はね返せ!民主主義の破壊

4.25 止めよう改憲!おおさかネット講演会
日本学術会議任命拒否を問う
松宮孝明さんが講演

 【大阪】止めよう改憲!おおさかネットワークの憲法講演会が4月25日、PLP会館で開かれた。ネットワークの代表の中北龍太郎さんが、主催者あいさつに代えて「天皇機関説事件―戦前に見る言論弾圧」と題して短い講演をした。
 この事件は1935年に起きた弾圧事件で、当時の東京帝大教授美濃部達吉の著作を発禁処分にし、公職から追放し、機関説禁止を公に表明した事件だ。天皇機関説は当時の憲法学の通説であり、政党政治の基礎的理論であった。つまり、国家は法人、天皇はその最高機関、議会は内閣を通じて天皇の意思を拘束するとした。
 このことが、大日本帝国憲法第1条の天皇主権に反すると軍部や政党から批判された。政府の機関説禁止の理由は、日本人の国民道徳規範に政治的に適合しないというもの。こうした犠牲の後、日本は全面戦争の時代にはいっていくが、多くの犠牲の上に、戦後の新憲法で学問の自由が保障された。
 続いて松宮孝明さん(立命館大学教授)の講演に移った。松宮さんは日本刑法学会理事であり、共謀罪の創設を含む改正組織犯罪処罰法についての参議院法務委員会の参考人質疑(2017年6月)では、同法を「戦後最悪の治安立法」と批判した。 講演に続いて、古橋雅夫さん(「戦争法」違憲訴訟の会)から、90年代から何度となく繰り返されてきた平和訴訟の歴史と「戦争法」違憲訴訟の4月大阪高裁判決について問題提起があった。二木洋子さん(市民運動連合高槻・島本)からは、2度も住民投票で否決された大阪都構想のねらいと成立した大阪府市広域行政一元化条例について問題提起があった。
(T・T)

松宮さんの講演から

国の意向と学者の排除

コロナ対策と
任命拒否は同根


 学術会議の会員に推薦されながら任命されていない問題のもつ深刻な本質について話したい。学術会議会員の任命拒否とコロナ禍対策の失敗は、同根の問題だと思う。Gotoキャンペーンと五輪開催にこだわり、コロナ対策は後手後手に。それについて国民に説得的な説明ができない菅首相、その背景には専門家軽視と「耳の痛い話」を聴かない態度がある。
 任命拒否が明らかになり、学術界だけでなく法曹界・映画界・文学・芸術界などから、政府と首相の対応を批判する声が上がった。問題は学問の自由全般に関わる問題だ。でも、拒否の理由について説明はない、必要な情報を国民に提供しない。
 ワクチン接種も後手に回りながら、政権のために五輪中止は決定したくないということなのだろう。ワクチン接種は国民のわずかに2%、医療関係者を優先するとしていた接種は未だ終わっていないのに、高齢者に接種をするというリスクのあるやり方が行われている。ファイザーのワクチンもいつ確保できるかは不透明。なぜ? 詳しい説明は何もない。NHKが毎朝聖火リレーをライブで放映、大阪では万博公園太陽の塔の周りでの聖火リレーを長々とライブで放映していたのには、正直情けなくなった。
 
事務局長から「任命簿に名前がない」
 さて本論の任命拒否のことだが、話を半年前に戻す。私と学術会議の関係は、2008年秋、連携会員に任命(任命は会長)されたときからだ。それ以来12年間、刑法学者として仕事をしてきた。例えば、日本の法学教育や国際化・法学と心理学の連携(えん罪事件の場合の自白や目撃証言の信用性、被害者が子供の場合の供述の取り方)・自動運転の実用化の際の法律の観点からのチェック点などについて。自動運転については勧告をした。
 そして、学術会議会員から、次の会員に推薦された。学術会議総会(昨年10月1日)の前に任命式があったが、その2日前つまり昨年9月28日に学術会議の事務局長から電話があり、会員に推薦されているのに任命簿に名前がないことを伝えられた。何かの間違いではないかと事務局が官邸に問い合わせたら、間違いではないが、理由はいえないとのこと。そんな違法行為できるわけがないとフェイスブックでコメントしたことで、マスコミの取材を受けた。
 政権は軍事研究への抵抗を排除するための布石を打ってきた。「言うことをきかない公務員には辞めてもらう」と学術会議の会員推薦者6人を外したことで、学術会議に影響を与えて会議をコントロールすることを狙った。理由のない任命拒否は明らかなので、世間が問題に気付かないように組織的にデマを流した。学術会議会員は年間250万円の終身年金をもらっているとか、中国の軍事研究を学術会議がやっているとかなど。

日本学術会議
法の意義は?


