闘争する労働者が「犯罪者」と呼ばれる世の中
ハイトゥジンロ広告塔・大宇造船1ドックで押し出された労働者
労働者闘争に「不法」という言葉がつくと、「利己的な存在」、「武力集団」のようなレッテルが貼られている。彼らが戦いを選ぶしかなかった背景も消される。不法かどうかの裁判所の判断も重要ではなかった。「不法」というレッテルは、憲法に保障された労働3権(団結権・団体交渉権・団体行動権)まで無力化した。
ユン・ソギョル政府はハイトゥジンロ貨物労働者と大宇造船海洋下請労働者の闘争を不法だとした。使用者側に偏向された保守言論と政治圏は、貨物労働者の闘争を「テロ行為」だと非難し、大宇造船海洋下請労働者が経済を破綻させると主張した。政府の「法と原則」は労働者に莫大な損害賠償責任を課すものとして帰結した。「法と原則」は、屋上広告塔と造船所船舶施設で座り込みをした労働者にどれほど偏向的に働いたのだろうか。
イチョン・チョンジュからソウルの広告塔まで上がった労働者たち
ハイトゥジンロ貨物労働者の当初の要求は、15年間凍結中の運賃を現実化しろというものだった。しかしストライキに突入した後、単純だった彼らの要求は次第に増えた。「労組弾圧粉砕」、「手配・仮差し押え撤回」、「解雇撤回、全員復職」の横断幕と支援者が本社前を埋めた。イチョン・チョンジュでハイトゥジンロ焼酎を運搬してきた貨物労働者がソウル江南のハイトゥジンロ広告塔に上がることになったのもこのような背景があった。
警察による鎮圧と使用者側の仮処分申請で労働者は闘争拠点を奪われ続けた。貨物労働者が初めて集中闘争を行ったのは、ハイトゥジンロのイチョン工場だった。6月2日のストライキに突入しながらだった。しかしハイトゥジンロ側はイチョン工場とチョンジュ工場前集会に対して業務妨害の仮処分を申請した。自分が働いていたところでデモを行うことができなくなった労働者たちは、ビール生産・出庫工場があるホンチョン工場に拠点を移した。しかし、もはやホンチョンでもデモを続けることができなかった。ホンチョン工場前のデモでは警察の鎮圧で5人の労働者が橋の手すりの下に落ちて川で溺れる事件が発生したためだ。
8月4日午前、ホンチョン工場前、労働者約200人がビール出荷車両阻止のデモを行っていた現場に警察800人余りが投入された。事件は工場につながる唯一の出荷道路であるハイト橋で発生した。当時、状況を目撃したキム・ガンス公共運輸労組貨物連帯本部のハイトゥジンロ支部2支会組織次長は「警察が近づくから恐怖のために(組合員が橋の下に)落ちた」と証言した。当時橋の上には8人が手すりに安全ベルトをつけていて、彼らを守るために20人余りが集まっていた。警察機動隊は橋の両側にそれぞれ7~8台のバスを進入させた。バスから降りた警察は、橋の始まりと終わりにいた組合員たちを橋の反対側に追いやり始めた。ハイト橋の上でデモをしていた彼らを孤立させるためだった。その後、橋の上にいた20人余りの組合員を300~400人の警察が押し寄せて鎮圧した。引きずられないために手すりに立った組合員たちは結局橋の下に身を投げた。当時は頻繁な雨で水流が普段よりも強い状態だった。
「映像を撮った組合員が警察4人に両手足を握られて出てきた。組合員の一人は、警察に腕をどれだけ強く捕まえられたのか、前腕の肉が引き裂かれ、血がだらだらと出ていた。他の組合員は腕を踏まれて靭帯もふくれあがっていた。ハイトゥジンロだけで20~30年間働いていた人たちだが、このような事態を目にしながら不安感も大きかっただろう」。(キム・ゴンス組織次長)
そうしてハイトゥジンロ貨物労働者100人余りは8月16日朝、ハイトゥジンロ本社の広告塔高空座り込みとロビー座り込みに突入した。翌日、ユン・ソギョル大統領は就任100日の記者会見で大宇造船海洋、ハイトゥジンロ事態と関連して「産業現場での労働運動が法の範囲を超えて不法的に強硬闘争化されることは一つの複案でただちに解決できる問題ではない」と言った。前後の文脈なしに「不法」のレッテルを付けるのは政府と使用者側も違いはなかった。
ハイトゥジンロ貨物労働者は、ハイトゥジンロが100%の持分を保有している水洋物流に所属している。使用者側は彼らがストライキに突入すると「不法行為」を中断し、すべての法的措置をとると脅迫した。そうしながら130人余りの労働者に契約解除を通告した。使用者側が組合員に送った「委託契約義務違反に対する催告及び解約予告」の内容証明には「貴方のストライキ、その他運送拒否は労働組合及び労働関係調整法で規定している民・刑事上の保護を受けることができない」と書かれている。
