村井知事 みやぎ方式水道民営化強行の暴挙

寄稿

精力的な反対運動引き継ぐ
県民の意思は「水道は公営で」
小川昌義(「命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ」)

 宮城県は、宮城県6月定例会に「みやぎ型管理運営方式」の導入に係る「公共施設等運営権の設定」議案及び関係する条例改正案(水道の民営化議案)を提案し、7月2日 宮城県議会・建設企業委員会は委員の賛否同数で議長が委員長決裁で通し、7月5日の本会議で、県内の皆さんの反対を押し切って成立させました。
 この問題が出てからは、命の水を守る市民ネットワーク・みやぎを結成し、全国の仲間と共に反対運動を展開してきました。
 県議会で条例が承認されたからといって私たちは、これで諦めるわけにはいきません。コロナ禍の非常に厳しい中で、県民の皆さんが反対の意思表示とした署名1万9449筆の声を受けて、更に工夫を懲らして、最前線で頑張って頂いた県議会議員と市民が更に趣向を懲らした闘いを展開していき、必ず失敗するであろう民営化の傷口が大きくならないうちに公営化を勝ち取ることを決意しています。

新自由主義のなかで、水道民営化が進められた


 遡ること、2013年4月19日、米国の民間シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」での会見で麻生太郎(副総理・財務大臣)は、以下のように発言しています。「水道とかいうものは、世界中ほとんどプライベートの会社が運営しておられますが、日本では自治省以外では扱うことはできません。水道料金を99・99%回収するシステムを持っている国は日本の水道会社以外にはありませんけれども、この水道はすべて、国営もしくは市営、町営でできていて、こういったものをすべて民営化します! いわゆる公設民営などもアイデアとして上がってきつつあります」と。
 翌年、2014年5月19日 経済財政諮問会議・産業競争力会議・フォローアップ分科会で竹中平蔵は「従来官が運営を独占していた空港、上下水道及び有料道路分野で、国 及び地方公共団体等が民間に運営を委ねることができるようにするコンセッション方式は、建設業等インフラ関連企業や投資家にとって大きな新規のビジネスチャンスとなる成長戦略の柱の一つであり、インフラ輸出につなげることで、日本の有するインフラの運営ノウハウを活かし、海外から収益につなげることが期待される」と発言。
 そして、問題の2016年12月19日第3回未来投資会議です。開催時間は議事録によると17:00~17:45だけで、竹中平蔵発言後、村井知事は以下のように発言しています。
 「実は、宮城県は上水、下水だけでなくて、工業用水も一緒にして、上工下一体での民営化というものを考えてございます。
 その際、やはり懸念として出ておりますのは、公共性が極めて高いものですので、公共性が担保できるのか。また、会社が潰れたときはどうするんだ、また、民間ですから、料金が上がっていったときにどうするんだといった懸念が出ております。実際、いろんな商社等も入っていただいて勉強会をしておりますけれども、すべてのリスクを民間が背負うのは難しい。すぐに手が挙がってこないのも事実でございます。
 したがって、管路の新しい敷設といったものは我々がやらなければならないと考えてございます。そうなりますと当然、料金の中から一部、そうした投資分を解消しなければならないわけでございますが、現在の水道法では事業の認可を、県なら県、民間なら民間と、どちらかにしか与えられないようになってございますので、市町村が回収した料金を県と事業者に分けて支払うことができないような仕組みになってございます。
 したがいまして、水道法の改正をぜひしていただき、事業認可を県と自治体と事業者とを分けて事業認可を与えるようにしていただきますと、それぞれ別々に料金の回収等をすることができますので、ぜひともそのあたりを前向きに御検討いただきますと、恐らく、この上工下も全国の先進的な事例として成功例をつくることができると思っております」(議事録より)。
 何という発言であろうか。県民の命の水を守ると言うより、企業のために「県民の命を売り渡す」というに等しいことを発言をしています。
 そして、更に恐ろしいことに以下のように指示しました。
 「知事から最初の指示を受けたこと」
1 とにかく民間事業者のやりやすいようにすること。
2 危機管理等に対応できるよう県は関わりを保つようにすること。
3 事業スキームの構築はスピード感をもって一気におこなうこと。
(宮城県ホームページより)
 まさに、何処を見て政治を行っているのかと言いたい。安倍・菅政権とよく似たことを行ってきています。

