国際主義労働者全国協第35回総会コミュニケ
市民と左翼の戦線軸に生活破壊と
反動はね返す社会的抵抗の強大化を
国際主義労働者全国協議会は、11月上旬第35回総会を行い、東北、関東、九州の同志、および経済問題の特別報告をお願いしたゲストの参加の下に、われわれが直面する歴史的な危機に対する評価、およびそれが提起する課題について討論し、長期的な任務と当面する行動方針、また深めるべき論点を確認した。議事は、事務局の同志によるによる「情勢・任務報告」、およびゲスト報告者による「『失われた30年』と日本経済の現状」(両方ともレジュメ事前配布)の冒頭提起を受け、前半は経済問題に集中し、その後前半の論点も引き継ぎつつ現情勢の評価とわれわれに課された任務について討論が進められた。なお討論素材として、九州の同志から「現代日本の階級構成」が配布され、今回参加できなかった同志からの意見も伝達された。
その上で討論概要は以下のようなものだった。
1.経済議題
報告者は、分かりやすい図表が多く付記されたレジュメに沿って、「失われた30年」の経過を追いつつ、それが何をつくり出したかを詳説し、低成長の持続(世界総体においても)の一方で、資本と富裕層にとってこの30年が潤沢の30年だったこと、その対極に貧困層の膨大な形成があったことを明らかにし、そこに働いたメカニズムを説き明かした。そしてそこで最大の問題が運動主体の危機と提起し、その克服への真剣な取り組みを訴え、貧困層を中心とした政治から疎外された層、特に若年層へのアプローチを具体的に追求すべきと強調した。そしてそのひとつとして、最低賃金の考え方をあらためて整理する必要を強調し、たとえば「ひとり親世帯でも人間らしい生活ができる」水準として、連合がさいたま市をモデルに成人1人子ども2人世帯の生活賃金を2241円/時と算出していることを参考に、2500円/時を要求とする社会運動も必要になるのではないかと提起した。
そして結論として、特に資本の成長が税依存でしか望めなくなっていることを背景に支配階級が大軍拡に踏み出した中で、今後確実に消費税大増税、年金改悪が焦点化することを見据え、そこに対峙するエネルギーを社会の深部から引き出すためにも、憲法を含めそれらに対する対案・要求には何より資本の成長に真っ向から挑む大胆さが必要、と力説した。
これを受けて討論はまず最賃、生活賃金が論点になった。
具体的には、1500円/時を軸とした全労協の討論状況やナショナルセンター横断の最賃全国キャンペーンの運動実態、また各県最賃審での検討実態、と生活賃金2500円/時の考え方の大きな落差。
少子化問題は日本の賃金が労働力を再生産できない水準になっていることをも示すもので、本来は資本主義の持続可能性の危機との観点、あるいはともあれ1500円/時を岸田が公言せざるを得なくなっている状況や地方最賃審のある種の「反乱」の現状確認など、さまざまな意見交換が行われた。そしてそれを通して、現実には特に地域ランク分けの打破を中心に制度の外から声を大きくしていく必要があるが、その中でわれわれなりに最賃の考え方をあらためて整理し、社会的に問いかける必要が浮き彫りになった。
2点目はAI成長論と、それによる労働変容への対応。またそこで提起されることが多いベーシックインカムをどう考えるか。いくつか問題意識が提起されたものの、現状ではわれわれに知識不足がありまだまだ踏み込んだ討論にはならなかったが、若者にはリアルかつかれらが今後確実に直面する問題であり、欠かせない研究課題であることを確認した。
なおベーシックインカムについては、われわれの多くが今一つ釈然としていない感覚をもっていることを確認した上で、そのとらえ方をおそらく賃金とは性格が異なるものとして改めて深めて整理する必要が確認され、併せてその意図は不明だが維新が自身の政策からベーシックインカムを外したことにも注意が喚起された。
2.情勢・任務について
提起の中心的問題意識は、昨年総会以後の世界と日本の動きを全体で確認しつつ、それを世界総体の混沌化の不可逆的進行と評価し、そこに働くメカニズムを分析した上で、労働者民衆の闘いを、資本の蓄積が社会と環境の破壊力に転化した段階における闘争としてどう構想し日本で展開するかだった。
具体的には、危機が深まる一方の現状は客観的にエコ社会主義への資本主義からの脱却を求めているものの、そこに向けた労働者民衆の政治的収斂がまだ進んでいない現実をどう克服するかであり、現実に進む社会的、環境的破壊に否応なく高まる社会的抵抗の推進に積極的に貢献することを前提に、その抵抗が先の克服を可能とする性格の闘いに発展する水路の探求が討論課題として提起された。
そして、投票率50%固定化に象徴される政治からの疎外を打ち破り社会の深部から抵抗のエネルギーを引き出すことへの挑戦、そこに向けた要求の練り上げと突き合わせの社会的推進、その中への破壊力化した資本を社会に取り戻す要求の結合、その具体的表現の検討、そしてその当面する政治表現として、市民と共産党・社民党・れいわを軸とする戦線押し上げを推力に、市民と野党共闘における民衆的主導力の発展の追求、が強調された。
これを受け以下のような論点が討論された。
まず世界のとらえ方として、米・西欧による世界的支配戦略が完全に行き詰まっていることを明確に確認することの重要性。この点で、ソ連崩壊後の東欧について現状と今後の分析の必要性、また「かけはし」掲載のパレスチナ問題に関するFI声明(10月23日号)には物足りなさがある、との指摘があった。また、湾岸戦争時に日本の支配階級に表面化した「トラウマ」が、ガザの場合どうなるかの注視も求められた。
次いで岸田政権の支持低落に関する評価。これを社会的階級構成の変容も背景とした自民党による保守基盤掌握の弱体化としてとらえる観点から、今後の政治的不安定化への備え方が議論され、維新やれいわに対する評価も論点になり、れいわについては支持層が内包する新しい層の運動を広げる可能性についても指摘があった。
さらに要求を過渡的要求として具体化するためのわれわれとしての深めと、それをより広げた場で議論することへの本格的な挑戦が確認され、その1部として、共産党支持者との議論の可能性が生まれていることへの注意も喚起された。そしてそれらを通じ、投票率50%固定化打破が極めて重要であり、そこに向け要求やスローガンの練り上げにさらに検討を続けることが確認された。
また上記との関連で、反原発運動の現状、およびパレスチナや入管やミャンマーなどにもまじめに向き合い、斎藤幸平とのつながりもつくっているFFF運動についての討論から、若者の政治忌避感覚の克服を含め若者との距離が依然大きな問題として残っていることが確認された。
最後に、2025年が戦後80年であり、改憲を含むさまざまな制度改悪がその時期に向かって集中する可能性に備えることを意識して、要求の大胆な打ち出しを軸に上記の確認の具体化を急ぐことが確認された。