10.23ATTACジャパン(首都圏)総会・講演会

コロナパンデミックと「公共サービス民営化」
大利英昭さん(都庁職病院支部書記長)

 10月23日午後、ATTACJapan(首都圏)が総会&講演会を開催した。講演は、「コロナパンデミックと公共サービス民営化」と題して、大利英昭さん(都庁職病院支部書記長)が行った。大利さんは都立病院の看護師として、コロナ感染患者を救うために全力を尽くしてきた。そこで何が起きていたのか、問題点と今後の課題について縦横に語った。     (М)

大利さんの講演から

第5波 東京で何がおきていたのか

5波の拡大は
「人災」だ!
 8月12日に新規感染者数のピークがあった。新規感染者の動向はおおよそ2週間前の人流を反映する。2週間前にはオリンピックが行われており人流が増えた。5波の拡大には五輪の強行開催の影響がみられており、5波は人災である。新規感染者のピークは12日なので、本当なら8月中旬に入院患者数のピークが来るはず。実際には8月3日から「原則自宅療養」が強制されたが、実際には7月下旬から入院患者数の伸びは鈍化しており、7月下旬の段階でコロナ病床は飽和状態になっていた可能性がある。また都は6000床のコロナ病床を確保したと言っていたが、実際に稼働していたのは約3500床程度だ。

重症者のグラフ
1週から10日
 
 ICUに入る。8月17日276人で頭うちになっている。28日297人でピークに。500床確保したというが270床程度しか確保していなかった。コロナの重症者は都の基準では人工呼吸器かエクモの治療を受けている人となる。つまり、本当は重篤な状態だけれど、呼吸器が空いていなければ治療が受けられないので、その患者さんは重症者にカウントされない。つまり8月中旬には、本来、呼吸器などの治療を受ける必要があった人が、治療を受けられずに亡くなっている可能性があるということだ。よく言えばトリアージ、つまり命の選択が行われていた。
日本の医療は200床未満の中小民間病院が支えている。200床未満の病院では施設的にも、人員的にもコロナ患者を受け入れるのは難しい。

臨時医療施
設は必要か
 「臨時医療施設は必要か」を考えるより、感染を爆発させないために何をするかを考えるべきだ。
①軽症者を見つける②拡大初期、公立病院を中心に確保③医療機関の役割分担、医療従業者の確保。
 国と都は真逆の方針をとっている。社会的公共インフラの医療を国が支えるという発想がない。
 2000年以降、定期的に新規感染症が発生している。SARS、新型インフルエンザH1N1、МERAS、デング熱、ジカ熱、エボラ出血熱。新規感染症は必ず発生するという前提で、公衆衛生の基盤を強化する必要があったのに、国も自治体もそれを怠ってきた。

都立病院は都
民の命の砦だ
 都立・公社病院を地方独立行政法人化する条例案が9月の都議会で可決された。この問題は9月都議会で拙速に決めることではなかった。そこには3点の問題がある。
 倫理的問題。在宅で44人が死んだことの真摯な反省から始めるべきだ。②民主主義の問題。2回の選挙(知事選と都議選)で、独法化問題は一大争点になるべきだったが論戦は回避された。9月都議会でも知事質問に答えておらず、極めて不誠実だ③行政的問題。独法化を誰がいつ、どこで、決めたのか。行政手続きの問題がある。8月27日に知事と数人の幹部で、2022年7月に独法化と決めた。この際の公文書は作成されていない。8月27日はコロナ禍がピークに達している時。そのような時に知事と幹部が集まって、現状の打開策を話し合うのではなく、独法化の決定を密談していた。これは都民に対しての背信行為だ。

都立病院の独
立法人化とは
 大阪は10年前に独法化している。維新府政は看護師を切り捨てた。コロナ感染症に対して、呼吸器を使う看護師が確保できなく、80人の看護師が不足した。
 都の独法化を審議する委員が「墨東病院の看護師の平均勤務時間が長いのは居心地がいいからだ。ベテランの看護師が多い、暗に人件費を下げろ」と言っていた。独法化は人件費をコストとしか考えない。人を育てるという発想がない。独法化で労働条件が切り下げられ、ベテランが退職し、次を担う世代が育成されなければ、医療安全が担保できなくなる。これが大阪で起こったことだ。
 独法化はうまくいっていないが、都の独法化方針は、国の方針は病床の1万床を削減と一体。国は2020年度分コロナ禍のなか、3400床削減した。だから、都は先行する独法化病院がすべてうまくいっていなくても、独法化を強行してくる。

公共サービス
は基本的人権
 公共サービスは商品ではない権利だ。
 基本的人権を保障するのが公共サービスだ。今の公共サービス基本法の定義では、公共サービスの範囲が非常に狭く、公共サービスは権利という視点が欠けている。公共サービスは権利という視点がなければ、「採算が取れないので持続可能性がない」といった新自由主義の価値観に対抗できない。だから、国鉄、郵政、国立病院、国立大学、介護保険など民営化路線はどれも失敗しているのに、日本では未だ、民営化路線を運動の力で止めることができていない。
 温暖化の危機が進行しており、産業構造の変革が求められている。今まで切り捨ててきたケア産業を育成していく必要がある。ケア産業は低炭素、しかも多くの雇用を生み出す。保育、教育、医療、介護、福祉それに第1次産業など。公的病院を民営化するような古い政治と決別しよう。(講演要旨、文責編集部)

週刊かけはし

購読料
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009  新時代社

前の記事

10.24琉球弧での大軍事演習反対

次の記事

安保によって守られた天皇制