横浜市長選 野党支援候補が大差で勝利(9月13日号)

IR誘致を市民は拒否
市民自治と民主主義の道進もう

予想以上の自民惨敗

 8月22日に投開票された横浜市長選で、立憲民主党などが擁立した山中竹春氏が当選し、新市長に選ばれた。378万市民を抱える政令指定都市横浜は最大規模の基礎自治体であり、国政課題を投影している面もあるせいか8人の候補が出馬した。投票率は単独選挙としてはそれなりの高投票率である49パーセントを記録している。山中(50万票)は2位の小此木八郎に18万票の大差をつけて当選を果たしたのだった。
 小此木は、IR推進の中心人物でもある菅首相と親しい間柄でありながら、オリンピック開催間近の時期に国家公安委員長という閣僚ポストなどをなげうち、山下埠頭へのIR(カジノ付き統合型リゾート施設)誘致反対を掲げて出馬表明した。市内タウン誌での菅首相の応援表明を受けて、選挙戦序盤は小此木優勢が伝えられたりもした。しかし自民党幹部の全面的な応援を受けて選挙戦を展開すればするほど、当選の見込みが薄れていくという逆風の中、惨敗を喫したのであった。

政府にとって大打撃

 逆風の原因は一つに小此木が言うIR誘致反対ということの真偽が最後まで疑われたことだ。小此木自身「IR自体賛成」、「コロナ禍の時期で環境が整わず市民の信頼が得られない」と発言していたから、コロナ禍が過ぎれば誘致に動くとみられても仕方がない。2つには菅たちがIR誘致の尖兵として利用してきた林文子市長切り捨ての姿勢を打ち出しながらその林出馬を阻止できず自民党内での分裂選挙をせざるを得なかったことである。3つには、選挙と同時に新型コロナの陽性患者数が東京を中心に爆発的に拡大する中で、神奈川県も1日の新規感染者数2000人を超える日が続いたことだ。感染者数が増えれば、コロナ対策に無力な菅首相への反発は高まり、片やコロナ対策をはじめとして科学的知見に基づいた政策で市民と向き合い、横浜を変えるというスローガンを打ち出した山中に、無党派層の投票が集まったのは当然の成り行きである。山中は5月、横浜市大医学部の研究チームの代表として「ファイザー製などのワクチン接種をした人の9割が複数の変異型ウイルスの侵入を防ぐ『中和抗体』を持つ」と発表し、メディアでは時の人として扱われている。
 千葉県知事選、東京都議選と続く自民党政権の劣勢を、菅の地元・横浜市でかえって強めてしまったことで、秋に迫る国政選挙において自民党の政権明け渡しを想定させる事態がやってきたことをだれも否定できなくなった。何よりオリンピック・パラリンピック開催ありきで非常事態宣言の開始・解除時期を決定し続け、まさに開催が感染爆発を招き、混乱を収拾できなくなったことの責任を問われたのである。数々の疑惑を隠蔽し、掲げた政策を説明なしにひるがえしてきた、安倍・菅自民党政権に対して、人々は強い不信任の意思表示をつきつけたのである。

引き続き監視が必要

 18の区ごとの得票結果を見ても、小此木がトップをとれたのはかつての出馬選挙区の中にある鶴見区だけであり、菅の事務所がある南区、隣の港南区などでも山中が差をつけたトップ得票は変わらない。小此木は「もう選挙に立候補しない」と表明するしかなくなってしまった。IR誘致など言っている場合ではない、コロナ対策をまじめにしてほしい、という市民の切実な要求を反映した市長選の結果を、どう横浜市政、国政の刷新につなげていくかが重要だ。
 山中市長は早速、IR推進室解散などIR業者選定機能の停止作業を進めていくだろう。コロナ禍という悪条件のもとで、2020年9月から12月にかけて、IR反対のために、林市長リコールのための署名運動(9万111筆)、IRの是非を問う住民投票条例制定のための署名(19万3193筆)に多数の民意が集まったことは市長選の結果とも深くつながっている。そして条例制定を求める民意が2020年1月市議会で却下されたことと、市長選の惨敗との関係を振り返り、自民党市議団に反省を迫らなければならない。依然、議会内与党である横浜市会自民党のふるまいを引き続き監視しなければならないのだ。
 今回19万票の得票に終わった林前市長は、IR反対を主張する候補が多数となる選挙でIR推進候補が必要だとする立場を強調し、「国などと進めてきたIR推進を覆す不実があっていいものか。信義を通す」などとたんかを切ったが、林にどんな信義があるというのか。2017年、林は3選目を目指す市長選の半年前にIR誘致「白紙」を掲げながら、2019年8月にはIR誘致を宣言してしまい、横浜市財政への1000億円増収効果などを吹聴してきた。
 2019年12月から各区で実施されはじめた住民説明会には林市長、IR担当の中枢ともいえる平原副市長などが出席し、税収のためにはこれまで以上に市内に大きな資本投下を呼び込もうというもくろみ、カジノ以外の施設(会議、観光など)の意義を強調しつつ、IR内でのカジノ収入の割合は半分から7割になるのではないかと業者のヒアリングをもとにした見通しを並べ立てたのであった。
 この説明会も、コロナ感染を理由に6区ではリモート開催になってしまうが、林は手続き面でそつなく誘致に向けて進行することに専心し、カジノの高収益だけを強調し、市民の意見に向き合おうとしないことは横浜市民にとって強く印象付けられたことだろう。

