北海道・寿都町長選
核のゴミ最終処分場問題が最大争点に!
衆院選では野党統一候補が自民と接戦
【北海道】核のゴミの最終処分場選定に向けた文献調査への賛否が最大の争点となった寿都町長選は、26日投開票されたが、調査撤回を訴える越前谷氏は残念ながら現職を破ることはできなかった。
当日有権者数は2448人、投票者数は2058人。投票率は84・07%で町民の選挙への関心の高さを伺わせた。得票は片岡氏が1135票。越前谷氏は900票と有効投票数の44%を獲得し235票差まで迫った。
「子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会」の三木共同代表は広報紙で選挙について以下のように述べている。「越前谷さんを支持してくれた900票は本当に想いが物凄く詰まっていると思います。静かだった寿都の町⺠が900人も同じ気持ちなんです。私は負けたとは思ってません。むしろ希望が見える数字だと思います。町⺠の会の今後は、改めて決めていきますが30代〜70代の町⺠が1つになれた会です。まだまだ出来ることはあると思います。」「少し休んで、また元気に活動して行きます。皆さん、引き続き町⺠の会をよろしくお願いします」と活動の継続を表明している。
また、越前谷氏の町議辞職に伴う補選も調査の反対派、賛成派の一騎討ちとなり、調査反対を掲げた吉野氏が1121票を集め当選を果たした。吉野氏は「越前谷さんの想いを引き継ぎ頑張る」と力強く決意を述べている。
定数9の町議会は、賛成派5人、反対派4人となり、賛成派が過半数の状況は変わらない。
町長選では現職が有効投票数の55%、補選では吉野氏が56%をそれぞれ獲得し、町民の投票行動が調査への賛否と地域振興との間で揺れていることを示している。
北海道新聞社が行った出口調査(投票者数の18%、378人)によると、「文献調査をただちに撤回する」が最多の44%を占め、「文献調査までは行う」(16%)、「第2段階の概要調査までは行う」(8%)、「第3段階の精密調査までは行う」(4%)、「最終処分場の誘致を目指す」(5%)を合わせた調査継続派は33%に留まっている。また「分からない・決めていない」も23%に上り、町長選と補選での得票結果が逆転現象を起こした状況を示している。
概要調査拒
否は可能だ
来年秋にも文献調査が終わり、概要調査に進むか住民投票が行われることになるが、「文献調査撤回」と「文献調査まで」を含めると有権者の60%が概要調査へ進むことに反対しており、町民の半数近くが町長選で越前谷氏に投票したことから、概要調査に進むことを阻止することは不可能ではない。
さらに北海道知事は2000年の道の「核抜き条例」の順守を求め寿都町の住民投票で賛成多数となった場合でも、概要調査に進むことには反対する方針だ。
また、神恵内村でも来年3月までに任期満了に伴う村長選が行われる見通しだが、村長は道知事が反対すれば概要調査には進まないと言っている。
今回の衆院選では候補者の多くが核のゴミ問題を争点にせず、国民的な課題として取り上げなかった。
しかし、寿都町、神恵内村だけの地方の問題ではない。政府が多額の交付金で調査地を募り、地域に混乱をもたらすような今の法制度がこのまま続くならば、今後も文献調査へ手をあげる自治体が出てくる可能性はある。全国的な議論を巻き起こし、両町村の反対派の人々を孤立させないことが必要だ。
町民の分断は
さらに深まる
寿都町と神恵内村には、それぞれ周辺自治体分も含め調査期間の2年で計20億円の交付金が支給される。寿都町は本年度の10億円のうち9億2500万円を受け取り、7500万円は岩内町に配分する。
寿都町は、当初、道に1億円、岩内町を含む4町村に各7500万円を配分することを検討したが、道と蘭越町、黒松内町、島牧村が受け取りを辞退しており、周辺自治体の調査への反発を示している。
これまで町と原子力発電環境整備機構(NUMO)による「対話の場」が開催されているが、審議は非公開、処分場としての適否について詳しい言及もない。
寿都町の対話の場は、町側が選んだ町議9人を含む委員20人で発足したが、反対派の辞任や欠席が相次ぎ、3回目の会合の出席者は11人だった。
さらに、神恵内村に至っては、NUMOが第4回会合を開き、15歳以上の村民に限り10人の傍聴が認められたが、参加は1人だった。
このように出席者が少ないのは、住民の調査への関心の低さを示しているのではなく、対話の場が調査推進を前提にした事実上の「アリバイづくり」の場となり、調査の既成事実化が進むことに対する住民の警戒感を示しているのだろう。
4区で立憲と
自民が接戦!
寿都町、神恵内村を選挙区に含む北海道4区は与野党一騎打ちとなった。自民党候補が10万9326票、立憲民主党の大築氏(比例で復活・初当選)が10万8630票をそれぞれ獲得し、その差696票となった。
知名度の低い大築氏が立候補表明からわずか2カ月半で、10万票以上を獲得し接戦に持ち込んだ背景には、「野党共闘」とともに無党派層が多い大票田の札幌市の一部と小樽市での取り組みが功を奏したと思われる。両市での得票数は、自民党候補を1万票以上も上回った。
4区の都市部の有権者は、大築氏が文献調査反対を明確に打ち出したことに対しても支持したのだろう。
若年層に支持
広げられない
今回の衆院選で野党が議席を獲得したのは、立憲民主党の8議席のみ。野党勢力は公示前から2議席減らした。このことから分かるのは、もはや北海道は『民主王国』とは呼べないということだ。
立憲民主党は今回、道内全12小選挙区に候補を立て、共産党がこのうち9選挙区で候補を立てず共闘したが、勝利したのは5選挙区。共産党が候補を取り下げた道3区、4区、9区の3選挙区も1勝2敗と負け越した。
それでも一本化は一定程度の効果があり、3、4区は競り負けたものの接戦に持ち込むことができた。
これまで旧民主党は支持基盤の労組票に、自民に批判的な無党派層の票を上乗せするのが「勝ちパターン」だったが、立憲民主党の道内の党員・サポーターは約8千人で、旧民主党時代のピーク時の半分以下に減少しているという。
比例代表道ブロックは立憲が前回から3万票減らし、自民党は8万票以上積み増した。
こうした結果になったのは、巷間言われているように、自民党が菅から岸田に首をすげ替えたこと、立憲民主党が都市部の若年層に支持を広げられていないことなどが要因と考えられる。
(白石実)
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