11.14止めよう改憲・大阪ネット講演会
憲法改悪の政治に抗して
飯島滋明さんが講演
【大阪】止めよう改憲!大阪ネットワーク主催の憲法講演会が11月14日、大阪PLP会館で開かれ、70人ほどの市民が参加した。コロナの関係で一度中止になり、まもなく復活した取り組みである。
主催者あいさつを中北龍太郎さん(大阪ネットワーク共同代表)が行った。岸田政権が掲げている防衛費対GDP比2%への増額、敵基地攻撃能力保持、憲法9条改憲は戦争への道であり、専守防衛から先制攻撃への政策転換であると批判し、これを阻止するために市民運動の飛躍が求められていると述べた。
ひどすぎる!
改憲野党発言
続いて、飯島滋明さん(名古屋学院大学教授、憲法学・平和学)が講演した。衆議院選の結果を受け止めた今後の運動の展開にとって、非常にリアリティのある、示唆に富んだ講演だった。飯島さんは、戦争させない1000人委員会の事務局次長として、また安保法制法違憲訴訟での意見書執筆などを通して大衆運動との関わりも深く、参議院の憲法審査会(11月2日)でも参考人として意見を述べている。審査会の審議では、自民党がまともに思えるほど、日本維新の会や国民民主党の発言がひどく、公明党も改憲派だったということだ。
飯島さんは、講演の冒頭、沖縄県宮古島にミサイル弾薬が搬入され70人の前線部隊が配備されたことにふれ、このような出来事が国民に知らされないままにどんどん進んでいくことに警鐘を鳴らした(別掲)。
講演後、質疑応答につづき、「南西諸島への自衛隊配備に反対する大阪の会」と「外国人労働者・難民と共に歩む会」が緊急アピールを行った。 (T・T)
飯島滋明さんの講演から
自民・公明・維新・国民民主の改憲
ブロックに正面から立ち向かおう
改憲めぐる
数々の言動
衆議院選の翌日11月1日岸田首相は、党是である憲法改正に向けた発議に触れ、さらに2日には松井一郎(日本維新の会代表)は参議院選と同時に改憲の国民投票を実施するべきだと発言。吉村洋文(日本維新の会副代表)は、「維新は改憲派だ。自民党は改憲を一部の保守層のガス抜きのためにかかげている。自民党のやるやる詐欺に付き合うつもりはない」と。また、玉木雄一郎(国民民主党代表)は、「憲法審査会は毎週開いたらいい。議論するために歳費をいただいている」と発言。自民党・維新の会・公明党・国民民主党は改憲議論推進派だ。岸田首相は、改憲派の他党につつかれて動く可能性もある。
米軍戦略に合
わせた政策だ
岸田政権は、安倍政権の時につくられた「国家安全保障戦略」・「防衛計画の大綱」・「中期防衛力整備計画」の防衛政策3文書を2022年末に改定し、「敵基地攻撃能力の保有」・「南西諸島への自衛隊配備」が明記される可能性がある。日本の自衛隊は、冷戦期、ソ連という仮想敵に対してつくられた。冷戦後はソ連がなくなったことで、別の仮想敵を求めた。それが中国であり、それによって「自衛隊リストラ論」を回避できると考えている。冷戦期の米軍戦略は、ソ連が太平洋に進出し、米国西海岸を攻撃する、それを阻止するのにハワイの米軍基地だけでは無理だから、日本を防波堤として利用する、という戦略だった。それに合わせて、自衛隊は、核ミサイル搭載のソ連海軍の太平洋進出を阻止するため、宗谷・津軽・対馬の3海峡を封鎖する。在日米軍は、三沢・横田・岩国・嘉手納の航空基地に戦闘機を投入するという構想だった。
現在の南西諸島への自衛隊配備は「尖閣諸島」防衛を名目にしているが、実際には米軍事戦略「エアシーバトル構想」の一環であり、自衛隊の生き残り戦略だ。米軍に代わって自衛隊が中国の太平洋進出を阻止する。中国のミサイル攻撃を避けるために米軍はハワイに撤退する。その代わり九州や南西諸島は中国のミサイル攻撃の標的になる。
そこで最近、米軍事戦略が「エアシーバトル」から「遠征前方基地作戦」(EABO)に変更された。これは、「制海権」を確保するために米海兵隊が島嶼に展開し、「遠征前方基地」(EAB)を設定し、そこから中国艦船や航空機を攻撃する、使用兵器はF35B(垂直離発着可)・高機動ロケット砲システム・オスプレイなどだ。水陸機動団(佐世保に配備)・F35Bの宮崎配備・オスプレイの佐賀配備などが計画されている。つまり、第1列島線(琉球弧・台湾・フィリピン・ボルネオをつなぐ)に日米軍事基地を配備する。
防衛費はこの9年間上昇し続け、2021年度は5兆3422億円で、島嶼防衛用高速滑空弾の研究開発費は150億円、スタンド・オフ・ミサイル取得149億円だ。来年度は過去最大の5兆4000億円超が計上予定だ。
教育改悪を通
じた改憲論議
