3・8 女性ストライキで不当極まる世の中に問う

競争に勝つことができないのであれば、結婚、出産すらできないのであろうか

キム・ヨハン

結婚は上位20%の専有物であろうか

 結婚と出産における個人の自由な選択は、完全に保証されているであろうか? 保証されていない。2022年12月、韓国労働研究院は「労働と出産意向の動的分析」という報告書を発表した。
 結婚志向を統計的に分析した結果、正規雇用の若者の結婚計画の達成率が非正規雇用の若者より37%高かった。また、事業体の規模が大きいほど、また月平均賃金が300万ウォンを超えると、3年以内の結婚計画達成が増加することが確認される。結婚の可否が個人の経済状態によって左右されることを端的に示す統計は、男性の賃金水準別結婚率の統計である。
 2017~2019年、31~35歳の男性労働者のうち、賃金水準上位10%の婚姻率は76%、下位10%の婚姻率は31%に過ぎない。36~40歳の場合、上位10%の婚姻率は91%、下位10%の婚姻率は47%に過ぎない。
 昨年末、統計庁が行政資料を分析して発表した「2022年新婚夫婦統計結果」も同様の結果である。初婚新婚夫婦の2022年の年間平均所得は6790万ウォンに達し、特に共働き夫婦の平均所得は8433万ウォンである。共働き夫婦の場合、年間平均所得は1億ウォン以上が27・1%、7千万ウォン以上~1億ウォン未満が28・6%である。
 また統計庁の世帯当たり家計収支(2022年第4四半期基準)によると、全体の平均世帯所得は年5800万ウォンに過ぎない。2022年の新婚夫婦の半分以上は所得上位2~30%世帯に属している。
 結局、自己陶酔の資本主義における競争で勝者の地位を占めた上位2~30%にのみに結婚の自由が許されていると言っても過言ではない。住宅価格が高騰する一方で、将来に対する担保のない不安定な低賃金労働者にとっては、新婚の家を購入すること自体が実現不可能なミッションである。

自分の子供を競争において勝利させることができないのであれば、出産は無責任というのであろうか

 MZ世代が主な利用者であるインターネットコミュニティで「貧乏で子供を産むのは無責任だ」という主張が広まっている。そのような主張は今に始まったことではない。「産み落とされた」という新造語は、この感情をそのまま表している。今日の衰退する資本主義体制において、競争の勝者は様々な恩恵を享受し、社会的資源を独占するが、競争の敗者は最低限の権利さえ奪われ、社会の外に追いやられる。日々、これを暴力的に体験する人々は「産み落とされた」という表現を用いて、無限競争の中で子どもを支える財力も能力もなく自分を産んでしまった親への恨みを露わにする。そして出産や養育は人生の喜びではなく、自らの苦しみを受け継ぐという罪悪感、そして恐怖が呼び起こされる。
 今年初め、グローバル家具メーカーのイケアが2023年の1年間、38カ国の消費者を対象にした調査結果を発表した。(もちろん、家具をもっと売るために行われた調査である)。「家族と一緒に笑う時間が楽しい」という質問に対して肯定的に回答した割合は、全体の平均が33%であるのに対し、韓国は14%で最下位にとどまった。「家庭において子供・孫を育てるのが嬉しい」という質問に対する肯定的な割合も8%で、やはり世界最下位を記録した(全体平均は22%)。
 韓国の労働者民衆にとって出産と育児は、その苦痛を覚悟してあえて選択する理由がない「非合理的」かつ「無謀」な行為となったのである。特に、韓国特有の入試に向けた私教育の競争は苦痛を極大化させている。2022年現在、世帯の月平均の私教育費は41万ウォンであるが、この数字は平均である。世帯所得別に私教育費は大きなばらつきを見せている。毎月の所得が800万ウォン以上の世帯の私教育費の平均は64・8万ウォンで、毎月の所得が200万ウォン未満の世帯の6倍を超える。入試競争において、投資額に見合った成果が出ることはだれもが知っていることである。2020年、月平均世帯所得700~1000万ウォン世帯の学生の特目高(科学高校、外国語高校、芸術高校、体育高校、国際高校など、特殊な目的を持つ高校)進学率は100~300万ウォン世帯の学生の特目高進学率より2・5倍高い。逆に、月平均世帯所得1000万ウォン以上の家庭の学生の専門系高校進学率は4・1%に過ぎないが、100万ウォン未満の家庭の学生の専門系高校進学率は10倍の43・7%である。
 社会的には少数に過ぎない富裕層や競争の勝者がSNSなどで誇らしげに振る舞う「公正競争」の現状を見つつ、大多数の労働者民衆はこう考える。富裕層や競争の勝者と競争できるほど自分の子供をサポートできないなら、出産をあきらめるのが最低限の責任だと。この厳しい競争秩序の中で、自分の子供が競争の勝者になって幸せになる可能性は、自分の子供が「負け犬」になって嫌悪と軽蔑の対象になる可能性よりも低いからである。

