「琉球・沖縄から見た尖閣問題」

4.24 松島泰勝さんが講演
沖縄一坪反戦地主会関東ブロック総会

「中国脅威論」
のウソを暴く


 4月24日、東京の渋谷勤労福祉会館で開催された、沖縄一坪反戦地主会関東ブロック2021年総会の記念講演で、松島泰勝さん(龍谷大学教授、琉球民族遺骨返還請求訴訟原告団長)が「琉球・沖縄から見た尖閣問題―日本の植民地問題を問う」と題する報告を行った。松島さんは『琉球独立論 琉球民族のマニフェスト』(2014年、パジリコ刊)の著書もある石垣島生まれの気鋭の政治学者だ。
 同記念講演の呼びかけビラは、次のように述べている。
「“尖閣諸島”問題は、今日では日本政府の植民地主義的(国益)な言い分がすっかり幅を利かせ、それにマスメディアも一役買って『中国脅威論』として世論を煽っています。そのことは、日本国の周辺に位置づけられ、国境の地として軍門で閉じられようとしている琉球の島々にとっては、自衛隊基地建設強行として日本国の“防壁”を担わされることを意味します。最近、尖閣諸島では、地元漁民に扮した者が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)し、操業中の漁船が追尾された!と、マスコミが全国に流布し、自民党国防族が針小棒大に“こと”を煽り立てる構図が作り上げられています。霞が関から遠く離れた島々での出来事は国家に都合のいいように加工しても良いものでしょうか。『尖閣諸島問題』の本質を、琉球・沖縄の視座からあぶり出し、改めて問います」。

尖閣は琉球の
領域なのか?


 昨年、松島さんは『帝国の島 琉球・尖閣に対する植民地主義と闘う』を出版した(明石書店)。沖縄の闘いを、このように沖縄の「主権」としての「領土」問題に焦点を当てて歴史的・かつ現在的にアプローチすることは、きわめて重要だ、と私も考えている。
 言うまでもないことだが、松島氏らの主張は決して、「尖閣」が「琉球」の領域だったというものではない(それは、歴史過程から見て明らかである)。「尖閣」は歴史的にその存在が明確になって以来、清王朝=中国の版図に属すると見なされていた。
 明治政府が、尖閣諸島を沖縄県に統合したのは、1895年の1月、すなわち「琉球処分」からさらに16年後、日清戦争の戦局が日本の勝利に帰することが確定的になって以後のことだった。すなわち日清戦争を経てはじめて「尖閣諸島」の日本帰属が確定したのであり、この点では、台湾を植民地化したことと尖閣諸島の領有は同一の政治プログラムに属する事柄だった。この分析は、井上清氏の古典的名著といえる『尖閣列島 釣魚諸島の史的解明』(現代評論社刊)に付された、江戸時代(18世紀末)に林子平らが作成した詳細な地図を見ても明らかである。これはおそらく詳細で正確な地図として、尖閣諸島が描かれた最初のものだろう。同図では琉球諸島と尖閣諸島は異なった色彩で描かれており、尖閣は中国(清)と同じ色になっている。

「産経新聞」の
キャンペーン


 尖閣諸島の主権をめぐる問題は、正反対の角度で、極右政治勢力の側からも強調されている。さる3月に産経新聞社が『別冊正論』36号として『尖閣絶体絶命』を刊行した。表紙では「日本固有の領土が奪われようとしている」という危機アジリのスローガンがうたわれている。同誌「あとがき」では、田北真樹子編集長が次のように書いている。
 「それにつけても、日本の領土がいつ奪われるかもしれないという瀬戸際にありながら、我が国の政治は貴重な国会論戦の時間を週刊誌ネタに費やすのんきさ。メディアも然り。議論すべきことは山積なのに、それらには向き合わない。特にいま集中的に語るべきは安全保障なのに、主要議題にさえならない。周辺国は日本の能天気ぶりに苦笑していることだろう」。
 ここには、極右派の焦りが表現されている。先に引用した本集会へのチラシに出てくる「地元漁民に扮した」謎の船舶を動かしている連中が遠からず馬脚をあらわすことになるかもしれない。

自己決定権で
軍事基地撤去


 松島さんは講演の結論で次のように述べている。
 「琉球は日本固有の領土ではない。独自の国であったが1879年に侵略、併呑され、日本の植民地になった。日本政府によって設置された沖縄県を通じて、日本政府は尖閣諸島の領有化、開発を進めたのであり、尖閣の領有化は琉球併呑を前提としている。日本政府の固有の領土でないから、政府として国旗、標木、国標等を設置できず、原油の採掘事業も実施することができない。『紛争は存在しない』として中国や台湾との交渉(対話)を拒否し、帝国主義の法理である『無主地先占』をもって領有化を正当化している。『尖閣』を守るとして、琉球の軍事主義化(自衛隊基地の建設、極右教科書の採択など)を推し進め、琉球の脱植民地化、脱軍事基地化のための自己決定権運動を阻止しようとしている」。
 「これまで国連の人種差別撤廃委員会、国連人権規約委員会は琉球人を先住民族として認め、米軍基地の集中を人種差別とし、琉球人の人権問題を改善するための協議を行うよう再三、日本政府に勧告してきた。しかし日本政府は、固有の領土ではない尖閣諸島の『防衛』を理由にして先住民族の土地で軍事活動を行ってきた。琉球や尖閣は日本固有の領土でなく、そこで軍事基地を建設し、米軍基地を押し付けることはできない。……琉球人は自らの自己決定権を行使して、すべての軍事基地を琉球の島々から撤廃することができる」。
 こうした見解は、沖縄の軍事基地に反対し、自己決定権を求める運動の中でも少数意見であることは確かだろう。しかし、いまあらためて取り上げるに値するテーマであることは間違いない。この問題に関しては、井上清『尖閣列島 釣魚諸島の史的解明』や久保井規夫氏の一連の著作の紹介を通じて本紙でも取り上げており、「尖閣」をめぐる情勢の緊迫についても、あらためて注意を喚起する必要がある。 (純)

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