9月5日の茨城県知事選と東海村長選

東海第二原発を廃炉に

大井川には

投票するな!
 8月19日、茨城県知事選が告示され、再選を目指す現職の大井川和彦知事(自民、公明、国民民主推薦)と、田中重博茨城大学名誉教授(共産推薦)が立候補した。田中候補は13年知事選いらいの2度め。東海村では31日に村長選が告示され、9月5日に投開票。村民には8年ぶりの県知事選とのダブル首長選となる。
 東海村長選には3選を目指す現職の山田修村長が6月に立候補表明。8月6日、「いのち輝く東海の会」が記者会見をひらき、乾康代(いぬいやすよ)元茨城大教授の擁立を発表した。会見には同会代表の塚原千枝子さん、村議の阿部功志さん(無所属)、大名美恵子さん(共産)が同席し、「日本共産党が自主支援」することが明らかにされた。
 茨城の県知事選挙は、汚職容疑で逮捕された竹内藤男の知事辞任による93年の出直し知事選が8月下旬から9月に行われている。4人の新人が競った93年で勝利したのが東海村出身で自治官僚の橋本昌。在任時代の24年間に、東海再処理工場のアスファルト固化施設爆発・火災事故、JCO臨界事故、東日本大震災が発生、福島事故の影響ばかりではなく、東海第二原発も冷却機能喪失寸前の被害があった。橋本には、原発推進に慎重になる機会はいくらでもあったが、間に合わなかった。93年の東海村長選は現職の無投票当選、97年は現職引退で後継指名を受けた村上達也さんと共産党推薦候補の一騎打ちに。いらい東海村では無投票を除き、ダブル首長選となっている。
 茨城政治のポイントは、自民党では国会議員より県議の力が強く、日立製作所では資本より労組のほうが政治影響力が強いことだ。この県議の強さは知事にも向かう。
 自民県連は09年選挙で独自候補を擁立したが、橋本にダブルスコアで敗北、13年は擁立を見送った。自民党は満を持して17年選挙に臨み、元経産官僚で土浦市出身の大井川和彦を擁立、小泉純一郎を応援演説に呼ぶなど、政策ではなく知名度アップに集中した。結果は、自公推薦で再稼働の是非を明言しない大井川が小数点以下切り捨てで得票率47%、告示日に再稼働反対に踏み切った橋本が同40%、共産推薦で再稼働反対派の共同候補といえる鶴田真子美が11%だった。県内の報道機関のアンケート結果は、再稼働反対が過半、知事選でも県民の意思は再稼働反対と示されたといえる。大井川は再稼働の可否は県民の意思を問うと公言してきた。これを確かなものとするため、いばらき県民投票の会が条例制定を求める直接請求を行ったが、県議会で否決された。
 県民投票の会は、今回の県知事選にあたって両候補に公開質問を発したが、大井川候補からの回答はこれまで行われていない。毎日新聞は20日から21日にかけて、現在の自公政権の構成では原発の新増設やリプレースは進められないことなどを報じた。「総選挙で原発が争点になることはあり得ないし、してはいけない」という中堅議員の発言も紹介している。大井川は、公開質問に回答すること自体が自民党県連の不満の元となることを知っている。
 大井川には投票するという選択はない。
 連合茨城は、17年選橋本支援での2つの失敗(脱原発への転換と敗北)から、今回は早々と大井川支援に転換した。勝利にこだわる中村喜四郎が加わった立民茨城の態度は霧の中だ。

乾康代さんを
応援しよう!
 住環境計画や都市計画を専門とする乾さんには『原発都市 ―歪められた都市開発の未来』、『原発「廃炉」地域ハンドブック』(共著)などの著作がある。「なぜ東海村民ではないのに、村長選に出ることを決めたのか」との質問に、水戸市在住の乾さんは「出馬要請を受けた〝いのち輝く東海村の会〟の〝いのち輝く〟という崇高な理念を超える、断りの理由がどうしても見つからなかったからです。それで清水の舞台から飛び降りました」と自身のツイッターに記している。
 自身のブログ「須和間の夕日」に立候補の決意を貼り付けたところ、全国代表幹事を務める「新建築家技術者集団」の「ジェンダーチーム有志一同」から「小さな村での壮大な実験」と題する応援メッセージが届くなど、全国の仲間などから応援の声が届いているという。事務所開きには村上達也元村長が訪れ、応援あいさつを行った。石岡市在住で建築家で日本国際ボランティアセンター元代表の岩崎駿介さんが事務所を訪れ、乾さんを激励するビデオメッセージを製作した。21日には励ます会が開催され、I女性会議などで長く活動してきた東海第二原発差止裁判の原告の川野弘子さん、元原研労組執行委員長 の岩井孝さんらがあいさつした。

批判的支持

をしない理由
 4年前の知事選では「いのち輝くいばらきの会」が鶴田さんの選挙を支える政治団体となり、県内各地にわれ先にと多くの地域で「いのち輝く会」が結成された。地域によっては、輝く会が投票運動の骨組みをつくった。
 18年の県議選は定数1減と選挙区割りの変更が実施され、共産党が3から1減で2議席となった。立民は全国ではじめて県議を当選させた。一部の無所属議員とも連携して県民投票条例を審議した県議会では今後につなげる実績を残した。実績をつくりあげた求心力の一部は弱まっていく。
 20年のつくば市議選に鶴田さんは立候補したが落選、共産党は3から1減の2議席に、つくば・市民ネットワークは3から1増の4議席となった。知事選の中心になったともいえる3陣営の連携が壊れたように感じた。「いのち輝く会」の政治運動が途切れたかにも感じた。「いばらきの会」の事務所はつくば市から水戸市内の茨城平和会館に移された。再チャレンジした田中候補はここを選挙事務所としている。
 「田中重博」でネット検索をしたら自動的に「パワハラ」が表示されたので開いてみた。人文学部教授2人が学内で嫌がらせを受けたとして、当時の田中学部長に計880万円の損害賠償を求めた訴訟で、被告側が「言動の一部に不適切、不穏当なものがあった」ことを認めて11年に和解したという内容だ。これに気づかなければ、「田中支持」と主張しただろう。
 強まったのは東海村村長選に向かう東海村村内から発する連帯のエネルギーだ。知事選の結果に制約されずに県政への影響力を増すだろう。東海村を含む5市1村への影響力も同じだ。
 混乱の横浜市長選が終わった。ひとびとの関心は総選挙へと向かう。自衛隊出身で5選を目指している村井宮城県知事(11月20日任期満了)は、選管に対して衆院選と知事選を「同日にするよう最大限努力してほしい」と異例の注文をしたという。前回知事選は衆院選と同時で、過去最高得票をしたことに酔っているようだ。県政の争点を国政論争で隠す意図もみえる。
 原子力災害ではじめて住民避難が行われた街で継続されてきた住民のたたかいをみまもりつづけてほしい。
(8月22日 斉藤浩二)

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