大統領の拒否権を乱発する尹錫悦

政治能力の不足と独善は拒否権で解決できない

 尹錫悦政権が再び大統領拒否権を行使した。国会で可決された「10・29梨泰院惨事被害者の権利保障と真相究明及び再発防止のための特別法案」(梨泰院惨事特別法)について拒否権を行使したのだ。

 就任後2年も経たないうちに、大統領はすでに9件に対して拒否権を行使した。その中にはキム・ゴンヒ特検法案や労働組合法改正法案もある。一言で言えば、自分たちの好みに合わない案件には無条件に拒否権で対応するやり方である。第6共和国発足以来、これまで最も頻繁に拒否権を行使した政府は盧泰愚政権であったが、盧泰愚政権でさえ、任期5年の間に行使した拒否権は計7件であった。一方現在の尹錫悦政権は、就任後半年足らずですでに盧泰愚政権を上回り、今後その記録はますます更新されるであろう。恥ずかしい新記録と言わざるを得ない。

 政府与党は政治的に偏向した法案だと主張するが、もともとすべての政治的議論は一定の偏向性を持ち、それ自体は問題ではない。過度に偏向的だと思われる場合は、国会の議論の過程で一定の調整のために努力するのが政治である。しかし政府与党はこれまで、拒否権だけを頼りにこのような努力をほとんどしなかった。まともな政治はなくなり、ただ偏向だけが残った。これまで尹錫悦政権が推進した様々な親資本的な政策も、富裕層や既得権益者に一方的に偏っている。

 拒否権を行使する代わりに遺族への支援などお金だけで解決しようとするのも問題である。何か問題が起きたら、お金を数十万円渡せばいいというものではない。遺族が真に望んでいるのは、さらに多くのお金よりも惨事の真相、特に対応過程での責任の所在の確認と、関係者に対する処分等の適切な対応、そして二度とこのような悲劇が再発しないような安全関連システムを確立することである。

 現状は、無責任で惨事関して最も責任が大きいと思われる行政安全部長官でさえ、いまだにその座に座り続けている。弾劾案まで提出されたが、政治能力が不足しているという理由だけでは弾劾できないという憲法裁の判断で弾劾されなかった。しかし、少なくとも国民に謝罪し、その場からは辞任するのが常識的な対応ではないであろうか? それでもまだその地位に居座りつづけようとしている。

 それだけではない。その後の再発防止対策も非常に不十分である。今後は安全管理にさらに気をつけるというレベルであって、システム的な改善策はほとんど講じられていない。実際、群衆密集事故は外国では過去に前例があった。例えば、イスラム聖地巡礼に関連して事故が頻発したサウジアラビアなどが代表的である。当時、これに対する改善策として提案されたのが一方通行の設定である。群衆が集まることが予想される地域では、その期間に一方通行を設定することで、いわゆる群衆が密集することによって発生する事故を大幅に減らすことができた。ただ一方通行を設定するだけなので、特に予算などもほとんどかからない。すでに外国では前例があり、予算もほとんどかからないにもかかわらず、このような基本的な対策すら講じないのは、深刻な状態としか言いようがない。

 自分たちの政治能力の不足と無責任を拒否権行使などの独善的な行為で覆い隠すことはできない。他人の話を全く聞かず、他人のせいにするのが民主国家の大統領のやるべきことであろうか? 尹錫悦政権が引き続き独善で一貫するのであれば、自らその資格がないこと暴露しているだけである。このような行為が繰り返されるなら、私たち労働党は尹錫悦を大統領として認めることはできない。私たちは、いつまでこのような姿を見守ることを強いられるのであろうか。

2024年1月30日

労働党広報室

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