状況について「ガソリン不足で人々は車ではなく、馬に乗って通うと言っている。ご飯も木を燃やして食べる」と語った。

 また、スミットさんから未登録の移住民の話を聞くことができた。以前、ナヂュ市でコロナ19の検査を受けるために保健所を訪問した未登録移住民が逮捕された事件があった。政府が移住民のコロナ検査を奨励するために未登録移住民を取り締まらないと約束した後に発生した事件だった。この事件で、スミットさんの未登録移住労働者の友達も逮捕されるかもしれないと恐れて保健所を訪問できなかった。出身国別にコミュニティーがよく整っているウムソンも例外ではなかった。

ベトナム移住労働者、リン

 スミットさんとのインタビューが終わり、次の日程のためにコソフィアウムソン外国人支援センターのセンター長がベトナム移住労働者リン(仮名)さんに電話をかけた。スミットさんはリンさんに「顔を出してくれよ、会いたいよ」と話した。セングクにある光学レンズ会社で働くリンさんは、コロナが発生する以前、スミットさんと韓国語の授業を一緒に受けた友達だ。
 雇用許可制ビザで働くリンさんは韓国に5年住んでいる。リンさんは山の懐に建つ工場でレンズを研磨している。1日12時間半働く彼はずっと立ちっぱなしの勤務環境が最も大変だと話した。一度は上から下に降りてくる機械に手の甲をつかれたこともあった。幸い、すぐに手当をするほど大きな負傷ではなかったが、同じように傷ついた彼の同僚は片手で仕事を続けなければならなかった。同僚は傷ついたその日病院に行ったが、骨に異常はないという話を聞いて翌日から2日間を片手で働いた。自分と仲間が扱う機械を見せたリンさんは「会社が忙しくて仕方がなかった」と当時の状況を説明した。

ネパール移住労働者、ニールマル

 ネパール出身のニールマルさんはこれまで5年間、畜産業で働いてきた。最初の3カ月は豚農場で、次の1カ月は鶏小屋で働き、その後現在まで別の豚農場で働いている。彼が最初に働いていた豚農場をやめた理由は、農場長が仕事をきちんと教えてくれず、むちゃな仕事を指示したからだ。2番目に働いた鶏小屋では、一つのスペースに数十人が入って寝なければならない宿が耐えられなかった。ただ雇用許可制ビザであるニールマルさんの場合、運が良かったといえる。雇用許可制は移住労働者の事業場の移動を保障していないが、二つの事業場の事業主が変更に同意したからだ。
 実際に、ニールマルさんの友人の中には、事業場の変更に困難を経験する場合があった。「友人の話を聞いてみると、社長が事業場変更の許可をしてくれない場合があります。事業場の変更を要請すると、友人らに数日間仕事を与えず、その間の賃金も払われなかったと言いました。移住労働者が思いのままに事業場を変えられないようにした制度のためですよ」。
 ニールマルさんは、豚の分娩に関連した仕事とか、豚にワクチンを接種するなどの業務をしている。製造業移住労働者とは違って、彼は最近まで月に休む日が2日だけだった。現在は4日の休日があるという彼は延長勤務を除いて月に280~290万ウォンを受け取っている。
 前に1カ月間働いた鶏小屋の宿舎環境問題を話す、ニールマルさんは、まだ農村では冷暖房がないビニールハウスで働く移住労働者が存在すると話した。彼らの労働環境がどれほど旧時代的なのかクマンで出会ったタクシー運転手がよく説明してくれた。彼は50年前、初等学校を卒業した年齢でウムソンからソウルに上京して働いた記憶を思い出していた。

 「あの時組立式のコンテナで生活してたんだけど、寒くて体をぶるぶる震えさせていたよ。部屋の下で火をつけても、上には冷たい風がフッと吹くんだから。ソウルではどんな仕事でもあればしなければならなかった。秋夕に一度、正月に一度故郷に帰ることを除けばいつも働かなければならなかった」。

