北海道・寿都町長選挙は一騎打ち
「核のゴミ」受け入れ拒否を
「核のゴミ」問題
逃げる現職
【北海道】20年ぶりの寿都町長選は21日告示、26日投開票。新人、越前谷由樹氏と最終処分場選定の調査に応募した現町長の片岡春雄氏との一騎打ちとなった。
6期目の当選を目指す片岡氏は、新型コロナウイルス感染拡大による不況からの脱却と若い人の働く場の創出、人口減に歯止めをかけることによる、地域経済の再生を強調している。
一方、越前谷氏は文献調査の即時撤回を最大の公約に掲げ、住民の分断を解消し町内融和と、町政を町民の手に取り戻すと訴えた。また調査に伴う交付金は不要だとし、「身の丈にあった財政運営」も主張した。
昨年10月、現町長が自らの「肌感覚」で独断先行した文献調査への応募に対し、調査に反対する「子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会」が町長選の候補者の擁立を模索する中で、総務課長や助役を経て町議会議員を務めてきた越前谷氏が立候補を決断した。
同時に行われる町議会議員補欠選挙でも、町民の会は核のゴミ受け入れに反対を公約に掲げている吉野卓寿氏を応援している。
今回の町⻑選は、昨年行われなかった住⺠投票が形をかえて実施されることであり、調査応募の判断へのはじめての審判がくだされることである。
しかし、現町長は概要調査に進む前に住⺠投票を行うので、今回の町⻑選で核ゴミ問題は争点にならないと言い、政策説明会では「核のゴミが来るとは言ってない」と言い「来ない」とは言わず、争点から逃げている。
政策発表会で、現町長はこれまでの風力発電やふるさと納税の実績を説明したが、寿都の地域資源を活かした政策を「小さなビジネス」と表現したうえで「〜で稼げる」「〜有床診療所で交付金」「町内の医療機関がひとつになって交付金」「病児保育で交付金」などと、交付金頼みの姿勢が目立つ。一方、交流人口を増やすと述べているが、核のゴミで名を売った町に魅力を感じて交流しに来てくれる人たちがいるとは思えない。町⺠が分断で苦しんでいることは眼中にない。
一方、越前谷氏は漁協経営にテコ入れをする政策構想や、高速パーキング、ウォーキング道路の整備、滞在型寿都、インターネット光回線網の普及、文献調査の撤回による近隣町村との関係修復と連携強化を訴えた。
豊浦町議会
核抜き条例可決
胆振管内豊浦町議会は核のゴミなどの町内持ち込みを拒否する条例案を賛成多数で可決し、原子力関連施設から発生する使用済み燃料などすべての放射性廃棄物について「町はいかなる場合も町内への持ち込みを拒否する」と明記し、放射性物質の処分や保管などに関する調査や施設建設も拒否するとした。
同様の条例は檜山管内せたな町や上川管内中川町などの議会も制定していて、両町村への包囲網は確実に狭まっている。
道内地質学者
が撤回求める
岡村聡道教大名誉教授と北海道自然保護協会の在田一則会長、田中実元道教大教授の3人は両町村の地盤は脆弱で地層処分には不適地だとして、調査撤回を求める声明を出した。
旧道立地下資源調査所の地質図から、両町村の地盤はマグマが水で急激に冷やされ固まった「水冷破砕岩」が多く存在していることが分かっていて「亀裂が生じやすく、割れ目から地下水が入って放射性物質の浸出は避けられない」と指摘したうえで「寿都、神恵内は処分場としては最悪の候補地」と強調した。また道内外の研究者ら62人が声明に賛同しているとも話した。
市民が衆院選候
補にアンケート
「泊原発を再稼働させない・核ゴミを持ち込ませない北海道連絡会」は衆院選の立候補予定者に対し、文献調査などに関する公開アンケートを実施し、道内小選挙区と比例代表に立候補を表明していた40人中23人から回答があった。
文献調査への応募を撤回すべきか聞いたところ、立憲民主党、共産党など野党の候補予定者19人が「撤回するべきだ」、公明党はゼロ、「その他」と回答した4人のうち2人が自民党で「自治体の判断を尊重すべきだ」などと判断を曖昧にした。
北海道4区は
保革一騎打ち
衆院選の道4区(札幌市手稲区、西区の一部、後志管内)は野党共闘により与野党一騎打ちとなった。この選挙区は両町村を含み、処分場選定調査続行の是非も争点になる。
当初、共産党も立候補者擁立の予定だったが、政権交代を実現するためと野党共闘が実現し、立憲民主党新人の大築紅葉氏が統一候補となった。
大築氏は「後志で核のゴミを受け入れる必要はない」とはっきり処分場に反対の態度を表明している。
立憲民主党北海道連代表の逢坂衆議院議員、大築氏共に寿都町に出向き、越前谷氏の応援演説をしている。
一方、自民党前職の中村裕之氏も片岡氏の応援で地元に入り、相変わらず公共事業の高規格道路延伸など実績をアピールしたうえで、「仮に町民の反対の意思が明確になれば次の段階に入らないと約束する。しかし賛成の場合も尊重して進んでいく考えだ」と、当然ながら処分場に対する賛否をはっきりさせず、この問題を争点化しない戦術だ。
現町長は応募時に、処分場の論議に「一石を投じたい」と述べたが、両町村に続いて応募する自治体は皆無であるため、両町村を対象に処分場選定が進むだろう。そして自治体財政は交付金に依存することになり処分場設置へと進む。
寿都町は概要調査へと移行する際には住民投票を行うと条例で定め、神恵内村長も住民投票を実施すると述べているが、住民投票で反対が上回っても、途中で調査から離脱する手続きすら定まっていないため、国は自治体財政の弱みにつけ込み、執拗に調査継続を迫ってくるだろう。
小泉自民党政権時代の三位一体改革に伴う地方交付税の削減が自治体財政を圧迫したこと、国策である最終処分場の選定問題を2町村に丸投げしたことによって、調査をめぐって地域を二分する事態に陥らせたのは、他ならぬ自民党政府であることを忘れてはならない。
越前谷氏の
町長選勝利を
2007年、文献調査に応募した高知県東洋町では、当時の町長の「民意を問うため」として出直し選挙が行われた。その結果、応募の撤回を訴えた新人候補が大差で当選し、調査は白紙に戻った。
人口約2800人の町長選での越前谷氏の勝利は、核のゴミの最終処分という国策に大きなダメージを与え、それに続く衆院選道4区での統一候補の勝利が処分場建設を断念させる重要な一歩となる。
町民の会の広報誌「分断にNO!再び仲良い町に」は訴える。『あなたは、すっつの子どもたちに何を残したいですか?/残そう、このままの、すっつを。歩もう、新しい、すっつへ。』と。
(白石実)
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