総選挙 静岡県下の「野党統一」の現状(10月25日発行)
立憲・共産の共同候補実現へ
「自公」に替わる政権アピールを
長生きにおよぶ自公政権を倒す時が来た。改憲・生活と権利を破壊する政治を変革し、総選挙を通じて、労働者・市民の権利をひろげ、戦争への道にストップをかけよう。比例区は共産・社民に、選挙区は野党統一候補と共産党へ(編集部)
野党共闘拒絶する連合
しみん連合静岡東部発足後の最初の選挙は6月20日の県知事選だった。4期目を目指す現職の川勝平太氏と参議院議員を辞しての自民党岩井茂樹氏の戦いとなった。リニア新幹線トンネル工事にストップをかける川勝氏はJR東海や政府、自民党静岡県連にとって目の上のタンコブであり、自民党は候補者擁立が難航する中、岩井氏を押し立てての必勝の陣形で臨んだ選挙であった。迎え撃つ川勝側は連合静岡の仕切る陣形で選挙戦は取り組まれた。
「市民連合」はチャンス到来と受け止め、特に県東部では、のぼり旗を押し立て、リニア反対、浜岡原発反対を掲げて体制を整えたが、立憲を経由した連合のブレーキがかかり、のぼり旗や派手な参加は制限されてしまった。しみん連合静岡東部をアピールする絶好の機会ととらえたものの、正式な協定などなくいわば勝手連方式で選挙応援に参加するしかなかった。
今回の知事選はリニア問題が大きく焦点化し、各地で市民・住民による川勝応援の声があふれ、結果は95万7千対62万5千の大差で川勝氏が勝利した。この県知事選では「しみん連合東部」は5区、6区の候補者選対と連携を取りながらの活動を進めた。
9月に入り岩井参議院議員の辞職に伴う参院補欠選挙の動きが始まった。この補欠選挙は、野党側は前県議で国民、立憲推薦の山崎真之輔氏及び共産党候補鈴木千佳氏。対する自民党候補は御殿場市長を辞して出馬の若林洋平氏、三つ巴選挙となった。多くの市民からは衆院選の前哨戦、なぜ、野党1本化が出来ないのかとの声は大きかった。しかし、実質、山崎候補の選挙を仕切るのは連合静岡であり、市民連合からの呼びかけに応えず、野党1本化の話は最初から成立せず失敗に終わった。
いずれにしろ野党を分断し、共産党排除を執拗に迫る連合幹部の動きは今後の市民連合の活動や選挙戦勝利への大きな障害となる。次期衆院選各地区の立憲民主の候補者は連合静岡幹部から「市民連合の集会で挨拶すると推薦を取り消す」などの文書警告を受けており、その徹底ぶりはあきれるばかりだ。
問題は政権交代選挙と位置づけられた次期衆院選だ。静岡県下で8つある選挙区で正式に野党1本化が成立したのは、現状では3区、7区、8区だけである。
各選挙区の現状
1区は自民上川陽子氏に対して、野党は乱立により当初より1本化は無理筋であった。2区では1本化に向け大池氏(れいわ)が降りたものの福村氏(国民)と山口氏(共産)が競合し、話合いは進んでいない。4区は自民深沢陽一氏に対して田中健氏(国民)と中村憲一氏(維新)が出ているが、維新は対象外とみても野党1本化は国民、共産の話は停滞している。5区、6区は、野党候補者は1人しかおらず、野党統一候補と認定すべきだが、立憲、共産の中央での話が進まず、正式に野党統一候補とはなっていない。
各選挙区での状況は下記である。
1区、上川 陽子(自民・現)、高橋 美穂(国民・元)、遠藤 行洋(立憲・新)、青山 雅幸(維新・現)
1区の共産党島津は、「比例代表候補としての活動に専念するため」として取り下げた。
2区 井林辰憲(自民・現)、福村隆(立憲・新)、山口祐樹(共産・新)
2区の候補者に名を連ねていたれいわ新選組大池幸男氏は「野党がバラバラだと自民に勝てない」として取り下げたが、共産党は山口祐樹氏擁立。県内の小選挙区で唯一の共産党候補者となっている。立憲福村隆氏は、前回選は7区で希望から出馬。昨夏、旧国民から立憲に参加した。連合静岡の推薦も得ている。
共産は当初予定していた鈴木千佳氏が参院補選にくら替えし、山口氏を擁立した。2区は浜岡原発再稼働やリニア中央新幹線南アルプストンネル着工への反対など同党が政策に掲げる問題があり、同党は「どうしても立てたい選挙区」である。
3区 宮沢博行(自民・現)、小山展弘(立憲・元)
立憲小山氏は、前回無所属で出馬、希望の元職鈴木望氏との三つ巴となった。自民宮沢氏が約9万8千票を獲得し、小山氏は約8万2千票。鈴木の約4万票を加えると自民を上回る。
この3区は、野党としては最も有力な選挙区とみられている。連合静岡などの応援もあり、 元掛川市長で元自民党国会議員の戸塚進也氏も協力を惜しまない。
4区 深沢陽一(自民・現)、田中健(国民・新)、中村憲一(維新・新)
田中健氏は1年半前の衆院補選で、無所属、野党四党の推薦で出馬したが、自民深沢氏の約6万7千票に、3万弱の票差で落選。合流した国民民主の公認候補として再挑戦する。
維新の中村氏は元富士宮市議で今回国政に挑戦。
5区 細野豪志(無・現)、吉川赳(自民・現)、小野範和(立憲・新)、千田光(諸派・新)
5区の注目は、無所属・二階派で立候補する細野豪志氏の動向である。地べたを這うように選挙区を廻り、支持を広げている。特に中高年女性の岩盤支持者が多いとされる。希望の党から出馬した前回は13万8千票を獲得、野党支持者からは民主党ホープから自民党にすり寄る裏切り者と見られる。今回、どの程度の票を失うか? 事前の調査では細野トップとの噂もある。