マスク差別

 ウムソン外国人支援センターを通じて会った移住労働者たちはすべて「ちょっとお金を稼ぐために」韓国に来たのではなかった。韓国で本国にいる家族と一緒に生活するためには永住(F―5)資格が必要だが、そのために毎週末に韓国語の勉強をしている。先月17日、韓国語授業が終わったばかりの移住民たちに「コロナ19でどんな困難があったのか」と尋ねた。
 韓国に来て9年目になるネパール移住労働者のサラーズさんは、ビザの変更で困難を経験したという。彼は「飛行機が飛んでいないので、ビザ変更のための書類を持って来ることができなかった」と話した。このような困難でビザを変えられずに本国に戻った移住民もいた。
 また、彼らは事業主が事業場の外に出ることを統制したとも話した。工場で一人がコロナ19にかかると、集団感染につながるからだった。しかし移住労働者は統制がなくても感染症を避けて、自発的に外出を控えていたと、口をそろえた。
 移住労働者はマスクを求めることさえ難しかった。ウムソンでもマスクをめぐって外国人差別が議論になった。コソフィアセンター長は「コロナ19の初期に郡庁で社会福祉施設にはマスクを2千枚を配付したが、センターには200枚しか回ってこなかった」と皮肉った。センターの会員だけでも1500人なので、とんでもなく少ない量だった。彼はこの事件が移住民に対する差別を端的に示していると話した。
 問題はまだあった。2020年政府は内国人の場合、身分証さえあれば公的マスク購入を可能にした。しかし外国人は外国人登録証だけでなく健康保険証も提示するようにしたが、そのため移住労働者が薬局を何軒もめぐるということもあった。

「ウムソンの移住労働者に労働・住居・生活実態調査が必要だ」

 それでは最近の移住労働者の最大関心事は何だろうか。ウムソン外国人支援センターによると、10年ほど前までは相談で最も多かったのが「賃金滞納」に関するものだった。事業主が超過勤務手当を正しく支給しない事例が多かった。また、退職金問題もあったが、これを本国に帰っても支払われず、再び移住労働者が韓国に来る事件もあった。
 今は世界経済が困難なため、移住労働者が韓国に長期的に居住したいという流れがあるとセンターは話す。コソフィアセンター長は「ウムソンには2千程度の工場が稼働している。これにより移住労働者がウムソンに多く流入した」とし「韓国は経済的に移住労働者の助けを受けている状況だ。政治が彼らを使い捨てるように考えてはならない」と批判した。彼は、移住民が投票権を持っていないため、彼らに対する政策が特に設けられていないと指摘した。
 これにウムソンの民間団体は第8回全国同時地方選挙を前にして、ウムソン郡の候補に移住民に対する政策の樹立を要求した。△移住労働者の労働・住居・生活実態調査及び改善対策の樹立 △移住民差別のない行政及び福祉サービスの保障 △移住労働者及び事業主対象の安全教育の強化 △移住労働者相談及び法律支援チームの構成(専門相談人材)などだ。
 『チャムセサン』はウムソンで出会った移住労働者を通じて未登録移住労働者、家がなくビニールハウスに住む移住労働者など表面化しにくい人々の話も聞くことができた。2015年に36カ所に過ぎなかったウムソンの職業紹介所は現在100カ所以上運営されている。コソフィアセンター長は「未登録移住労働者はそのほとんど人材事務所を通じて仕事を受けるが、人材事務所が大幅に増えただけに未登録移住労働者がウムソンにたくさんいることが分かる」と話した。
ウン・ヘジン記者
「チャムセサン」(8月10日)

スリランカ移住労働者が寮の前に立っている。左から2番目がスミットさん

朝鮮半島通信

▲韓国の朴槿恵元大統領は8月25日、ソウル江南区のあるホテルの中華料理店に姿を見せた。
▲朝鮮中央通信社は8月25日、両江道で「悪性の伝染病に感染した疑いがある」4人の発熱患者が報告されたと報道した。
▲ソウル南部地裁は8月26日、与党「国民の力」の朱豪英非常対策委員長の職務執行停止を命じる仮処分を発表した。

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