10.23今こそ戦争回避の外交を
止めよう戦争への道 めざそうアジアの平和
日米軍事一体化にSTOPを
2021関西のつどい
【大阪】2021関西のつどい実行委員会(大阪平和人権センター/しないさせない戦争協力関西ネットワーク/戦争させない1000人委員会・大阪呼びかけ)主催のつどいが10月23日、エルおおさかエルシアターで開かれた。33団体、103人の個人が賛同した。
中北龍太郎さん(しないさせない戦争協力関西ネットワーク共同代表)が主催者あいさつをした。岸田政権は、防衛費枠(現在はGDPの1%)を2%にする・敵基地攻撃能力を方針化する・九条改憲をめざすとしている。高市早苗を政調会長にすえ、安倍の肝いりで成立した岸田政権は、安倍政権そのものだ。1976年三木内閣の時に防衛費1%枠が決まったが、それから10年後の1986年中曽根内閣のとき1%枠は撤廃された。しかし、90年以降、1%枠は守られてきた。それを2%、11兆円にするというのはとんでもないことであり、専守防衛政策を根本から崩し、先制攻撃・侵略への道そのものだ、と批判した。
ミャンマーの
人々に支援を
続いて、柳澤協二さん(国際地政学研究所理事長・新外交イニシアティブ理事、元防衛庁運用局長・内閣官房副長官補などを歴任)が、「米中対立の東アジアと日本~戦争回避と護憲の課題~」と題して講演をした(別掲)。
続いて連帯アピールがあった。崎浜盛喜さん(奈良沖縄連帯委員会代表)は、沖縄戦の遺骨が含まれる土砂を辺野古の海の埋め立てに使うことに対する奈良県議会意見書が全会一致で決議され、政府に提出された経緯を報告した。ペシャワールの会メッセージの代読。復活したタリバン政権の行方を慎重に静観すること、貧困者ラインが72%という実情を直視し、手を差し伸べようとの訴えがあった。猶原信男さん(ミャンマー関西代表)は、在日ミャンマー人は、常にビザを取り消され本国に送還される危険の中で生活しているのを知ること、ミャンマーの人々への財政支援が必要であることを訴えた。
高良鉄美さん
も記念の講演
二つ目の講演は、高良鉄美さん(参議院議員・琉球大名誉教授・沖縄社会大衆党委員長)が、「平和憲法を蝕む政府の愚行─再び戦争の惨禍が…」と題して行った。参院議員としてとってきた行動(帽子の抵抗)、沖縄の現状、10・10空襲・沖縄戦、戦後の米軍統治・1956年県民総決起大会、辺野古基地建設反対運動をかいつまんで語り、憲法を蝕む安保条約・地位協定に触れ、現在の政治は憲政に非ず、憲政を行う政権をつくろうと訴えた。
最後に、米田彰男さん(大阪平和人権センター代表)がまとめをした。閉会後に予定されていたデモは中止になった。 (T・T)
柳澤協二さんの講演から
「抑止力」論は誤りだ
「抑止」とは戦争の動機をなくすこと
この3月ぐらいから、米国の高官が、2027年までに台湾有事があると発言、4月には菅総理が訪米して52年ぶりに台湾に言及した共同声明が出され、にわかに台湾が米中対立の焦点になってきた。これは非常に心配な状況だ。
台湾をめぐる米中対立…何が心配か? ①戦争回避の条件が失われている。②米中戦争は日本を巻き込む。③米中が望まなくても戦争は起きる。④戦争を知らない政治家が国を動かしている、の4点があげられる。
①(台湾有事) 中国で共産党軍との内戦に負けた国民党軍は、政府を台湾に移し軍による戒厳状態の中で政治を行ってきたが、それでも米国は反共の防波堤として台湾を支持した。1996年直接選挙で台湾総統に民間人の李登輝が選ばれ台湾を民主化すると、米国は民主主義のシンボルとして支持した。中国は内戦状態の継続だから、国土の統一のために台湾を中国に統一するという国家目標を捨てていない。米国はそれを許せない。しかし、戦争がないままここまで来ている。その背景には、軍事バランス・政治的コンセンサス・経済問題がある。軍事バランスは、1990年代は米国が圧倒的に優位だったが、その後の中国軍の急速な軍拡と近代化によって崩れてきている。
いま中台関係
をどう見るか
政治的側面では、197
2年に米中国交回復が成り、そのとき政治的合意(中国の『中国は一つ』という立場を、米国は反対しない&台湾の独立を支持しない)がなされた。その合意が、トランプ政権以来大きく動き出している。背景には、台湾の人々の独立志向があり(特に2019年の香港の弾圧以来)、1国2制度は信用できなくなってきている。中国との統一を支持する人は多く見ても一割ぐらいだ。米国議会では、台湾の国際機関加入を支持する法律が通っている(米中はWHOへの台湾のオブザーバー加盟を認めるかどうかで対立)。『一つの中国』がもろいものになってきている。
そうはいっても、中台の関係は経済的には、非常に強いつながりがある。台湾の馬英九政権時代は、通商・通航・通郵という形で経済交流があった。ところが現在は、台湾が世界の90%のシェアをもっている高性能半導体供給網を止めることで、中国ファーウエイの生産が停滞するという問題が出ている。経済が対立の焦点になってきている。
