歴代「建暴」検挙事件の全貌

チョン・ギョンウォン(労働者歴史『ハンネ』事務処長)

「建暴」の歴史

 韓国の建設現場には様々な違法が横行している。請負会社を通じた違法請負、労働契約書の未作成、産業安全法違反などである。現場から自浄作業を促し、公論化するための努力が必要であったため、建設労働者は現場監視団の活動を始めた。彼らの活動をめぐって、恐喝、暴力に対する声を上げた。
 2000年10月、安山地域の建設会社と労働組合が初めて団体協約を締結した。労使は労組事務所を設け、労組の前任者の賃金を支払うことに合意した。違法請負を根絶し、組合が運営する無料就職センターを通じて適法に労働者を雇用し、雇用保険と産業安全教育を常設化することを約束した。 その結果、中間搾取と賃金不払いが減り、雇用安定性が改善され、退職金も発生した。
 全国の建設会社数は9万社を超える。 この巨大な建設産業を多段階下請け構造が支えているのだ。結果として、建設労組が現場監視団活動をしたのも、そして元請けと団体協約締結闘争を行ったのも、元請けの責任を明らかにする必要があったからである。また、建設現場に蔓延する「違法」は、多段階下請け構造から始まったからである。
 2003年末、建設多段階構造を断ち切るために労働者が始めた団体協約締結闘争は全国に広がり、その結果、9つの地域300以上の現場で団体協約が締結された。

 暴力の全貌


 検察は2003年、大田・忠南地域、安山地域の建設労組幹部たちを「金品強要」「恐喝脅迫」などで拘束した。雇用関係がなく法的義務がない元請け業者に対して団体交渉を要求し、組合専任者の賃金を元請け業者から毎月数十万ウォンずつ受け取るという内容の「団体協約締結を要求」することで「金品を恐喝」したというのが罪目である。合意に基づく組合専任費を「恐喝」金品としたのだ。 また、「元請け業者がこれに応じない場合、工事現場の安全施設の不備点などを探して労働庁に告発すると脅迫したり、工事現場を歩き回って写真撮影をするなどの威圧的な態度を示し、これに怯えた元請け業者の現場所長及び管理課長などと「団体協約を締結するように要求」することで「恐喝脅迫」をしたというのだ。
 拘束された組合幹部たちは、建設業者に団体交渉を要求し、団体協約に基づく専従費を受け取っただけである。裁判に証人として出席したかなりの数の現場所長らも「具体的な脅迫行為はなかった」と供述した。しかし2003年から3年間に拘束された建設労組幹部は28人にのぼった。
 2008年に米国発の世界金融危機が発生すると、政権と資本は露骨に労働組合と労働者を弾圧した。また合法的に活動してきた建設機械特殊雇用職の労働者たちの労働者性を認められないとして、組合設立届を拒否した。そして建設現場で建設労組組合員の雇用を露骨に拒否した。複数組合制度もうまく活用したのである。
 2016年5月には、警察庁が「建設現場の違法行為特別取り締まり」を宣言し、全国に284の捜査チーム1316人の専担要員を編成した。警察は組合員の雇用要求、集会やデモ、建設会社の利権に介入する行為などを「集団的違法行為」と規定した。これは、「朴槿恵・崔順実ゲート」が発覚し、ろうそく闘争が始まったことで頓挫した。

建設労働者はどうして暴力団になったのか?

 安全保健公団の発表によると、2022年に韓国では産業災害によって874人が死亡した。そのうち、建設現場で402人が落下し、衝突し、崩落に巻き込まれたり、押しつぶされたりした。一日の仕事を終えて無事に帰宅するのが願いの建設労働者を不安に陥れ、労働組合を破壊し、雑巾のようにこき使ってまで資本と政権が守りたかったものは何だったのであろうか。
 1994年末に流行った貯金箱があった。小銭を置くと手が出てきてサッと中に入れる便器型の貯金箱だった。それなりに人気を博し、人々はこの貯金箱を「盧泰愚の手」と呼んだ。当時、盧泰愚の私財が4千億ウォンという話が流れたが、それは不可能な金額ではない。なぜなら当時は、原発、新都市など各種社会投資事業が始まる時期だったからである。
 公然の秘密であったが、建設業は隠し資産の花形だ。「官給工事一本に一袋のペンキ」という言葉があるように、下請け、ダンピング構造の中で裏金が作られてきた。「建設業者は日雇い労働者の人件費を膨らませて隠し資産を準備してきたが、団体協約を通じて退職金控除と雇用保険制度を導入すれば、日雇い労働者の人件費が正確に明らかになるので、隠し資産を準備する余地がなくなる」のだ。(「ビザ資金の敵を一掃せよ」 ハンギョレ新聞 2004年2月26日) 
 2023年、尹錫悦大統領が建設現場の正義実現に乗り出した。 「建暴」という呼びかけとともに全国のあちこちで召喚調査、押収捜査が始まり、逮捕者が出た。現場を変える労働組合の組織力が強くなった分、「専従費恐喝犯」の数も増えたからである。黙々と不条理と闘ってきた労働者は、恥辱に耐えられず自ら死を選んだ。暴力とは何なのであろうか? 建設労働者は暴力団であろうか?

2003年建設労組の明洞聖堂での座り込み(労働者歴史ハンネより)

The KAKEHASHI

購読料
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009  新時代社