皮肉なことに、ユン・ソギョル大統領が彼らの闘争を「不法」と非難してから7日後にハイドゥジンロ側が交渉に出てきた。ハイトゥジンロ側が交渉に参席すると明らかにし、本社ロビー座り込みは解除された。これに先立つ4月に、公共運輸労組貨物連帯本部(貨物連帯)はハイトゥジンロに交渉を要求したが、ハイトゥジンロは直接契約関係がないという理由で交渉を拒否していた。貨物連帯は、損害賠償・仮差し押え撤回と解雇者復職の約束だけでもかなえば、その他の事項については対話を通じて十分に調整可能であるという立場を明らかにしている。
交渉場で労組ベストを脱がせる会社
会社側は、労組の力を弱めるためにボールを投げた。8月4日、水洋物流は組合員にメッセージを送って労組ではなく、別途の協議体を通じて議論を進めようと提案した。「外部人らによる実現の可能性が不透明な約束と無責任な扇動に引き続き導かれるのか、それとも現時点で相互の被害を最小限に抑え、運送を正常化させたしかる後に細かく不足した事案に対しては協議体を通じて解決していくかどうかに借主の方々の民主的な意見結集が必要です」。
ハイトゥジンロ貨物労働者が3月に労組に加入した理由は個人借主として運賃引き上げなどを要求してもだめだということを知らなかったからだった。1億ウォンの不動産仮差し押えにとりかかったパク・スドンハイトゥジンロ支部2支会支会長は「使用者側は個人借主として対話しても要求を受け入れず、労組に加入すると毎月協議体を通じて話そうとした」とし「信頼することができない。奴隷にしてこき使うための方法に過ぎない」と批判した。彼らが労組に加入して初めて交渉を進行した時、会社は労組ベスト、はち巻き、帽子などをすべてはずすよう要求したこともあった。
現在、広告塔高空籠城中のキム・ゴンス次長はハイトゥジンロ貨物労働者が闘争する理由をマスコミと市民がもう一度考えてほしいと要請した。水洋物流が貨物連帯側に提出した「ハイトゥジンロ運送料変動の内訳」を見ると、2013年(1・2%)、2016年(3・0%)、2019年(3・5%)を経て運送料は7・7%引き上げられた。しかし、先に原油価格下落を理由に2009年に削減した運賃8・8%は依然として回復できていない。2009年から現在まで1・1%の運送料が事実上削減されたわけだ。1日12時間以上1カ月働いても彼らが手にするお金は多くて150万ウォンに過ぎない。所得税、ガソリン代、車両割賦金、通行料、消耗備品費用すべてを個人が負担しなければならないからだ。同じ会社で働いても他の運賃を適用されることもある。ハイトゥジンロ支部が組合員がいるチョンジュ工場と馬山工場間の運送料を比較した資料によると、実際に平均30%近くの差があった。
キム次長は、労働者たちが置かれた状況を見ようとしない記事などが労組の要求を過度なものとして追いたてて、これが労組に対する嫌悪を量産していると指摘した。それとともに「(記事のコメントには)民主労総は貴族労組だ、民主労総はこの国でなくならなければならない、銃殺すべきというような労組に対する否定的な見方が広がっている」と話した。
「不法」に対する政府の二重の物差し
「今回の事態は、一部の協力企業の勤労たちが不法行為で自分たちの主張を貫徹させ、同僚勤労者1万8千人の被害と犠牲を強要する利己的行動です」。
大宇造船海洋下請労使が交渉を行った7月18日、政府が関係省庁合同談話文を通じて明らかにした内容だ。翌日、ユン・ソギョル大統領は「労だろうが使だろうが不法は放置されたり容認されてはならない。国民も政府もそれほど長くは待てなかっただろうと思う」と公権力の投入を示唆した。続いてイ・サンミン行政安全部長官は「公権力投入を考慮している」と明らかにした。労使交渉妥結前日の7月21日には、下請労働者が座り込みをしていた巨済大宇造船海洋オクポ造船所上空に警察ヘリが登場した。床にエアマット2枚が設置され、緊張が高まった。労働界と人権団体などは、警察が部隊を配置して下請労働者を脅迫していると批判した。
政府は大宇造船海洋事態で労働者の闘争を「不法」だと断定し、使用者側の行為については黙認した。また、下請労働者を利己的な存在に仕立てあげて、大宇造船海洋労働者を分断した。政府の「二重の物差し」は7月27日に出された対政府質問で如実に現れた。当時イ・タンヒ共に民主党議員は、イ・サンミン行政安全部長官に「(オクポ造船所1ドックの座り込みが)不法占拠だと捜査裁判なしにどのように確信したのか」と一喝した。するとイ長官は「では不法でなければ何か」と反問した。続いてイ議員は「(造船所労働者らは)20~30mの高空で安全網すらもなく働く。これはまさしく産業安全保健法違反だ。私が使用者側の不法行為を指摘したのは6つ以上ある」。そして「なぜ使用者側の不法行為に対しては何のひと言もないのか」と述べた。また、イ議員は大宇造船下請労働者の座り込みが始まるまでの経緯を尋ねたが、イ長官は「よく分からない」と述べた。労使葛藤が激化する状況で「不法」闘争という政府の立場は、使用者側に力を与えた。