弱者同士がお互いを非難し、軽蔑する社会

 2023年の合計特殊出生率は0・72人を記録した。特に前年度第4四半期の合計特殊出生率は0・65人、今年の合計特殊出生率は0・68人と予想される。いよいよ「闘争する階級が共に没落」(マルクス・エンゲルス、「共産党宣言」)する段階に入ったというべきであろうか。少子化による人口構造の激変がもたらす社会的波紋をだれも否定できない。特に移民に対する嫌悪と差別が公然化している。
 そしてこのような嫌悪と差別は、まず女性に加えられていることを注目すべきである。数年前から横行する「ママ虫」という表現の使用が端的な例だ。少子化で国が破綻している中、子供がレストランで食べ物をこぼしたという理由で、子供を保育園に預けてカフェに行ったという理由で、女性は夫に寄生する「ママ虫」として卑下される。妊娠と育児を理由にキャリアを断ち切られる女性が数え切れないほど多いにもかかわらず、生涯を通じて女性労働者が男性労働者より少ない賃金を受け取るにもかかわらず、無給の家事労働と育児の責任が女性に転嫁されるにもかかわらず、最も弱者である女性がむしろ嫌悪と軽蔑の対象となる。
 共同体的な連帯と協力が完全に解体された社会、自助努力が唯一無二の生存方式となった社会で、弱者はこのようにお互いの肉を噛みしめながら苦痛に耐えることを強いられる。
 長年にわたって自らを犠牲にした対価として得た各種資格と正社員の勲章は、勝者が享受すべき不可侵の特権というのである。非正規労働者が正社員になるというのは、特権を得たものが達成しうるものの領域をおかす反社会的な暴挙というのである。昨今報道されている医学部の定員増員は、専攻医時代に週80時間の労働に耐えながら勝者の特権を守ってきた医師たちに対する社会の挑戦である。

少子化を解決できない資本家政府、3・8女性ストライキで不当極まる世の中に問う

 このような不当極まりない世の中において、少子化問題の解決は不可能である。いつ自らが非難と嫌悪の対象に転落するかもしれない世の中で、だれが幸せな未来を夢見て子どもを産むことができるのであろうか。資本家政治勢力はしばしば、少子化問題の解決をうんぬんするが、現在の韓国の醜悪な環境、そして自己陶酔の檻の中で繰り広げられている状況をどのように打開できるのであろうか。尹錫悦政権や民主党が少子化対策として打ち出してきた政策は、資本家階級にこの社会を運営する能力がないことを証明する事例の一つに過ぎない。
 少子化を解決することは容易である。まずは、すべての労働者が未来を夢見ることができる社会をつくらなければならない。雇用形態が安定的で、労働時間が規則的で短く、十分な生活賃金を得ることができなければならない。強制された性別分業がなく、男女の養育者の両方がキャリアの断絶と所得の損失なしに育児に専念できるようにしなければならない。また、この社会で成長する後世のだれもが、人間として享受すべき基本的な権利を例外なく保証されなければならない。私たちの子供が生きていく人生が、冷酷な競争の勝敗に終始するのではなく、連帯と協力の中で感じる喜びで満たされるという確信がなければならない。
 しかしこれらは、資本家政府の下では不可能なことである。労働者民衆に人間らしい生活を保証することは、資本の利益を侵害することと同義だからである。資本の利益と秩序を守ることが存在目的である資本家政府としては、受け入れられない話である。政府は、「地方の発展によって競争を緩和する」、「3人目を出産すれば1億ウォンを支給する」など、聞こえのよい言葉ばかりを繰り返している。
 真の希望は労働者自身にある。弱者に対する軽蔑と嫌悪ではなく、連帯と協力があふれる社会、だれでも人間である以上、一人の例外もなく尊厳が保証される社会、労働者が失業と低賃金の恐怖の代わりに安定した雇用と生活賃金を保証される社会、それによって出産と養育の決定が完全に個人の自由な選択に従って行われる社会、出産と養育を決定した労働者が罪悪感と恐怖を感じる代わりに充実した人生の喜びを享受できる社会は、まさに労働者がつくり出していくものである。
 3月8日、この社会で苦しんでいる女性労働者がストライキに出る。女性は職場で女性であることを理由に採用競争から追い出され、低賃金に苦しみ、妊娠・出産を理由に解雇され、昇進の対象から外されている。女性は無給の家事労働、育児の責任を全面的に担いながら、「ママ虫」という非難と嫌悪の対象となっている。この資本主義社会において劣悪な環境にいる労働者たちがストライキに出るのである。
 労働者それぞれが互いに食い合う競争に没頭することで、利益を得るのは資本家階級だけである。その代わりに、労働者が一つの階級として団結して闘争するとき、この極めて不当な世界に代わる全く新しい世界をつくり出すことができるということを歴史は何度も示してきた。3・8女性ストライキは、この世界に突破口を開き、新しい世界へと進む偉大な出発点となるであろう。その道に共に歩んでいこう。
(「社会主義に向けた前進」のサイトより)

「3・8国際女性デー、女性ストライキ」
「女性が止めれば、世界も止まる」

朝鮮半島通信

▲金正恩総書記は2月28日、平安南道成川郡地方工業工場建設の着工式で演説を行った。
▲平壌の和盛地区第3段階1万世帯住宅の着工式が23日に行われ、金正恩総書記が参加した。
▲韓国政府は3月4日、政府による医学部増員計画に反発して職場を離脱した研修医の医師免許を停止する手続きに入った。

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