11.2福島原発事故刑事訴訟控訴審始まる

大惨事の責任を取らせよう
無念をはらす時は今

現地にぜひとも
来てください
 2019年9月19日、福島原発事故刑事訴訟1審判決で、東京地裁は勝俣恒久元会長、武藤栄元副社長、武黒一郎元副社長ら東電最高経営幹部の責任が、担当職員の証言によって明白であったにも関わらず、国の原子力政策を「忖度」する形で、「無罪」の判決を言い渡した。まさに許しがたい責任回避判決である。「有罪判決」を出せば、国の原子力政策の遂行が困難になる、という「忖度」の帰結だった。
 それから2年以上経った11月2日、勝俣恒久元東電会長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長を被告とする控訴審が東京高裁で始まった。この日午後1時30分からの控訴審に向けて、高裁前では午前10時半から、今も避難を余儀なくされている福島の人びとを先頭に、多くの支援者も駆けつけた。高裁前の集会では。海渡雄一弁護士が「あれから多くの人たちが亡くなった。この人たちのためにも東電の責任を追及し、勝利の判決を」と訴え、「何よりも現場検証を。検証抜きに裁判をしてはならない」と呼びかけた。
 小森弁護士は、「放射能汚染によって16万人もの住民が避難を余儀なくされたことを忘れてはならない。現場検証ぬきの裁判で判決を下すべきではない。高裁の裁判官には、ぜひとも事故の現場に赴いていただきたい」と呼びかけた。大川弁護士は「一審判決は被害の現実を理解できていないものだ。広大な地域で、まだまだ人が住むことができる状態にはなっていない。現地に行かないと現場がどうなっているのかわからない」と訴えた。

被災者の怒り
はおさまらぬ
 被災現地からは郡山市議の蛇石郁子さん、告訴団の中路良一さんもアピール。「地元では参院選で野党共闘が勝利している。放射能汚染水海洋投棄への怒りも拡がっている」と自信をこめて強調した。郡山市の庄司さんは「日本の司法が問われている」と語り、地脇さんは「とにかく現場を見てほしい。ぜひとも逆転勝利判決を」と訴えた。
 さらに被災現地の住民たちの怒りの声が続く。「東電は賠償金を払いすぎている、などと言い出している。責任を問われるべき東電が居直っている」「まだ5万人以上が自分の家に帰れない。事故以来2300人が死亡し、自殺した人も130人以上になる。この現実を徹底的に明らかにしたい」の悲痛な声も。
 浪江町の住民からは「10年たっても東電幹部は誰も責任を取っていない。家族を亡くした人びと。自殺した人たちもいる、ぜひこの悲惨な現状を見てほしい」「司法は加害と被害の現実を見つめて公正な判決を」の声が続いた。
 議会があるためにこの日の行動に参加できなかった佐藤和良いわき市議からは、「事故を起こした東電の誰も『無罪』という不当判決を許さない。真相を明らかにして責任をとらせる判決を。多くの人が亡くなっていく。ぜひとも東電の責任を裁判の場において明確にさせよう」とのアピールが紹介された。

現場を見ずに
判断するな!
 裁判後、参院議員会館で、この日の法廷の報告集会が行われた。その中では控訴審に向けて、謙虚な姿勢で裁判に取り組むべきとして、気象庁の部長や、東芝の技術部長などから話を聞く機会を設けたりしていくことが報告された。
 河合弁護士は、先日、事故現場の検証に出向いたことが衝撃的だった、勉強になったという裁判官の話を紹介した。裁判官も現場に行かないと分からないことが多い。「日本史上最悪と言える事故の現場を見ないで、公正な判決を出せるなんてありえない」と河合さんは訴えた。加えて「現場に行って、どれだけ恐ろしいことが起きたか、その惨事に責任を取らせなくていいのか。裁判官も考えたはずだ。私たちの最終目標は原発をすべてなくすことだ」と語った。
 さらに大川弁護士、北村弁護士の話に続いて、福島みずほ社民党党首(弁護士)のあいさつを受けて、高裁での裁判を勝利に向けて進めていくことを確認した。高裁での次の公判は来年の2月2日の予定だ。 (K)

東京高裁前で控訴審勝利の訴え(11.2)
公判後、参議院議員会館で報告会が行われた(11.2)


 

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