10.23さようなら原発集会+シンポ
原発事故は終わっていない
全国各地でヤメロの世論を
さようなら原発一千万署名市民の会は、毎年秋にも大規模な屋外集会とデモを行ってきた。今年も10月16日に代々木公園での集会を中心にした行動の準備を進めてきたが、新型コロナ感染拡大のために中止した。日程と行動内容をあらため、「フクシマ原発事故は終わっていない10・23さようなら原発集会+シンポジウム」を開催、屋内会場の全電通労働会館ホールには100人弱が、オンラインには150人ほどが参加した。
集会はピースボートの畠山澄子さんを総合司会に、市民の会呼びかけ人の鎌田慧さんのあいさつではじまった。鎌田さんは「屋外での大集会を開催できなかったことは残念だが、来年の3月26日に屋外会場をすでに確保して大集会を準備している。今日は脱原発、さようなら原発の理論を強化し、それを自分でいろんな人に話して説得していく。『もう原発は終わっている』という集会を地域で開催しよう」と屋内集会の意義を話し、次の大結集への足掛かりにしようと呼びかけた。
福島県の人権
侵害許さない
集会は2部構成。第1部は4つのテーマ(①福島課題、②第6次エネルギー基本計画、③気候危機と原発問題、④東海第二原発裁判)について5人による報告が行われた。
福島課題については福島原発告訴団団長の武藤類子さんと、避難の協同センター世話人の熊本美彌子さんの2人が報告した。武藤さんはオンラインで報告し、11月2日に東京高裁ではじまる控訴審にむかう原告団の思いを語った。
熊本さんは福島から都内への避難者で「原発避難者の住宅追い出しを許さない会」の世話人代表に就いている。福島県は昨年3月、東京の国家公務員住宅に避難している4世帯に対し、住居明け渡しと損害金支払いを求める訴訟を福島地裁に起こした。これまで3回の公判が行われ、福島に通う交通費が嵩むという。さらに福島県は先週、同じく区域外避難者25世帯に対して自主退去を求め、退去しなければ提訴するという文書を送っているという。次の公判は12月3日に予定、裁判闘争への支援を訴えた。
続いて、原子力資料情報室の松久保肇さんが前日の22日に閣議決定された第6次エネルギー基本計画について報告。続いてFridays For Future NasuとSendaiの元メンバーで東北大学4年生の益子実香さんが気候危機と原発問題について報告した。
益子さんは福島県境の那須町で生まれ育ち、震災時は小学校5年生で、自身もホールボディカウンターや甲状腺エコー検査を受け、ガラスバッジをつけながら生活した。現在は同じく福島県境の宮城県丸森町筆甫地区でフルタイムで活動している。同地区は19年の台風19号で陸の孤島となり、現在でも中山間地の筆甫から町中心部に降りるには迂回路を通る必要がある。益子さんが強く訴えたのは次の点だ。
「震災後に、皆さんが時間と勇気を振り絞って作り上げてくれた反原発運動と同じくらいの力をこめ、私たちと一緒に行動をしていただきたい」「国会前に20万人を集めた反原発デモのような自発的な力で、人類最大といえる気候危機という脅威に立ち向かいましょう」
第1部最後の報告は、東海第二原発運転差し止め訴訟原告団共同代表の大石光伸さんから。日本原電は来年10月に使用前検査のための燃料装荷と臨界試験を予定しており、この同意をめぐって地元自治体との間で攻防が始まっており、住民運動の焦点になっているという。再稼働阻止の陣形を住民と自治体による多重の包囲網をつくり、燃料装荷を阻止していきたいと決意を語った。水戸地裁で部分勝利した裁判は双方が控訴、東京地裁での控訴審開始は年明け以降の見通しだという。
原子力推進派
の「断末魔」
第2部は「福島・汚染水海洋放出の問題点と課題」をテーマに、いわき市議で「これ以上海を汚すな!市民連合」共同代表の佐藤和良さん、元原子炉技術者の後藤政志さんの2人がそれぞれの立場から問題提起し、福島原発刑事告訴支援団の宇野朗子さんが司会進行役として問題点と課題の深掘りをしようという企画だ。現在、宇野さんは京都に避難している。