学校内給食否定に断

 カジノだけではない。唯一、政令指定都市で中学校給食未実施という状態において、林の提唱で始めた「ハマ弁」を含む昼食選択制計画もずさんだった。「冷たく、まずい」ことで有名な「ハマ弁」の喫食率は3パーセントを下回る時期が長く続いた。2021年度から学校給食法で定める弁当を含む選択制に移行し、いくつかの改善が試みられてはいるが、困窮者家庭の増加と児童の栄養状態が問題にされるなか、温かい学校内給食提供の断固拒否を譲らない林の頑迷さは、IR推進を続ける姿勢と通ずるものがある。高級車メーカーBMW取締役などの経歴が示すように、連携する資本に対する信義に厚かったとしても、市民に対する信義は持ち合わせないという言い方が林にはふさわしい。
 松沢成文元神奈川県知事も参院議員をやめて出馬した。しかし所属していた日本維新の会は、2013年に単独会派でIR推進法案を提出したこともあるなど、いわゆるIR整備法成立(2016年12月)の原動力であり、今も最大地盤の大阪における誘致計画は進行中である。そのことを伏せながらIR反対をなぜ主張できるのかという説明は、元県知事として熟知する横浜市政の問題点を羅列すること以上に重要ではないのか。大阪だけでなく、長崎、和歌山などで一部の誘致派首長が活動を継続している現状を考えれば、この市長選の結果を政府にも突き付け、安易なカジノ依存思考がうんだIR法の撤回を実現しなければならない。
 田中康夫元長野県知事は、知名度を生かして、いくつかの区では林をうわまわる得票を記録するなど選挙戦自体を活性化させた。上瀬谷の米軍通信施設跡地を防災・消防レスキュー拠点にする計画、林市長がうたった「待機児童ゼロ」の影に「保留児童」が大勢いるまやかしなど、具体性を示し、動画配信のわかりやすさなどで市民との対話を模索した。硬直化しがちともいえる、様々な組織的政治活動への提起、個人の政治参加の掘り起こしという意味で投票行動への刺激になったと思われる。

逆戻りは許されない!


 山中新市長は7月25日に、住民投票条例制定を目指した運動のメンバーなどが中心となって「カジノ反対市長を誕生させる横浜市民の会」と連携協定を結んで選挙にのぞんだ。こういった草の根運動からの発信は今後も不可欠である。一方で一部週刊誌が報じた職場内パワハラ疑惑の解明などを呼びかける落選運動に直面していて、説明を求められる。何よりカジノをはじめとするギャンブル依存まん延を呼び込まないようにする行政の構築が、市民の生活向上に直結するようでなくては市長選の結果はいかされたことにならない。
 横浜・神奈川の課題は一地域の課題にとどまらない。有効な施策が各区の窓口で機能せず、みなとみらい地区に新築したばかりの横浜市庁舎の中だけで高級官僚が政策をもてあそぶ市政はいらない。横浜でもコロナ患者への差別的対応、ぬくもりのない官僚的手法は神奈川県内他市町と比べても深刻な問題となり続けている。過度に民営化を進め、歴史修正教科書導入を強行した中田宏市政(2001年~2009年)にも、IR推進にのめりこみ、対話のポーズばかりで市民の生活課題に向き合わなかった林文子市政にも、決して逆戻りはさせないという横浜市長選の民意を結実させていこう。
       (海田 昇)
 

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