第34回国際主義労働者全国協議会(NCIW)総会コミュニケ
2022年12月7日
危機に立ち向かう労働者民衆の自立的決起の政治的飛躍に向け左翼の再生を
国際主義労働者協議会(NCIW)事務局
国際主義労働者協議会は、九州、関東、東北の同志、また日頃活動を共にする仲間と共に、10月末総会を開催し、用意された議題について各々の観点を闊達に出し合い、われわれに課された任務と深めるべき議論の方向を確認した。
今回の総会では、2人の同志による問題提起(レジュメは事前配布)を中心議題とし、第1議題を情勢・任務報告、第2議題を「『再公営化・公有化』を考えるにあたって」に設定した。そして、第1議題では、情勢の深く危機的な性格とそこに必要な基本任務を共有し、その基本任務の核心となる、特にこの間不足しているわれわれの政治主張の不可欠な内容として第2議題の討論という議事日程の下、公有化問題を、再生されるべき左翼の政治内容として今後われわれが積極的に提起し議論の広がりをめざすことを確認した。さらに労働者民衆が現に直面している困難を打開する要求としてその具体化をめざす観点から課題を多面的に検討した。
具体的には以下の概要のような討論を行った。
第1議題
報告はまず、昨年確認した歴史的転換期における闘いの構図とそこにおける任務を踏襲しつつ、日本における安倍元首相銃撃が露わにした日本のブルジョア支配の深部における弱体化、およびロシアのウクライナ侵略が、社会、経済、政治、国際枠組み、さらに生態系にわたるあらゆる側面でシステムにおける行き詰まりと未来の不透明化をより切迫性をもって提示していると提起した。そして、それゆえ労働者民衆の内部から新たな世界を引き寄せる闘いを強力に発展させる必要、をあらためて明確にしつつ、そのためにも特にシステム転換に正面から挑む左翼の再生をわれわれの核心的任務として強調した。その上でその基礎を、世界的に、また日本でも現に自立的に進展している民衆的抵抗と確認した上で、その積極的推進をわれわれの出発点的な任務とし、再生されるべき左翼にはそこにシステム転換の方向性を与える政治性が不可欠として、その柱のひとつとして公有化要求の積極的な位置づけを提起し、そこで課題になると思われる点について特に討論を求めた。
◦討論ではまず全労協34回大会について報告され、労働運動の現状を確認した。その上で、非正規労働者の闘い、公共サービス取り戻し、最賃など、労働者全体への働きかけを追求しつつ各地域全労協が独自的に挑戦する必要を共有した。
◦政権の原発回帰に同調する規制委の変質、および女川を始め各地の住民がそれに真っ向から対抗し、支配側の思惑を打ち砕く力になっている現状も報告され、補足的な報告を含め闘いの推進に向け討論が行われた。
◦デカップリングや国家による部分的な経済統制強化の動きなど、新自由主義の世界的土台が揺らぐ中での資本主義経済の展開と新たな危機の様相、そこにおける日本ブルジョアジーの対応(岸田の路線含め)に関する議論を深めるべきとの指摘が行われ、課題として確認された。
◦この提起を切り口にして、気候変動問題に取り組む若者の運動の現状からシステム転換を左翼が明確に主張すべきとの観点、コモンズを重視する斎藤幸平を積極的に評価すべきとの観点、ベーシックインカムには私的所有否定の性格がありそれらの資本主義を解体する政策の提起により、棄権という形で現システムへの絶望を表現している層に積極的に切り込む必要など、さまざまに議論が交わされ、人々をシステム転換に引き寄せる具体的な論点提示の必要が共有された。またベーシックインカムの要素としては、医療、教育、エネルギー、住宅などを社会的現物給付の形態もあるとの指摘、また日本では生活の全側面を事実上賃金でまかなう形にされていることで貧困化がより深刻になっているとして、政治がそのようなあり方とは別の道を作ることができることを明らかにすべきとの主張も行われた。
第2議題
この議題の討論も、事前配布レジュメに沿った報告に基づき始められたが、そこでは特に、国民的課題になっているまともな最賃制確立にとっても、また広く民営化が進められている自治体行政の立て直しにとっても、再公営化が決定的な位置を占める、と強調された。またこれまでのわれわれの伝統的な理念と現代的課題の関係を整理しつつ、現代の提起としてはあくまで現実の人々の切実な必要として具体化することが重要と強調された。そして第1議題での討論をも引き継ぐ形でさまざまな角度から議論が交わされた。
◦ひとつは、公有化と国有化の関係をどう考えるかという問題。世界で進んでいる事例から市民的管理のための「買い戻し」+税制によるブルジョア負担という観点、国家に対する疑念を背景にしたコモンズ的捉え方、あるいは事業管理を労働者に限定せず関係住民にも広げる社会化という観点など、いずれにしろ事業管理を民衆の手に取り戻すことを明確にした考え方の重要性が確認された。
◦また民営化が何をつくり出したかの具体的総括に関しても、公的責任の放棄や賃金格差の拡大、さらに農業の荒廃まで具体的に明らかし、広範な人々とその破綻を共有する必要が確認された。またその重要な要素として、民営化推進を正当化した「効率」や「市場化」による最適配分の理念の空虚さを、現実に照らして暴くことも必要と指摘された。
◦具体的な事例として、宮城県の水道民営化もひとつの論点になった。それに際し老朽施設維持費の重さが理由とされたことに対し、民営化とはそれを単に利用者の個々負担を重くすることに変えるだけ、県の赤字は問題ではないとして公有化に戻せとはっきり主張する必要が共有された。
◦これらの点では、県や国の赤字などを理由とする公有化否定の論理に対し、それが資本主義を前提とする議論であることが指摘され、そうではない未来社会の構想から現在のあり方を構想する観点の必要性も提示された。また生存に必要なものとして、社会的共通資本の理念をわれわれとして積極的に位置づけ、公有化をその社会的担保として論理化する必要も指摘された。
◦鉄道150年に関連して、日本経済新聞にむき出しの新自由主義がなく、社会的共通資本を妙に持ち上げていることの背後に何があるか、としての注意喚起も行われた。
◦斎藤幸平のコモンズ重視には、社会主義=成長志向という決めつけがあるが、重要なのは民衆の要求を政府や議会に強制するという観点、議論をその方向で発展させるべきとの指摘も行われた。
以上、各自が市民連合や地方選、また労働運動を通じた左翼再生追求を念頭に議論を交わしたが、特に再公営・公有化の場合、その運動方針の具体化の点では一定の煮詰まりに至っていないことは明白であり、今後1年現場でのさまざまな試行を通してさらに議論を深めることを確認した。なお、マイナンバーカードが健康保険証に限らず、女川原発では避難所指定にも利用が計画されるなど、さまざまに問題を引き起こしていることへの抵抗を具体的に検討することも呼び掛けられた。