11.7日本の食と農が危ない パート3 大阪

戦争あかんロックアクション

 【大阪】戦争あかん!ロックアクション講演会は11月7日大阪PLP会館で開かれ、山田正彦さん(元農林水産大臣)が、「種子法廃止と種苗法改定で、私たちの食料と食の安全はどうなるのか」と題して講演をした。
 講演に先立ち山下けいきさん(ロックアクション共同代表/茨木市議会議員)があいさつで、北海道衆院選街頭演説での麻生副総理発言〈北海道のお米は地球温暖化でおいしくなった。農家のおかげでも農協の力でもない。温暖化でいいこともある〉に言及、日本の農業や農民のこと・食料や食の安全については政府に任せられないと批判した。
 ロックアクションは、農と食の安全について過去2回山田さんの講演会を開いている。この度は3回目。
 集会の終わりのあいさつを本田克巳さん(全日農京都府総連合会副会長)が行った。
 キネマ旬報7位の映画「食の安全を守る人々」(プロデューサー:山田正彦さん)の上映が全国で始まる。        (T・T)

山田正彦さんの講演から

種子法廃止(2018年4月1日)
で何が起きているのか?

 種子法があることで日本のコメ・麦・大豆は守られ、国民に安定した主食を提供できていた。伝統的な在来種は国が管理し、各都道府県に原種・原原種の維持、優良品種の選定・奨励・審査を義務づけていた。コメの種子は、各地の農業試験場で、雑種の混入・不良な種を取り除いて、苗場農家を選抜して増殖させ、厳格に監査した優良な品種を公共品種として、その地域にあった多様な品種(コメだけでも300品種)を安定提供してきた。例えば、茨城県の農業試験場では、11回にわたり異種株を取り除き、純コシヒカリを維持している。
 ところが近年、収穫量が多いという宣伝文句で、みつひかり(三井化学アグロ)・とねのめぐみ(日本モンサント)など遺伝子組み換えの品種が使われ出している。
 この種子はF1品種(1代雑種)で、一代に限ってしか使えない。種子の価格は、コシヒカリの10倍ほど。この種子を購入している生産者(農家)は、種子の開発企業と契約書を交わしている。そこには、種子・化学肥料・農薬をセット購入すること、また、開発企業の指示に従わない場合は生産者は賠償金を支払うことが書かれている。ところが、生産者の多くはその事実を知らない。

 農業競争力強化支
 援法8条4項とは

 農業競争力強化支援法8条4項では、銘柄が多いので集約すること、これまで日本が蓄積してきたコメ等の原種・原原種・優良品種の知見を全て民間に提供することになっている。民間が日本の貴重な種子の育種知見を応用して、新品種の登録・応用特許を申請すれば、日本の農家は特許使用料を払わなければいけない。 
 「稲・麦類及び大豆の種子について」という農水事務次官通知(2017年)では、民間業者の参入が進むまでの間、種子の増殖に必要な栽培技術等の知見を維持し、それを民間業者に提供する役割を担うように記されている。

 地方から日本を変
 える条例づくり

 この文書が通達ではなく通知となっているには、理由がある。2011年に改定された地方自治法・地方分権一括法により、国と地方自治体は同格であり、国の自治体に対する指揮命令監督は禁止された。法令に反しない限り地方自治体はどのような条例でもつくることができる。法令に反しているか否かの第一義的な判断権は地方自治体に有する。国会で野党が提案した種子法廃止、農業競争力強化支援法8条4項の削除については自民党が審議に応じている。
 新潟県・兵庫県は、従来通り種子を管理し生産者に安価に提供する教務を継続する条例を作った。現在、同様の条例が作られているのは28道県におよび、さらに4県で検討されている。
改定種苗法(2021年4月1日施行)は何をもたらすか。
 これまでは、登録品種でも、コメ・麦・大豆・イチゴ・サトウキビ・イモ類・果樹類など、次作以降自由に自家増殖(採種)が認められてきた。それにより、その土地に適した品質の安定した作物を生産してきた。改定後は、登録品種はお金を払って許諾を得るか、もしくは全て苗を購入しなければならなくなる。
 違反した場合には、懲役10年もしくは1000万円の罰金(法人の場合は3億円以下)の罰金を払い、共謀罪の対象となる。自家増殖の一律禁止は、日本とイスラエルのみ。日本では麦・大豆・イチゴの場合、ほとんどの農家が登録品種の自家増殖を続けている。
 種苗法を改定する理由として、優良品種の海外流出を防ぐためとしているが、改定前の種苗法でも、消費以外の目的をもった海外輸出は禁止されていた。山形県は、さくらんぼ紅秀峰のオーストラリアでの海外輸出を防ぐために、税関への輸入差し止め仮処分を提起して、事実上和解した。
 農水省は、優良品種が海外に流出したことはないと国会答弁している(2020年11月)。農水省アンケートでも、52・2%は自家増殖している。その都度苗を購入しなければいけないとなると、農家の経営は成り立たない。
 また、伝統的な固定種を有機栽培している農家も安心できない。例えば、岩手県のナメコ茸の栽培農家が、企業から育成者権の権利を侵害していると訴えられた。裁判では、現物を試験栽培して比較してみなければわからないとして、企業が敗訴した。今回の改正種苗法では、現物の試験栽培を必要とせず、特徴を記載した特性表だけで裁判は勝てるようにしている。判断の権限は農水大臣にあるというわけだ。一般品種から新品種が登録されることはないと農水省は述べているが、上記の例のような場合があるのが現実だ。政府が、企業に有利な配慮をしていることは明白だ。
 米国・カナダも、主要穀物について農家は公共品種、自家採種が主流だ。農民の種子に関する権利は、食料農業植物遺伝資源条約で守られており、日本も批准している。であるのに、このような事態になっている背景は、2016年日本がTPP協定に署名するときの日米交換文書だ。そこには、日本政府は投資家の要望を聞いて、必要なものは規制改革会議の提言に従うとなっているのだ。

