名古屋入管死亡事件の真相解明せよ

5.16 入管法改悪は廃案だ
人権侵害をさらに促進

 【大阪】入管法改悪反対で2回目のアクションが5月16日扇町公園で開かれ、250人の市民が参加した。このアクションは、入管事件を闘う大阪弁護士有志(共同代表:中井雅人・弘川欣絵・上林絵里子弁護士)が呼びかけた。
 開会のあいさつをした弘川さんは、「今日は、名古屋入管で亡くなったスリランカ女性ウイシュマさんの葬儀が名古屋で行われる日だ。[一分間の黙祷]、6月14日なんとか法案の強行採決を免れることが出来たのは、皆さんが声を上げてくれたこと、メディアが報道してくれたこと、外国人の支援を20年以上にわたり取り組んできたNPO、昨年の6月入管法の改悪が明らかになってからロビーイング活動をしてきた議員の方々のおかげだ。この国に住み着いた人たちを排除するのが入管法だ。既得権益者と持たざるものの闘い。それはあらゆる人権問題を闘っていく上でとても重要なことだ。諦めずに廃案に向かって頑張っていこう」と訴えた。

ウィシュマさ
ん葬儀の日に


 アピールの最初は、辰巳コウタロウさん(共産党)、「今回の入管法改正案は、入管行政を改善するものではなく、人権侵害を一層深刻にするものであり、廃案しかない。ウイシュマさんを診た医師からは点滴や入院の指示がありながら、法務省入管が出してきた中間報告にはその記述がなかった。ここでも公文書の改ざんが行われている。今回の法案の問題で言えば、司法が介在せずに、仮放免する・しないを入管行政だけでやってしまう点についても何ら改善されていない。日本の人権感覚が問われている」。
 松浦あきこさん(カトリック大阪大司教区社会活動センター・シナピス)、「私たちは20年間にわたり難民の人たち・長期収容問題に関わってきた。長期収容は止めてと国に言ってきたが、そのことは難民をそこから解放すること、誰かが身元保証人になり、保証金を払い、寝所を確保し、食事を用意し、服を着せて、学校に行かせ、生活そのものを丸抱えしないといけない。ウイシュマさんとの面会のため名古屋に足繁く通った人たちの痛みを思う。今回の法案は、私たち善意の市民が入管の下請けのようになって、仲間である難民を逃げないように監視するような法律にしようとしている。これは支援ではない。必要なのは国際法に則った法律にすることだ」。

