福岡空港 米軍との軍事共用
寄稿 沖縄、福岡県警に島嶼防衛の大型ヘリコプターを配備
奈多・雁の巣(福岡市東区)にヘリポートはいらない!
(Y・I)
1、 雁の巣ヘリポートとは
博多湾東の海の中道は後漢から倭国に贈られた金印が発見され、また元寇の役で激戦場となった志賀島に繋がっている。その海の中道の戦前・戦後軍事基地だった博多につながる部分の雁ノ巣、奈多地区は今ではレクリエーションセンター、更生施設、住宅区域に開発されている。そこに突如「福岡空港ヘリコプター施設」が作られたのだ。
福岡空港は2020年3月より、格安航空機の新規参入などによる混雑回避などを理由に、福岡市東区奈多での「雁の巣ヘリポート」の運用を開始した。これに伴い自衛隊機を除く23機のヘリコプターが、同ヘリポートに移駐し、静かだった雁ノ巣・奈多住宅地周辺に騒音をまきちらしている。ヘリポートはまた、オスプレイが飛来する危険性も懸念されている。
福岡空港は唯一米軍との共同使用空港であるがゆえに軍事空港でもあり、民間のヘリコプター23機が奈多・雁の巣に移転することで、福岡空港を米軍機や自衛隊機が福岡空港をより自由に使えるようになっている。ヘリポートは軍事共用空港である福岡空港の一部移転であり、であるがゆえに米軍のオスプレイなどが飛来してくる可能性が大きい。
地元では、「奈多・雁の巣地区の静かな生活環境を守る会」が結成され反対運動が展開されたが、空港側は2018年4月に公聴会を1回開いただけで、工事を強行した。地域住民の反対の声を押し切って、20年3月運用を開始した。
事前の環境影響調査は小型ヘリコプターが使用するヘリポートとしてしか実施されていないにもかかわらず、警察庁は沖縄県警とともに福岡県警に尖閣列島など離島警備のための大型ヘリコプターを雁の巣ヘリポートに配備することを明らかにしている。
大統領がバイデンに変わっても、アメリカの中国への対決政策は変わらず、九州北部でも佐賀空港へのオスプレイ配備、福岡築城基地の米軍機のための滑走路延伸、佐世保基地へ新設の水陸機動団(自衛隊版海兵隊)がおかれるなど、軍事基地の強化が進んでいる。雁の巣へリポートの建設と運用開始もその一環である。
2、福岡空港と雁の巣の歴史
福岡空港のルーツは、戦前の旧日本陸軍が1945年に完成させた「席田(むしろだ)飛行場」だ。敗戦後、米軍が接収し、「むしろだ」というのは英語では発音しにくいので米軍官舎などが作られた隣接地区の板付の地名を取って米軍が「板付空港」と名付けたと言われておりその後拡張が繰り返された。朝鮮戦争時には朝鮮半島最直近の軍事基地になり、多くの米軍機が「板付空港」から出撃し日本中に「いたづけ」の名前は有名になった。
朝鮮戦争中のみならず市内でも墜落事故をたびたび起こし、1968年には米軍機ファントムが建設中の九州大学の大型計算機センターに墜落し、九大総長が先頭に立って街頭デモを繰り返すなどしたことは当時の学生運動の高揚の中での一エピソードになった。
1972年にようやく日本に返還され、福岡空港となった。しかし、その後も日米地位協定に基づく日米共同の「米軍一時使用区域」や「米軍専用区域」が残されることになった。
米軍の専用区域(日本の立ち入りは許されない)は2・3ヘクタールあり、そこには駐機場や倉庫がある。日米の共同使用区域は48・6ヘクタールで空港総面積の約14%を占める。
事実米軍用機の着陸回数は日本一で「米国国防省幹部は取材に職員が3人働いており、外交官や在日米軍関係者が移動する際のターミナルとして利用していると施設の概略を明らかにした」(西日本新聞18年5月14日付)。
「赤旗」の取材によると防衛省の九州防衛局は「九州地区における在日米軍の輸送拠点として物資・人員の輸送のために使用している」と説明したという。自衛隊は航空自衛隊春日基地板付地区を置いており、博多区東那珂にある米軍と自衛隊の「軍用入り口」には自衛隊員の歩哨が立っている。いったん朝鮮有事、台湾有事になれば再び「板付空港」にもどりかねないのである。
一方、雁の巣には、1936年に大陸への定期便のために空港が整備され、太平洋戦争中は海軍航空隊が置かれるなど実質的に軍用空港となった。敗戦後、アメリカに接収され朝鮮戦争では主に輸送部隊の飛行場として使われた。
朝鮮戦争後は自衛隊や福岡県警などがヘリコプターの滑走路や格納庫として共同使用していたが、1977年に全面返還された。跡地には、レクリエーションセンターや更生施設、福岡航空交通管制部等が整備された。
3、雁の巣ヘリポート閉鎖に向けて
先述したように、雁の巣ヘリポートは緊張が高まる東シナ海をも射程に入れた回転翼飛行機基地として整備・運用されようとしている。
一方雁ノ巣、奈多地区は密集した住宅地区であり隣接するレクリエーションセンターでは週末には、多くの市民が野球などの様々なスポーツやレクリエーションを楽しんでいる。北側には少女更生施設の筑紫少女苑がある。そのようなところに、危険なヘリポートの運用をさせてはならない。
現地では「奈多・雁ノ巣地区の静かな生活環境を守る会」がつくられ、住民へのチラシ入れによるアピールや市議会への請願行動など行われた。住民は飛行経路がしばしばずれていることを指摘し、騒音のみならず佐賀の目達原基地で起こったようにヘリコプターにありがちな墜落を恐れている。
またヘリポート反対の市民によって作られた「奈多・雁の巣ヘリポートの撤回を求める人々のネットワーク」を中心にして2カ月に1回の監視行動が取り組まれている。レクリエーションセンターからヘリポート入り口まで横断幕をもって行進し、抗議文を読み上げ、また福岡県警察航空隊前では、「離島警備の大型ヘリコプターの配備をするな!」「自治体警察を国策警備に動員するな!」と抗議している。
戦前から脈々と続く福岡空港と雁の巣ヘリポートの軍用空港としての歴史を断ち切るための闘いの拡大が求められている。
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