米国の軍事戦略としてのエアシーバトル(2010年~)は、中国のミサイルの射程外から中国に報復するというものだったが、軍事バランスが崩れたため、米国の新作戦構想(2020年3月)では、射程内で闘う戦略に変わってきている。そのため、日本が戦場になる。兵器は小型化し、巡航ミサイルで対抗するとしているが、巡航ミサイルは破壊力が弱い。現在米国は中距離弾道弾を持っていないので、今後中距離弾道弾の開発と配備を急ぐことになるが、日本がミサイル軍拡の舞台になる。
「米中戦争」の
拠点は日本だ
②(日本が標的に) 米中戦争では、日本を拠点にしなければ米国は戦えない。ミサイルという武器は、攻撃優位の武器だから、先制攻撃の誘惑に駆られる。中距離ミサイルとは、東京北京間、北京グアム間の距離だ。米本土には届かない距離が中距離。ミサイル配備に日本は「NO」といえるのか。米国を優位にするための中距離ミサイルの日本を舞台にした軍拡競争が始まる。安保法制法が成立し集団的自衛権が行使されれば、日米軍事一体化の下で自衛隊基地が標的になる。
米中相互不信
の危険な現実
③(安全保障のジレンマ) 米中の相互不信があれば、双方ともここで引くわけにいかない。引けば、米国は同盟国の信頼性を失い、中国は共産党支配の正当性を失う。小さな衝突が望まない戦争に拡大する。
これを《安全保障のジレンマ》・《同盟のジレンマ》という。つまり、米国に頼れば安全という構図ではなくなった。
米国は少しずつ台湾支援を強化していく。それに対して中国は軍事的威嚇をし、不満表明のシグナルを発する。それは、双方が相手の限界を試すチキン・ゲームになる。1915年サラエボ事件の場合は、2発の銃声から第1次大戦になった。1962年キューバ危機の時はソ連が我慢してデタントにつながった。そのときの政治指導者がちゃんと対処するかどうかによって、いずれもあり得る。
戦争を知らぬ
政治家たち
④(リアルを知らない政治家たち) 問題は、戦争を知らない政治家が国を動かしているということ。
『ミサイルを置けば抑止力になり、ミサイルは飛んでこない』と平気でいう。ミサイルを置けば標的になるのだ。『台湾有事なら日本は台湾を防衛する』。これは、自分が死ぬとは思っていない者の発言だ。台湾を防衛するとは、中国と戦争するということ。その覚悟はあるのか。『敵基地攻撃は有力な手段』・『EMP(電磁パルス)攻撃が出来ればいい』。電磁パルスとは、上空で核爆発を起こし、そのときに発生する電磁波のエネルギーだ。知っていて言っているのか。『国の名誉を守る』。名誉とは何か。相手にも名誉はある。この文言が自民党の選挙公約に入ったが、名誉は最大の戦争要因だ。自民党総裁選での、これらのあまりにもリアリティの欠如した無責任な発言。戦争とは、双方がどれだけ被害に耐えられるかということだ。戦争をどう終わらせるかのビジョンを持たずには出来ない。
「抑止力」論
の危険な誤り
抑止力という言葉が使われる。ハイレベルの技術を使った兵器を持つこと、というような意味で使われているようだが、そのようなものはない。抑止があるだけだ。抑止力保持を訴える敵基地攻撃論は、技術的にミサイルを落とすことができないなら、相手が撃つ前にたたくという論理。しかし100%たたくのは不可能だ。必ず報復攻撃がくる。たたくとき、どこに撃つのか。相手のミサイルが日本向けであることをどうして判断するのか。それを判断することは不可能だ。したがって、敵基地攻撃とは、フツーの戦争をするということだ。
戦争には動機がある。自分がやられるという恐怖が動機だ。だから、動機をなくせばミサイルはこない。政治家の発言はレベルが低い。
政治家が学ぶべき抑止の常識は次のことだ。抑止で重要なのは兵力数ではなく、相手の認識と意志をどう知るかだ。相手の動機が強ければ抑止は破綻する。第2次大戦の時のABCD対日包囲網(対日石油禁輸と在外資産凍結)と真珠湾攻撃がいい例だ。戦争せずに核心的利益が守れる、これを《安心供与》というが、安心供与があればあえて戦争する者はいない。中国の場合、それは台湾独立の否定である。日本の論議にはこれが欠けている。
「憲法前文」の
実践こそ大事
愚かな戦争をしないために。優秀な人たちが時に愚かなことをする。アフガン戦争は米建国史上最長の戦争で、米国の力と民主主義への過信があった。湾岸戦争のとき、2佐の自衛官が私に言った言葉を思い出す、「訓練が役立つときは国民が不幸、訓練が役立たないことを願う」。まさにその通りだ。
憲法九条を守る。九条は、してはいけないことが書いてある。では何をしたらいいのか。それは憲法前文に明確に書いてある。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼し、全世界の国民が恐怖と欠乏から免れ、平和に生存する権利を有する。自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」これを実践することだ。中国にも米国にも、戦争回避を訴え、尊敬される大国になることを促す。そして、専守防衛に徹した自衛隊の運用をする。(講演要旨、文責編集部)
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