自民公認を得た吉川氏は岸田派に所属、岸田首相誕生で、今度負ければ比例復活はないとされていたが、撤回されるようだ。気を引き締め、細野氏に流れる保守票を食い止めるのに必死だ。
立憲の新人小野氏は、昨年9月以前は国民民主党所属、その後立憲に合流した。野党候補だが反自民、反細野票をどこまで固められるか? 中央での話し合いが停滞し、未だに正式な野党統一候補とはなっていない。
5区では、この他「愛地球党」から千田光氏が立候補する予定。
6区 渡辺周(立憲・現)、勝俣孝明(自民・現)、山下洸棋(維新・新)
これまで6区は渡辺周氏が8勝してきたが、自民勝又氏との差はジリジリと迫っており、次回は逆転の世論調査も出ている。前回は細野(希)13万7523、吉川(自)9万2467、井口(共)2万750となっており、共産系2万の票が入らなければ勝ち目はない。そのために野党統一候補へ押し上げる必要があるが、連合の締め付けが気になるところだ。
維新山下は8月中旬、突然立候補の記者会見、元細野豪志秘書、青果販売業社長の肩書。立候補に当たっては細野事務所から資金がでたとの噂もある。自民でも旧民主系でもない「第3の選択肢」を強調。元立憲で県議選に挑戦した大嶽創太郎氏は無所属での立候補を模索したが取り下げた。
7区 城内実(自民・現)、日吉雄太(立憲・現)
2017年衆院選結果は、城内実12万9463自民、福村隆2万9905希望、日吉雄太 2万6383立憲(比当)
野沢正司1万980共産、圧倒的に城内票が上回り、前回の野党票を合計しても半分にしかならない。日吉は8万台に上らないと比例復活も危ない。
8区 塩谷立(自民・現)、源馬謙太郎(立憲・現)
8区では共産党候補平賀高成氏を降ろし、野党候補を立憲民主党の候補に一本化することで合意した。前回、希望から立候補した源馬氏は共産党候補との三つ巴えで敗れたが、野党候補を一本化すれば逆転の可能性が高まる。野党共闘を後押しする「市民連合」が立民と共産に調整を要請。共産は正式に立候補を取りやめた。
自公政権打倒を明確に
しみん連合静岡東部の選挙区は5区、6区である。静岡5区は細野豪志氏の選挙区で全国的にも注目を集める。細野氏は、かつては民主党の幹事長まで経験し、2015年の安保法制国会では、国会周辺の抗議行動に参加し、大声で反対のハンドマイクを握っていた。ところが、2017年3月、突然、中央公論で「憲法改正私案」を公表し、民進党の見解と異なるとして党内で疑問視される中、8月にはついに民進党離党へと進んだ。
示し合わせたように、8月末には党首前原誠二氏による民進党解体劇、小池百合子氏の希望の党にいち早く合流した。細野氏は、後続のかつての仲間に踏み絵
を踏ませ、一部を「排除」する挙に出た。余りにも酷い振る舞いに、一時は無党派の関心を集めたが、希望の党は一夜にして多くの支持を失った。
2017年の選挙では、再選を果たしたものの、その後は無所属のまま、静岡県議杉山盛男氏の口利きで自民党二階派に参加し、今も自民党入りを目指していると言われる。
また、地元での集会の折、離党のいきさつについて「私は以前から民主党の安全保障政策に違和感があった」と聴衆を前にして説明し「希望の党の一件は、今でも間違えていなかった」と語っている。
細野氏の恥も外聞もないそういう変節は、政権のうまみを知ってからなのか?その時々で自分の主張を変え、言葉巧みに己の立場を正当化している。しかし、彼の支持者の中には、彼がどんな振る舞いをしても揺るぎない支持をする中高年女性の岩盤支持者の厚い層があると言われている。
自民党入りを目指す細野氏に対し、地元の野党支持者の間では「裏切り者、細野」という悪感情がぬぐえない。一方で、自民党岸田総裁の誕生により、同じ選挙区で岸田派吉川赳と激しく争い、自民党入りは不可能ではないかとの噂もある。
8月に入り、急遽、6区から立候補した維新新人山下氏は元細野秘書で、細野氏から選挙資金が流れているとの話も聞く。細野氏の地元の元後援会関係者の話では、数十億円の政党助成金を握る二階幹事長から1億5千万円の選挙資金が流れたとの噂もある。
細野氏は福島原発汚染水の海洋投棄問題でも早くから積極的に発言し「福島原発処理水の海洋放出を決断する時だ」と主張し注目を集めた。
立憲新人小野候補は細野票をどれだけ取り込めるか? 連合加盟の労働組合は表向き立憲支持だが東レ労組など細野を支持している組合も多い。前回選挙結果は、細野(希)13万7523、吉川(自)9万2467、井口(共)2万0750であった。細野票から5万票を取り込めば、共産系2万を上乗せし、比例復活の可能性が出て来る。しかし、6区での渡辺周の選挙区当選が前提である。
一方、6区渡辺周は、連合系の票を確保しつつ、前回は無かった共産系の2万の票を上乗せする必要がある。最も効果的に共産系2万の票を集める方法は、野党統一候補として大宣伝し、無党派層や今まで投票に行かなかった人たちの関心を高め、自公に代わる政権をアピールすることだ。しかし、中央での立憲、共産の話し合いは進まず、未だに野党統一候補の確認がされていない。(森大 司)
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