教育においては、自由かつ独立の人格としての成長を妨げる国家的介入は憲法上許されない(旭川学テ判決)。能力があるのに経済的事情で進学できない子どもが出るような状況が生じないために、公権力は学校制度の整備や教育の機会をもうけなければいけない。教育の無償化・充実化は教育を受ける権利の内容であって、憲法改正は必要ない。
ところが、池田・ロバートソン会談(1953年)で、愛国心と自衛のための自発的精神が成長するようにする責任をもつことを日本政府は約束した。第1次安倍政権の時、教育基本法が改定され、愛国心が盛り込まれた。2103年には第2次安倍内閣で国家安全保障戦略に初めて教育が明記され、2014年集団的自衛権行使容認の閣議決定により、「集団的自衛権は憲法上認められるというのが政府見解である」との記述が教科書に記載された。2017年には、教育勅語の正当化が閣議決定された。
戦争は無責任
政治の極地だ
菅政権の2021年、「狭義の従軍慰安婦はいなかった」が閣議決定された。ところが、世界・アジア諸国は日本をどう見ているか。「1931年9月、日本軍は中国の満州地方を宣戦布告なしに侵略した」(スイス・ジュネーブの「国連人権理事会」の資料室の展示)、「連合国軍は巨大な悪(ドイツ・イタリア・日本)を打ちのめした。オーストラリア本土を攻撃したのは日本だけ」(オーストラリア国立戦争記念館内の展示)、「日本軍はレイプ・略奪・赤ちゃんを銃剣で突き刺す」(シンガポール旧フオード博物館の展示)、日本軍「性奴隷」を報道するテレビ画面に安倍首相の姿(2016年2月17日のオーストラリアテレビ)。これが現実。でも、アジアで日本がやってきたことを知らせず、靖国神社や公教育を利用して、愛国心を植え付けることに専心する政治家。国民に死を強要しながら、戦争時には真っ先に逃げた権力者たち。沖縄戦の時は、市民に犠牲を強い、自らは長野県松代に逃げる準備をしていた。
こうした悲惨で無責任な戦争を二度と権力者や軍上層部にさせないため、日本国憲法前文は徹底した平和主義を掲げている。これを変えてもいいのか。中国や北朝鮮は脅威だと言う人がいる。でも、軍事的には冷戦下のソ連の方が脅威だったが、「海外での武力行使が必要」という議論はなかった。中国と本当に戦争するつもりか。大都市の人口が集中する日本に戦争は可能か?中国が脅威といいつつ原発再稼働は論理が支離滅裂だ。サイバー攻撃で日本は壊滅的に破壊される。中国と戦争などと考える方がよっぽど平和ボケではないか。
戦争しなければいけない理由はどこにあるのか?おそらく政府の本音では、戦争に打って出るというより、米国の要求に応えるための側面が強い。いざというとき米国に助けてもらうようにとの理由で。
野党共闘で
改憲とめろ
政治を私物化し、「戦争できる国づくり」をすすめる自民党・公明党・日本維新の会などに対し、デモや集会で主権者意志を明確に示す必要がある。
選挙結果の分析は丁寧に行う必要がある。5野党が候補者を統一した213小選挙区では立憲が57議席を獲得し、立憲は9議席増。小選挙区では自民は票を減らした。菅が再度総裁選に出なかったのは国民の力。自民甘利幹事長と石原伸晃氏の落選は、野党共闘の成果だ。5野党が一本化できなかった72の小選挙区での獲得は6議席だった。野党が共闘自体を解消するのは適切ではない。
衆議院選挙後、改憲勢力とりわけ日本維新の会は多くの予想に反して議席を増した。改憲発議に向けたとり組みが必要だ。自然災害やコロナ感染対策で緊急事態条項が必要だというが、それは自然災害基本法で十分。ドイツもフランスも緊急事態条項を持っているが、コロナ対策でこれを使うのは危険だからと、法律で対応している。緊急事態条項は戦争するために必要なものだ。教育の無償化については、現憲法で十分であり、後は政策の問題だ。改憲に850億円かけるのではなく、その費用で教育の無償化・充実化はできる。日本育英会の廃止など奨学金の状況、教育の環境を悪化させたのは自民党だ。
今から準備
が絶対必要
改憲項目だけではなく、国民投票の仕組みにも問題があることを訴える運動も同時に必要だ。現在の改憲手続き法では、公平・公正な国民投票はできない。CM規制も必要だが、ネット規制がさらに必要。外資が金を使って選挙を変えてしまうこともありうる。また、投票できない有権者がいる状況での憲法改正国民投票は、最高裁判例からも憲法違反の可能性がある。
こうした問題に対応する法改正がなされない限り、改憲発議は許されない。そのような認識を広めよう。なぜ改憲するのか。時代に合わない・古いから悪いという主張は、メディアに乗せられている。(講演要旨、文責編集部)
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