大宇造船海洋下請労働者がオクポ造船所1ドック座り込みに突入した理由は、元請管理者の暴力と下請労働者との衝突を避けるためだった。その前に金属労組巨済統営コソン造船下請支会は労働委員会の争議調整を経て6月2日からストライキに突入していた。ストライキ初期、社内集会を行っていた彼らはその後、8つの拠点にテントを設置してスローガンを叫んだ。すると「現場職班長責任者連合会」所属の管理者だけでなく、下請業者代表と管理者まで集まって来て下請労働者を鎮圧した。この過程で女性労働者の脊椎が骨折させられることもあった。現在1ドック座り込みを行った組合員7人は業務妨害などの容疑で警察の調査を受けている。支会の事件を担当しているキム・ギドン弁護士(金属労組法律院慶南事務所)に大宇造船下請労働者の闘争が不法的だったかどうか尋ねた。
「最終有権解釈でも一連の争議行為自体が不法だとは判断されないだろう。ただし、議論の余地があるのは占拠行為部分であるが、これは(職員間の衝突を防ぐために)そうするしかなかった事情があった。かりに有罪が出ても強い罰につながるとは思わない」(キム・ギドン弁護士)。
それでは、キム弁護士はユン・ソギョル政府の「法と原則」についてはどう考えているのだろうか。彼は政府が労働者の争議行為を不法だと規定することに対する意見も付け加えた。
「政府は『企業が良くなってこそ国は健全、労働者はしばらく声を殺さなければならない』と秩序を望むようだ。この秩序で(労働者の争議行為は)自分たちが当為的に追求する法と合わない。だが、憲法が保障する労働3権と表現の自由、集会の自由など権利の側面から考えると、そんなに簡単に不法だとは言えないと思う」(キム・ギドン弁護士)。
2016年から始まった造船業不況の影響で減少した賃金を回復してほしいという造船所下請労働者のストライキは7月22日の労使合意で終わった。労組は30%賃金引き上げ要求に大幅譲歩して4・5%の引き上げに合意した。しかし現在、キム・ヒョンス金属労組巨済統営コソン造船下請支会支会長は国会前で断食座り込みを行っている。カン・インソク副支会長も大宇造船海洋社内で断食中だ。先の労使合意過程でストライキ期間中に廃業したり、廃業を控えた組合員に対する雇用の受けつぎが終わらなかったためだ。当時の合意は、組合員の雇用保証に対して業者側が「最大限努力する」というものだった。
支会は下請業者が雇用の受けつぎをしない理由について「労組活動すれば、企業が廃業して雇用不安になる」という考えを植えつけるのが目的だと見ている。4社のうち2社の組合員42人が街頭に追われたが、残りの非組合員は雇用の受けつぎが行われたためだ。雇用の受けつぎが行われていない組合員はA下請業者所属の11人とB下請業者所属の31人だ。下請業者は組合員数が多い2社で雇用の受けつぎをしていない。
また支会はこれを「偽装閉業」だと見ている。そのことについてキム・ヒョンス支会長は「既存の2社を運営していた社長が組合員数が多いA企業を廃業にした。ところが、これをA企業で総務をしていた人が引き取った。廃業した当時、20人ほどが1週間であれば退職金を受けられた状況だと話した。
大宇造船海洋下請労使間の交渉では民刑事上の責任問題もかたがつかなかった。下請労働者のストライキで8千億ウォンの損害があったようだと主張していた大宇造船海洋は26日、キム・ヒョンス支会長など5人に470億ウォンの損害賠償請求訴訟を提起した。これに先立つ25日には、ハイトゥジンロがハイトゥジンロ労働者個人に28億ウォンほどの損害賠償請求訴訟を追加請求した事実が確認された。「手を握って」によると、ハイトゥジンロはこの日まで25人の労働者に合計55億5109万ウォンの損害賠償を請求した。2億ウォンと推定される不動産仮差し押えは2件、車両仮差し押えも1件あった。
労働者に対する損害賠償・仮差し押え問題について民弁(民主化のための弁護士会労働委員会)は24日に声明を出し、「(争議行為に対して)数十、数百億ウォンの損害賠償義務を負担させれば憲法と労働組合法が保障する団体交渉権、団体行動権(ストライキ権)は何の意味もなくなる」とし、憲法上の労働3権を無力化する使用者たちの損害賠償・仮差し押えの試みに歯止めをかけることが必要だと明らかにした。特に民弁は下請労働者の労働条件の改善に元請が遅れているため、下請労働者は操業を拒否する方法で交渉力を高めるしかないと強調した。
ウン・ヘジン記者
(「チャムセサン」8月31日)

朝鮮半島通信
▲韓国政府は9月7日、台風11号の影響で11人が死亡したと発表した。
▲朝鮮の最高人民会議が9月8日、平壌で開かれた。会議では核兵器の使用条件を定めた法令などが採択された。
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