「石木ダム」を幻へ

寄 稿

現住民家強制代執行の暴挙を止めよう(下)

(K・K)

 ダムの目的は

 こうして土地を形式的には手にした県だが、何のためにダムが必要なのか。当初、県は「針尾工業団地に水が必要だ」としていた。県が1972年から79年までかけて造成した127万平方メートルに及ぶ工業団地だ。しかし高度成長期は終わっており、企業誘致に失敗した結果、後釜にハウステンボスが来ることになった。すると、ハウステンボスは膨大な水を使うからダムが必要だと言ったが、「開業してダムはないが水不足になったとは聞いたことがない」(住民の話)。
 さらに佐世保市の水不足に対応するためともいう。市の保有水源は日量10万トンで、ここ数年の実績は7万トンから8万トンの間にある。佐世保市の需要予測は人口は減っていて給水実績は右肩下がりに減っているのに、水需要は右肩上がりに増えていくという予測で2020年で実績と予測の差では3万トンという出鱈目ぶり。
 水不足を言うかと思えば次は洪水だ。「100年に一度の大雨に対応するため」と県は治水の役割を持ち出す。しかし、本流・川棚川の11%の流量しかない支流の石木川にダムを造ったところで大きな影響はなく、川棚町自体は「河川の浚渫をきちんとやれば対応できる」と見ている。「本当にダムの目的は何なのだ、そんなにコロコロ目的が変わるダムなんて必要なのか。造ると言い始めて50年出来とらん。結局、必要じゃなかったわけたいね」。と住民は語る。

 赤地に白丸の旗

 川原地区の公民館には、檄が書かれた労働組合などの赤旗に交じって、赤地に白丸の旗が飾られている。日本のダム建設反対運動に大きな影響を与えた筑後川水系の下筌(しもうけ)ダム闘争時に、反対運動を主導した故室原知幸さんが、その拠点「蜂の巣城」に掲げた「室原王国旗」だ。この旗は「45年前に地域で室原翁を訪ね、公共工事と基本的人権を問う旗として使わせてもらっている」(住民)という。赤は民衆、白は権力を現し、民衆が権力を取り囲み小さくしていくことを意味している。
 団結小屋の壁には室原翁の言葉が看板になっている。「『収用法』は伝家の宝刀ではなく鉈(なた)である。返り血も浴びる。何回も振り回さねばとどめはさせぬ。またそれで全てが終わるわけではない。これからが苦しみの始まりである」。看板を掲げる住民の一歩も引かない決意が示されている。

 ふるさと守る

 ダムに反対する闘いは故郷=共同体を守る闘いだ。女性陣は口々に石木・川原について話す。「自然がいい」「隣近所仲がいい」「四季折々の美しさがある」「野菜も色々取れる」「佐世保に行くにも長崎に行くのも便利」「土地に愛情がある」「住むにはちょうどいい」「自然からパワーをもらっている」―ふるさとに対する思いに切りがない。
 かつて海軍の町だった佐世保に近いことから川原地区には戦時中、海軍工廠が疎開していた。今でも工場建設のため山を穿った跡があちこちにある。古老は「戦争で土地を強制収容され、今度は農地だけでなく家まで奪おうという。公正な、納得できる理由もなしだ」と憤る。
 住民の堅い決意は「石木ダム絶対反対同盟」というその名称の「絶対」に現れている。「絶対に渡さない」「絶対に動かない」。家と土地を渡さないという決意がある。「私たちには絆がある、県から痛めつけられたが、それを乗り越えてきた」と語る女性陣は、グループで座り込みなど闘いや、畑仕事の合い間合い間を縫ってグランドゴルフに興じ、旅行も楽しんでいた。「北海道も沖縄も行った。海外もね」と楽しそうに話す。しかし県の昨年からの付け替え道路工事強行によって座り込みは午前午後分担しても休む暇なく毎日だ。
 3月25日の福岡高裁における付替道路工事差し止め請求公判で住民の岩本さんは「石木ダムの問題で、私たちは半世紀にわたって苦しめられ、当たり前の日常を奪われ、精神的な苦痛と不安を受け続けており……石木ダムをどうしても完成させるためには、前代未聞の行政代執行を行うしかありません。しかし、そうなれば、全国民を騒がせる大ニュースとなることは間違いありません。国民から大きな非難を浴びることは避けられないでしょう」と陳述し、「自分たちの生命や財産は自分たちで守るしか方法はない。裁判の結果がどうなろうと一致団結して闘い続けます」と固い決意をのべた。

 
 造るのが目的のダム

 県職員という県の貴重な人材も無駄に使われている。ダム現場で日がな一日、反対する住民を監視するだけが仕事の職員は「やりがいないね」と問いかける反対派の人の声に「まったくありません」と応える。彼ら本来の土木技術を活かす現場は石木ダムに反対する住民の監視ではなく県内いたるところに存在するのだ。
 石木ダム反対の闘いには長期にわたる闘いで住民の心配もある。ある女性住民は「私たちはどんどん年をとっていくのに行政のような組織は人が入れ替わって年取らないからね」。
 だが、住民は孤立してはいない。県民や佐世保市民にも力づけられる。佐世保市や長崎市でプラカードを持ち、毎月スタンディングしていると「激励する人は多い。市内のいろんな地域でも学習していて、私たちに共感してくれる」。支援の輪は長崎県内や福岡・佐賀県内の市民が現場の座り込みに参加するという形で広がりつつある。
 石木川まもり隊の代表の松本美知恵さんは3月30日に「石木ダム事業は、今や必要だから造るのではなく、造ること自体が目的になってしまっています。県民が石木ダムを望んでいないのは様々なアンケート調査結果を見れば明らかであり、そんな事業に県民の血税を浪費すべきではありません。」と真実を指摘して、中村長崎県知事に「強制収容はしないと答えていたが強制収用手続きをしてしまったが、今工事を止めれば間に合う」と決断を促しています。
 全国から石木に注目し、無駄な石木ダム建設と対決する13世帯を、全国からの応援で支え、ダム計画を断念させよう。
 「ただ造るためだけのダム」を止めさせよう!
 共同体の破壊を許すな!

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