 改正種苗法に対
 して何ができるか

 県が開発した登録品種については、許諾手続きが要らず、対価も請求しないで自家増殖できる条例を制定する。これを、長野県は2021年4月に決定した。民間から育種知見の提供を求められても、各都道府県で条例を制定して審議会を設置し、地域の農業経済へのアクセス調査をして意見をまとめ、県議会の5分の4の承認がなければ提供できないようにする。国を変えることはなかなか難しくても、地方から日本を変えることはできる。
 各都道府県の伝統的な品種を発掘して保存管理し、農家に無償で提供する。これについては、広島県が条例でジーンバンク制度をつくり、遺伝子組換え・ゲノム編集の種子について厳しい制限を設けている。これと関連するものに、今治市の食と農のまちづくり条例、北海道の遺伝子組換え農産物に関する条例がある。

遺伝子組換え農産物
の承認大国・日本

 日本は、遺伝子組換え作物を原財料とする食品に対して世界一規制の弱い国である。国が承認している品目が、TPP協定批准後急速に拡大している。粉ミルクに含まれる遺伝子組換え原材料が最も多いのは、明治の粉ミルクだ。そのことを直接明治に電話したら、子どもが飲むミルクだからこれからは使わないことに決めたと、研究所の方から回答があった。
 遺伝子組換え種子とセットで使われる農薬。米国カリフォルニアでは、学校で除草剤(成分はグリホサート、モンサントの除草剤商品名がラウンドアップ)散布によって皮膚がんになったと裁判になり、モンサントが敗訴し、320億円の損害賠償を命じられた。大手3社の小麦粉からはグリホサートが検出されている。
 ロサンゼルス市の3人の子どものアレルギーが小麦製品(パン、パスタ)に含まれる残留グリホサートだと考えた母親は、有機小麦製品に換えたら、4カ月で全快に近い状態にまで回復した。これがきっかけで、ロサンゼルスのスーパーは、オーガニックの食品であふれるようになったという。
 ちなみに、山田さんも、自分の頭髪を提供し調べてもらったら、グリホサートの残留が確認されたという、山田さん曰く「ビールが好きで、よく飲んでいるからな」。輸出用米国産麦は、収穫前にラウンドアップを撒いて枯らすと言われている。
 韓国のスーパーでもオーガニックコーナーが広く普及している。韓国ではほとんどの小中高の学校給食が無償で、有機栽培の食材を使っている。千葉県我孫子市をはじめ、学校給食を有機食材でまかなう動きが活発だ。有機栽培がもっと進むには、学校給食の果たす役割は大きい。遺伝子組換え農産物は頭打ちで、現在は年10%の割合でオーガニックの生産が伸びている。EUもしかり、ロシアもしかり。世界の流れは有機・自然栽培、非遺伝子組換え農産物が主流になりつつある。

  日本の食料安
  全保障を!

 最後に、日本の農家のことを。日本の場合、コメ60キログラムの生産コストは1万5000円だ。コロナの今年は、米価が8000円に下落したのに、政府は何の手も打っていない。米国のコメ60キログラムの生産コストは1万2000円だ。米国では、支持価格制度を設けて、コメ60キログラム 1万2000円を政府が保障し、さらに収入保険で農家収入の8割を保障している。そのような事情を背景に米国はコメ60キログラムを6000円で輸出しているのである。西欧の農家は収入の6~9割を国の助成金で賄っている。日本にも、戸別所得補償が必要だ。そして、食糧自給率の達成、・食の安全・国土の環境保全がはかられなければいけない。(以上、講演要旨)

改正種苗法のひどい内容を解説する山田正彦さん(11.3)

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