最初に県民に説明したものと116箇所も変更・・・県当局の無能さが

 昨年3月13日に応募要項を含め実施契約書を116条にまとめ、民間に募集を掛けました。その結果、5月1日3グループの応募があり、その中から決定されたのが、水処理大手メタウォーター(東京)など10社の企業グルーブです。今回提示された内容は、実に116カ所も改訂されていました。このことは、「委託条件の変更」となり、条件が変更となったので、公募も最初からやり直さないと公平性に反することになります。
 そして、宮城県は20年後のビジョンを全く示していないことも問題です。経費削減のみを重んじるための民営化は、企業理念で運営されるためにすぐに水道料金値上げに跳ね返ってくることは火を見るより明らかですが、そのことについては説明をしていません。
 当初の実施計画書も116箇所(県は競争的対話によって発生したと説明)の大幅な変更を加えたにも係わらず、「水道民営化の県民説明会」を3都市でしかも6回だけ開催しての提案となりました。すべての会場で反対と進め方が迅速すぎるとの意見が多数を占めたにもかかわらずです。強引に6月県議会に提案をしてきました。
 これに対し、命の水を守る市民ネットワーク・みやぎを中心に、県内はもとより全国の仲間とともに反対運動を展開しました。県議会に対しては、大幅な実施計画の変更をしたので再度のパブリックコメントの実施と各市町村での説明会を行うことを求めた署名活動を展開してきました。
 コロナ禍の中で、家庭訪問など厳しい状況の中でしたが1万9449筆を集めることができました。後半には、街頭署名も実施しました。この街頭署名、してくれる人がいないのではないかと思っていました。ところが、チラシを受け取り、署名をしてくれる人が多数いました。特に、20代・30代の人たちが積極的に署名してくれました。これだけ、県民は上下・工業用水道民営化に反対していることがわかります。

なぜ村井県知事が急ぐのか!
 
 2016年9月に新設された政府機関の「未来投資会議」委員に湯崎広島県知事と村井宮城県知事が政府関係、企業関係者含め20人の委員の中に入っており、もちろん竹中平蔵も入っています。
 何故、広島県は提案しないのでしょうか、村井だけが先走ってしまっています。2016年12月19日第3回未来投資会議で以下の発言をしています。「…したがいまして、水道法の改正をぜひしていただき、事業認可を県と自治体と事業者と分けて事業認可を与えるようにして頂きますと、おそらく、この上工下も全国の先進的な事例として成功例をつくることができると思っております」と発言し、そして、知事の最初の指示が「とにかく民間業者のやりやすいようにすること」であります。

実質の支配者はヴェオリア?!

 県と契約を結び、県営の上下水道の経営権を手に入れようとしている「株式会社みずむすびマネジメントみやぎ」は、メタウォーター社が議決権株式の51%を保有し、同社の子会社です。
 ところが、実際の運営とメンテナンスを担う「株式会社みずむすびサービスみやぎ」の方は、ヴェオリア・ジェネッツが筆頭株主(35%)だと判明、県との契約に縛られないで、県の直接指導も及ばない可能性があります。

純利益92億円は配当に! 168億円の内部留保は?

 「株式会社みずむすびマネジメントみやぎ」は、20年間で92億円もの純利益を上げることを想定しています。県企業局は「株主への配当に回されるのではないか」とみています。
 それならば、民営化をやめて、県営を続け、水道料の引き下げ、施設・管路の更新に充てるべきではないでしょうか。
 県が民営化しようとしている9事業には、内部留保が168億2159万もあり(内訳は、大崎広域水道72億3403万円、仙南仙塩広域水道109億757万円、3工業用水道事業に33億4417万円、4流域下水道事業に18億4644万円)。これらはすべて県民の共有財産です。メタウォーターやヴェオリアの食い物にされるのではないかという疑問に、県当局は答えていませんし答えるべきです。
 ところが、どのように取り扱われるのか、県はまったく説明していません。このように透明性がまったくない「みやぎ型水道民営化」には絶対に反対します。

破綻確実、速やかな公営化へ

 しかし、県議会は村井県政を支えることのみ考え、今回の問題の中身を理解もしないで賛成に回る議員ばかりでした。結果として

7月2日 宮城県議会・建設企業委員会
 賛否は同数となり委員長裁決で採択

7月5日の本会議    
 採決結果は、県議会多数を占める自公によって結果は以下の通りで可決され、私たち県民が請願したことに対しては不採決となってしまいました。
 最初に記したとおり、これからも「命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ」と共に、民営化に反対し、仮に民営化された場合は公営化のための闘いを進めていきます。
 ヨーロッパ各国では、民営化に失敗し公営化にしているところが多くあります。粘り強く闘い続けます。

      件   名                      賛成者     反対者          議決

 公営企業の設置等に関する条例の一部を改正する条   37   17       可決
 公共施設等運営権の設定について           33   18       可決
 私たちの請願                     19   35       不採決

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