 学術会議は何をするところか。日本学術会議法(1948年7月に成立)は前文をもった格調高い法律だ。科学が文化国家の基礎であるという確信に立って、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と連携して学術の進歩に寄与するとうたわれている。日本社会といわず人類社会の…と言っているのがすごい。
 この法律では、学術会議は内閣総理大臣の所轄で、経費は国庫の負担、学術会議は政府から独立して科学に関する重要事項を審議し研究する。政府は科学の研究や試験等の助成・科学振興のための交付金や補助金の配分について諮問、また学術会議は科学の研究成果の活用や科学研究者の養成に関する方策などを政府に勧告することができる。
 大臣の諮問機関の人選で、大臣は耳の痛いことを言う人は選ばない傾向がある。例えば法制審議会。共謀罪法案は同審議会に2002年に諮問されているが、当時法制審は政府の思うとおりの答申を出した。近代刑法では既遂の行為に対してしか罪に問えないはず。国際条約批准のための共謀罪といわれたが、国内法は十分整備されていた。
 
軍事研究は自
由と両立せず


 学術会議法第7条では、会員は推薦に基づいて内閣総理大臣が任命、会員の任期は6年、3年ごとにその半数を任命する、と明確に書いてある。任命することができる、ではない。会員は、優れた研究又は業績のある科学者の中から会員候補者を推薦する。
 学術会議は、創立の時から、戦争を目的とする科学研究には従わない決意を表明してきた。それは、前身の組織が戦争協力をしてきたことの反省の上に学術会議がつくられているからだ。研究内容の自由も研究発表の自由も学問の自由の一角だ。軍事研究についての学術会議の声明(2017年3月)では、防衛装備庁の『安全保障技術研究推進制度』について、研究者の自主・自律性、研究成果の公開性を担保することが必要だと述べているが、応募するなと言ってはいない。学問の自由を保障できるのかということだ。
 好きなことやって何が悪い? という意見もある。個々人は、社会に役立つという前提で研究する必要はないが、学術会議としては、その視点は大切だ。自由に研究発表し、学問で得た成果を世界の人々の幸福に役立てることも学問の自由に属する。若手の研究者(大学の助教・講師、場合によっては准教授も5年契約)は、研究成果が自由に発表できないと職がない。軍事研究では、研究成果の発表の自由がなくなる。守秘義務を伴う研究を若手研究者養成が使命である大学でやらせてはいけない。この件については慎重にしてほしいと学術会議が要請するのは当たり前だ。
 一般研究の予算を削って、軍事研究に予算をつけるのはおかしい。軍需・民需いずれにも利用できるようにしておくべきだ。大学の研究者も含め、軍事研究に動員しようとして防衛装備庁に多額の予算をつけたのが安倍―菅政権だ。研究者は軍事予算に手を染めてしまったら、軍事研究の中で生きていくしかない。今の日本では、すぐ役立つことにしかお金が出ない。自民党PTのいう学術会議改革と任命拒否問題とは筋違いの問題だ。学術会議は予算が足りない。会員・連携会員1人月1万9千円。これでは東京出張の交通費にもならない。元学術会議会長だった有馬朗人さんは生前、大学を独立行政法人にしたことを悔やんでいた。大学の自由の拡大のためを思ってやったのに、結果は逆になったと。

勝手な憲法解釈
は許されない


 日本は法治国家と言いながら、憲法15条1項(公務員の選定・罷免)、65条(行政権は内閣に属する)、72条(内閣総理大臣の職務)を勝手に解釈して、暴走している。しかし、15条1項には、公務員の選定・罷免は国民固有の権利、とある。73条には、内閣の職務として法律を誠実に執行する、とある。学術会議問題で官邸は法律を守っていない。憲法15条1項で、意に沿わない人物は任命しないという態度をとり続けるなら、裁判官や国立大学の学長のような役職についても政権の意向に沿った人間でないと任命しないということが可能になる。このような解釈は、憲法15条1項をナチスドイツの全権委任法に変えてしまうものだ。これは放置できない大問題だ。 (講演要旨、文責編集部)


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