投書 瀬戸内寂聴さんの死

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 作家で僧侶の瀬戸内寂聴(せとうちじゃくちょう)さんが11月9日・火曜日に亡くなった。99歳だった。私は11月12日・金曜日の『東京新聞』朝刊と『朝日新聞』朝刊の関連する記事を読んだ。
 「『殺すなかれ、殺させるなかれ』という仏教の教えに従い、瀬戸内寂聴さんは戦争や死刑に反対し、時に命懸けで行動した」。「一五年六月十八日、安全保障関連法案に抗議する集会に飛び入り参加した。この時、九十三歳。国会前で『いい戦争は絶対にありません。戦争はすべて人殺しです』とスピーチ。反戦の立場から、憲法についても『(戦争放棄を掲げる)九条を変えてはならない』などと積極的に発言。『憲法9条京都の会』代表世話人にも名を連ねた」。
 「死刑制度にも反対した」。
 「貧困や虐待などに苦しむ若い女性にも目を向けた」。
 「大きな自然災害が起きると必ず現地に足を運び、バザーや法話で集めた義援金を自ら届けたり、被災者を励ましたりした」。
 「原発反対の声も上げた」。
 「自己の利益を忘れ人のために尽くす、天台宗開祖・最澄の『忘己利他(もうこりた)』という教えもよく口にした」。「社会で苦しむ人々に寄り添い続けた」(『東京新聞』1面、「瀬戸内寂聴さん死去 99歳 作家、僧侶、文化勲章 女性の自由と自立追求 命懸け 戦争・死刑・原発に反対」(岩岡千景)。
 『東京新聞』は、他に1面の「筆洗」、5面の「社説」、24面の「編集日誌」、25面(社会面)に関連する記事を掲載した。7面には「瀬戸内寂聴さん 残した言葉」を掲載した。「戦前に活躍した作家の田村俊子や岡本かの子、女性解放運動家の伊藤野枝(のえ)、大逆事件で死刑になった菅野スガ(須賀子)、新橋の芸者から尼僧になった高岡智照(ちしょう)。こうした女性たちが、まだ小説のモデルになることが少なかった時代に光を当てた」。
 「生涯で出した本は400冊を超えた」(『朝日新聞』31面、「愛した 書いた 祈った 寂聴さん 自由な女性の生き方体現 国会前 反戦訴え」)。だが、「私の本の中で残るのは、おそらく源氏物語の訳だけでしょうね」(『朝日新聞』24面、「瀬戸内寂聴さんを悼む 寄稿 林 真理子(作家) 女性たちの一生 文学の山脈に ねちっこい筆で 根こそぎ説き明かした」。そういったという。
 『東京新聞』と『朝日新聞』の関連する記事をくらべると、私の読み間違いでなければ、『朝日新聞』は、瀬戸内寂聴さんが死刑制度に反対していたことにはいっさい触れていない。
 『東京新聞』は、1面・7面・24面で瀬戸内寂聴さんが死刑制度に反対していたことに触れている。1面の見出し(「命懸け 戦争・死刑・原発に反対」)も大きくてとても良い。「ウィリアム・ユージン・スミスに関する記事」では頑張った『朝日新聞』は、7月14日・水曜日・朝刊14面の社説で、日本は死刑の廃止に向けて歩を踏み出すべきだと主張した。
 瀬戸内寂聴さんの死についての『朝日新聞』の記事は7月14日の社説と矛盾するのではないか。そう思う。
 他に11月12日・金曜日の『神奈川新聞』、『毎日新聞』朝刊、『日刊スポーツ』、『産経新聞』、『読売新聞』朝刊、『日本経済新聞』朝刊の関連する記事の見出しだけ見た。瀬戸内寂聴さんが死刑制度にも反対していたことは、私の見間違いでなければ、『産経新聞』が小さく見出しで紹介していた以外はどこもとりあげていなかった。
 「あの世があるのかないのか、訊(き)かれても答えられないが、近頃ようやく『死』は『無』になるのではなく、『他界』に移るような気がしてきた」(『朝日新聞』1面、「天声人語」)。瀬戸内寂聴さんはそう書いているという。
 私は無神論者なのでこの考えは支持出来ない。また文化勲章も支持しない。新聞はほとんど触れていないが、瀬戸内寂聴さんは金子文子の小説(『余白の春 金子文子』、岩波現代文庫)も書いている。瀬戸内寂聴さんは天皇制についてどう考えていたのだろうか。天野恵一さんに聞いてみたい。そう思った。
(2021年11月15日)

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