宮城県からの報告 2選挙区で野党共闘が勝利

県知事選でも健闘

メディアの事前予測超える結果
長期政権に終止符を打とう
「市民・野党共闘」の前進を

 【宮城】宮城選挙区は立憲民主党と日本共産党が候補者の重複を避け、全6区に立候補して闘った。両党は市民団体の同席のもと、予定候補者が一堂に会して共闘を確認した。この初めての試みは「市民連合」提言への4党合意を受け、宮城での過去二つの参院選と前回衆院選での「市民・野党共闘」の流れを引き継ぎ、発展させようとするものだった。その成果は二つの選挙区での勝利となって示された。朝日新聞県内版は「立憲、09年の旧民主以来の複数区当選」と見出しをつけた。
 自民党は岸田首相、安倍元首相ら著名議員を送り込み、全勝をねらった。「共闘」への攻撃をはねのけて2区(仙台市北・東部)と5区(石巻市など県東部)で立憲民主の候補者が勝利した。
 仙台市の1区と2区は大激戦となった。自民党現職を相手に4年前の再挑戦だ。前回は民進党から「希望」への渦中での選挙戦であり、2区は無所属からの立候補だった。1区は東北比例で復活当選したが、2区は無所属のため1316票差の惜敗でも比例復活の対象外となった。今回、1区は5315差で選挙区では及ばず比例復活、2区は571票差で劇的な勝利を果たした。

マスコミ予測
を超える事態
 今回、マスコミなど事前予測の多くが外れた。開票報道ではNHK政治部デスクが記事で「検証して改善策を検討」としたほどだ。宮城選挙区でも同様だった。予測そのものの問題点が指摘されているが、選挙区での終盤の動きが非常に流動的だったことの反映ともいえる。
 維新は1区で4年前の1万票から2万3千票に伸ばした。東北比例で初議席を得たが、それは仙台市ではなく4区(仙台市北部に隣接する地域)の立候補者であり、2万7千票を得て同区の共産党新人候補に迫り注目された(当選は自民)。

「野党共闘」と
連合の対応
 「野党共闘の温度差」をマスコミは好んでテーマとした。宮城1区も焦点区として注目され、NHKがクローズアップ現代などで取り上げるほどだった。候補者が連合有力労組の組織内候補であったことも注目された理由だ。番組では候補者が次のように語るシーンが流された。
 「私は共産主義国家を目指している訳ではない。小異を捨て大同につく。とにかく今の自公政権に対峙する力をつける、その一点で結集している」。
 これは有権者に対する説明だったのだろうか。そうではなくて「陣営」の一部、労働組合幹部たちへの弁明ではなかったか。このような発言は候補者の本意ではなかったと思う。そのように言わせたのは労組幹部たちの「圧力」であり、連合新会長による一連の「共闘否定」の言動であっただろう。
 連合会長は最終盤、福島から仙台に入った。「JR福島駅前で、立憲民主党の女性候補者と並び、マイクを握った」。「立憲民主党の党名は最後まで口にしなかった」という(読売新聞10月30日)。
 地元紙は1区と2区の「命運を分けた舞台裏に迫った」と、さらに踏み込んだ記事を掲載した(11月2日・河北新報「立民、態勢構築で明暗」)。そこでは「滞在時間、わずか1分」の共産党演説会での候補者の苦悩が描かれている。出身母体の労組幹部たちと共産党との協力をめぐる軋轢であった。
 1区は序盤、立憲民主候補の先行を伝える報道もあった。落選にはもちろん、共産党との協力問題が連合組合員などに与えた影響、また維新候補や無所属候補の影響もあっただろう。そのようななかでも4年前の2万票余りの「大差」に比して5千余票差まで自民党現職に迫ったことは「市民・野党共闘」の成果であった。
 2017年9月18日、仙台で「9条改憲反対!変えようアベ政治」と題した県民集会が開催された。当時、安倍政治と対決する衆院選が政局の中心になっていた。野党再編の動きが急展開しはじめ、民進党の動向が緊迫化した。集会に参加した1区の立候補予定者は、大揺れの党内事情の渦中にいてその胸中を語った。会場からは「がんばれ!」の声援が飛んだ。集会は事実上の「市民・野党共闘」として民進党候補者を激励した。

連合指導部の
思惑を超えて
 連合によれば、今回の推薦候補者の当選は前回と同じく99名だった。「多くの惜敗者が出たことは痛恨の極みである」という(連合事務局長談話/11月1日)。しかし、その見解は内向きのものであり、4年間、懸命に努力してきた候補者と市民たちの辛さ、口惜しさには思い至らないようだ。けっきょく組合指導部の利害が判断基準なのか。労働組合に求められているのは「自公政権に対峙する」選挙共闘の実現であり、民衆運動の発展に寄与しようとする姿勢ではないのか。連合組合員が問われている。
 地元紙に代表選を目前にした立憲民主の地方議員たちの声が紹介された。「短期的な議論に終始しないでほしい」「共闘を全否定する候補者は(代表選で)一人も出ず、ある意味で決着はついた」などだ(河北新報11月20日「宮城の地方議員が要望『目指す社会を明確に』」)。れいわ新選組の山本代表が総選挙後、仙台での集会に出席した。共産党の中央委員会総会も開催される。「市民連合」には全国から意見が寄せられている。注目しよう。

宮城県知事選の結果

現職批判票を大きく伸ばす

県民無視の政治をやめろ

 県知事選が同日選挙となり「超短期間選挙」の困惑の中で実施された(本紙10月25日号「宮城全労協ニュース」参照)。
 住民と当該自治体が強く懸念する県立がんセンターなど拠点4病院の再編や「水道民営化」など、県政への批判が高まっているなかでの知事選だった。現職の勝利に「盤石の五選」などとする報道もあっが、新人候補の善戦が光った。「被災地で10年、命に寄り添う医師」としての闘いは、時間的な制約のなかでも前回知事選で反対派が獲得した票を大きく上回った。
  知事選の投票率は56・29%、前回から3・0ポイント上昇した。衆院選との同日選となった影響、その効果が指摘されるが、前回も同日選であったのだから、県政への批判が投票率を押し上げた点が強調されるべきだ。
 現職知事の得た68万余りの票は過去二番目だが、得票率は17ポイントも減らした。「市民・野党候補」として闘った新人候補は37万票余り。前回知事選の批判票18万余りの倍であり、得票率は35%を超えた。「時間があったらもっと迫れた」という支持者たちの声には実感がこもっていた。
 知事選結果を糧として、女川原発再稼働など県民無視の県政に対して政策の再検討と中止を求める運動を継続、強化していこう。

「地域経済」対
策に前のめり
 宮城県は来年、県政150周年の年となる。県は大きな盛り上がりを期待する。今春、菅政権の「経済再開」の動きと連動して事前キャンペーンが始まり、それが新型コロナウイルス感染の拡大期と重なった。さらに東京五輪「有観客開催」は夏の大きな拡大と重なった。知事は選挙でコロナ対策の実績を強調したが、検証と反省を県民に示すという謙虚な議論ではなかった。知事選後、知事は県職員に対して忘年会の開催を「地域経済対策の観点」から「お願いした」という。感染対策が前提とはいえ、前のめりの発言であり、冬の感染拡大期と重なるリスクと真剣に向きあっているとは思えない。県内部からいさめる声も聞こえてこない。長期政権に終止符を打つ闘いが問われている。(仙台・八木/11月21日)

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