2人が共通して提起していた内容がいくつかあった。原子力規制委員会の事故調査で圧力容器と上蓋の接合部分がの高汚染が確認され、炉内などに残るデブリ取り出しの手順見直しが必至となったこと。デブリの処理・処分方法も明確ではなく、こんな実態で汚染水のみを先行して海洋放出という方法で処分をしようとする政府と東電の欺瞞性についてだ。原発敷地内には利用未定用地が広くあり、貯蔵タンクの増設が可能なことだ。汚染水の原因である地下水の流入を防げると設置した凍土壁の効果に対する反省もないまま、〝処理水〟放出用のトンネルを沖合1キロに目指して建設するという案がでた。どちらも原子力技術者の発想ではなく、ゼネコン主導という問題がある。
佐藤さんはこれに加え、「政府が一方的にタンク貯蔵汚染水の処分だけを先に進め、新たな二次被害を発生させるという事態は、廃炉を優先し、復興を犠牲にするもの。漁業者をはじめ原発事故被災者にさらなる苦悩と犠牲を強いることで到底認められない」と批判した。
後藤さんは原子力市民委員会で汚染水問題のプロジェクトのまとめ役をしており、石油備蓄で実績のあるタンクの大型化、米サバンナリバー核施設で実施されている汚染水のモルタル固化して永久処分する方法などの実施を提言していることを紹介した。そして「一度海に流したら絶対に元には戻らない〝不可逆な行為〟はしてはならない」「科学的に未解明な部分がある場合には〝予防原則〟に立って安全側に立って物事を進める責任がある」と訴えた。
宇野さんは2人の提起を受け、「政府の海洋放出方針を覆す障壁となっているのは何か」という問いを発した。
佐藤さんは「政府が勝手に決めたことを、漁業者をはじめ事故被害者や国民、あるいは近隣諸国に押し付けようとしている。非民主的に推し進められてきた。関係者があきらめるのを待つかのようだ。放射性物質のさらなる環境への放出であり、30年以上もの長期にわたる計画である。もう一度原発事故の原点に立って、私たち被害者があきらめないということが大事。衆院選が始まっているが、原子力ムラの代理人である甘利が自民党幹事長になり、新増設などをあきらめずに国民に押し付けようとしている。10年前と問題は変わっていない。国民の側があきらめないことが大事」などと答えた。
後藤さんは「政策決定者が事故現場の被ばくの危険性を認識できておらず、汚染水問題も同様だ。安全性を判断するのは事故を起こす側の事業者ではなく、潜在的被害者である住民であるべきで、こうした判断、つまり政策決定の権限を住民にもどすべきだ」などと答えた。
2人の答えを受け、宇野さんは「いまできることは何か」とさいごにたずねた。
佐藤さん、福島と宮城の生協4団体が始めて全国にもひろがる署名への参加や、政府が基本方針決定した4月13日にちなみ毎月13日にスタンディングでアピールを続けること、こうしたことで国民の世論をつくっていくのが大事だと発言した。
後藤さんは、汚染水問題は全体の一部であるということをいま一度見直すべきだ。原子力規制委員会も格納容器上蓋の高汚染以外に、水素爆発に至った経緯についての見直しも検討課題になりつつある。かつての同僚と話した際に、原子力は断末魔であるという結論に達した。原子炉を運転できる技術者の数が減り、質も低下している。衰退の一途をたどっている。これを隠すかのように悪あがきをし、新型小型炉の建設などを持ち出している。こうした総体をとらえ、汚染水放出の問題は許されないという声をみんなで発することが大事だと発言した。
集会は録画され、次のアドレスで視聴できる。https://youtu.be/YziAPtBrizo
(斉藤浩二)
【訂正】本紙11月1日付2面「10・19総がかり行動」報告記事3段9行目「伊藤晃参院議員」を「伊藤岳参院議員」に、11月8日付3面「眞子と小室圭の結婚について」3段目左から2行目「文藝春秋」10月号を「11月号」に訂正します。(編集部)
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