審査ぬきの
難民不認定


 田中さん(在日難民との共生ネットワーク・ラピック)、「2002年から関西での難民支援を行ってきた。今の状態は最悪だ。難民の認定では、3人が当人を審査することになっているが、その審査はほとんど行われていない。私たちが支援している難民の場合、昨年は1回も審査がなかった。審査なしで不認定にしている。不認定の通知が来て、私たちの相談に来る人が増えている。次は再申請、それは2回目の申請になる。今回の法案では、3回目の申請をすると、次は帰れということになる。帰らないときは入管に収容し、罰則をつけて刑務所に収監。法案はどの部分一つとして認められない」。
 熱田なおみさん(外国人労働者・難民とともに歩む会・トライ)、「学生として活動している。ウイシュマさんの死を無駄にしてはいけない。関心が高まるにつれ、中間報告の問題点が次々と明らかになっている。私たちがどのような社会をめざすのかが問われている。死の真相を徹底的に解明し、2度とこのような事件が起きないようにしたい。法案の修正には応じない。廃案一本で闘おう」。
 尾辻かな子さん(立憲民主党衆議院議員)、「非常事態宣言が9都道府県に広げられるとき、集まって集会しなければいけないような法案を出してくる。一体政府は何を考えているのか。ウイシュマさんのことで、診察した医師の指示があったのに入院させなかったのは、入管の業務上過失致死だ。健康上問題がある場合は仮放免するようになっているが、この原則すら守れないようでは、廃案しかない。昨日、与野党の筆頭理事会で修正案プラスビデオ開示を求めてきたが、ビデオは開示しないとの回答があった。これでは真相究明が出来ないので、法務委員長の解任決議案を出した。人権を無視した国はおかしいとの声を届けてほしい」。
 中尾けい子さん(日本ビルマ救援センター)、「今年2月1日の国軍クーデターから今日で106日になる。国軍の発砲等で犠牲になった人790人、逮捕者が5073人、刑務所に拘留されている人が3989人、逮捕状が出ている人が1659人。3月半ばからSNSの投稿がなくなっている。個人を特定されると逮捕されるからだ。日本にいて支援しているミャンマー人にも逮捕の危機が迫ってきた。国費留学生のミャンマー人学生には、4月末に帰国命令が出た。私たちはこれらの人を守らなければいけない。2001年から20人ほどのミャンマー人難民と関わってきた。彼らから、難民申請に日本を選んだのは間違いだったという声をたくさん聴いてきた。日本は彼らを絶望させる国のままでいいのだろうか」。
 中野リカさん(セイブミーグラン大阪)、「仮放免中の難民支援、収容中の人への面会、入管前での抗議行動、SNSでの発信をやっている。どんな理由があろうと人権侵害は許せない。マイクで抗議をすると、中から、ありがとうの声が聞こえる。収容者をとても近くに感じた体験だった。閉鎖的な場所では人権侵害が起こりやすい。日本の入管は異常だ。私たちはちゃんと見ている」。
 高さん(在日4・3済州島事件【1948年】遺族会)「姉は16歳で密入国して日本にやってきた。叔母は4・3事件で命からがら日本にやってきた。子供の頃は、密入国でやってきたお兄さんやお姉さんが身近に暮らしていた。彼らは、捕まるときは外国人登録証不保持で捕まり、行政罰で退去処分された。お父ちゃんだけ大村収容所に入れ、その間母ちゃんが扶養手当も何もなしで4人の子供を養った。日本の入管行政は、朝鮮を植民地にしたことの反省がないから成り立っている。入管体制が出来たときの外国人のほとんどは在日朝鮮人だった。4・3事件では、5000~1万人の人が密入国で日本に逃げてきた。戦後初めての政治難民だ。彼らを容赦なく大村収容所に送ったのが日本政府だ。入管法は改正ではなく廃止しかない」。
 李信恵さん(フリーライター)、「日本の入管では人権侵害が多く起きているというので、入管への抗議に参加した。入管の中から、助けてくださいと言う声も聴いた。その後何度も入管の前に行った。また来てくれてありがとう、という声を聞いて胸が苦しくなった。夢を持って日本に来たはずなのに、こんな社会でごめんなさいと叫んでしまった。在日2・5世の私も難民の子供なのに自由に活動できるが、収容されている人たちにはその自由がない。この区別はおかしなことだ」。
 「収容されている人も、我々と同じ心を持った人間だ。私は、大村収容所に収容されていた同胞を思い出した。10年前にも入管制度の改悪があり、そのときベトナム人の難民の女性から、この国の土台が揺らいでいることに、この国のマジョリティーは気付いていないと言われた。これは難民だけの問題ではないと言われたことを思い出す。日本の人権が問われているのだと思う。外国人、難民の声を聴くことが解決の第一歩だ。私たち外国人の声を聴いてください。私たちは、この社会でもう一緒に生きています。すべての人が平等に生きていける社会をつくろう」。

外国人を「犯罪
者」扱いするな


 大椿ゆう子さん(社民党)、「今日は外国人を家族に持つ一人として発言する。私は、2017年にバルセロナ出身のスペイン人と結婚した。それで、入管というところが身近になった。在留資格が取れたときは本当にうれしかった。資格を取るために書類を書く、こんなことまで国は知りたいのかと思うようなことを数々聴かれた。日本にやってくる外国人が犯罪者予備軍として扱われていることがわかる」。
 「あなたは犯罪者予備軍の身元引受人としてしっかりやれるのか、納税しているか、貯金はいくらあるか、家族はどこに住んでいるか、連絡先はどこか、いろんなことを聞かれた。彼とバルセロナに帰ったとき、入国は家族だと言えばそれだけで一緒に通れたが、日本に再入国するときは日本人と外国人は別々だった。連れ合いは、スペインはファシストの国だから帰りたくないという。バルセロナでは今でも独立運動をやっている人が不当に逮捕されたりする。帰れば命が危ないという人たちのことがほんの少しだけわかるような気がした。この度の法案を考えるような政権は、政権交代しなければいけないと思った」。
 大石あき子さん(れいわ新選組)、「ウイシュマさんの死はたまたまではなく、政府が人権を踏みにじったことの結果として起きた。だから真相糾明しなければいけない。外国籍の人の人権だけが踏みにじられてきたのではない。このコロナ禍で全体が踏みにじられている。この腐った政治、みんなで変えて行こう」。
 あと2人は主催者の弁護士。定岡りつ子さん、「ここに来たのには二つの理由がある。一つは、ウイシュマさんのような死に方をすることが許されていいはずがないということ。もう一つは、日本は国際人権法という条約と難民条約を批准している。しかしこれが守られていない。裁判をしても、条約には拘束力がない、国内法が整っていないなどと言い訳をする行政府。この行政府を許し続けている裁判所。情けなくて恥ずかしくて仕方がない。この二つの理由でここに来た。是非廃案に追い込んでいこう」。
 上林絵里子さん「ひとこと言いたい人がいるので聞いてほしい。[外国人の男性と子どもが登場]外国人のためにみんな素晴らしいことをやろうとしているが、外国人とコミュニケーションを取って一緒にやることを考えてほしい。その方がもっと効果がある」。
 集会後は、西梅田公園まで約2キロの道のりを一緒にデモ行進した。(T・T)

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