11.11部落解放荒川区民共闘が年次総会

「完全無罪に向かって闘っていく」
狭山再審勝利めざし意気高く

 【東京東部】11月11日、東京・荒川区のサンパール荒川で、「狭山差別裁判の再審を勝ち取ろう! 11・11講演学習会」が開催され、約50人が参加した。主催は「部落解放荒川区民共闘会議」。同会議の第6回年次総会を兼ねた集まりとなった。
 開会冒頭、司会の女性は「ちょうど一年前も私たちはここで集会を開いた。このかんコロナ禍は政治を吹き飛ばすものだと実感した。来年年明け早々に山場が来る。力強く支援を続けていきたい。今日の集会を実りあるものにしたい」と語り、石川夫妻宛てのメッセージカードと東京高裁あて要請ハガキへの協力を呼びかけた。
 基調提案を共闘会議の坂本繁夫議長が読みあげた。基調は、コロナ禍での街頭情宣の難しさを挙げつつも、マイクに代わるプラカードや視覚に訴える横断幕の作成など、工夫を凝らして活動したと振り返った。基調は東京高裁・大野勝則裁判長へのハガキでの要請や、「全国部落調査復刻版出版差し止め裁判」にも触れた(別掲)。活動報告、会計報告、人事体制が会場の拍手で承認された。

石川さん夫妻が
ビデオメッセージ
 石川一雄さんと早智子さんのビデオメッセージが、大型スクリーンに映し出された。一雄さんは「寺尾判決を振り返ると、自分が自白してしまった罪は重いと感じている。あと3カ月で83歳になる。第三次再審で完全無罪に向け闘っていく。ご支援をお願いします」。
 早智子さんは、「コロナが終息しかかっている。終わることを心から願っている。2006年5月に第三次再審請求をした。寺尾確定判決から47年になった。これまで48回の三者協議が行なわれた」。「石川は『20歳が4回くるまでにえん罪を晴らしたい』とよく言っていた。真実は必ず明らかになる。石川は前向きに生きている」と語った。
 共闘会議と地域の支援運動は、再審弁護団員を招待した集会で、裁判のポイントを繰り返し学習してきた。この日は山本志都弁護士が招かれた。山本さんは闘いの経過を振り返りながら、裁判の現状や証拠品について、極めて詳細に解説した。また前述の「全国部落調査復刻版出版差し止め裁判」の判決(9月27日・東京地裁)についても、時間をかけて報告した(要旨別掲)。

地域での無罪に
向けた地道な闘い
 参加者からの質問を受けつけた。真犯人について、検察が隠している証拠品についてなどが出された。講演の後、部落解放同盟荒川支部の小野崎篤書記長が行動提起をし、集会決議を読み上げた。
 コロナ禍で開催された集会は、広い会議室に支援者らが間隔を空けて着席した。意識を集中した内容の濃いとても有意義なものとなった。石川さんのえん罪を晴らす地道な取り組みが、司法を揺り動かしている。裁判のわずかな進展のために払われる努力は想像を超えている。地域の集会では新しい発見が必ずある。今こそ連帯を固めよう。
(佐藤隆)

 山本志都弁護士の講演から

 闘いは正念場に

 狭山闘争についてはこれまで何度も「正念場だ」と言ってきた。しかし年明け早々がいよいよ正念場となる。事態が動いている。
 63年5月23日に石川さんは不当逮捕された。接見ができず取り調べも片手錠のままというひどい状態だった。これは当時の写真を見てもわかる。
 2006年に第三次再審請求をした。09年9月には32年ぶりの「三者協議」が実現した。同年12月には、当時の門野博裁判長が東京高裁に対し8点の証拠開示を指示した。ここから証拠開示の流れが始まった。
 74年の東京高裁・寺尾正二裁判長の確定判決は、根拠の薄い間接証拠を多く積み重ねた、複雑な判決だ。しかし証拠開示と事実調べでしか、再審の扉はこじ開けられない。これまでに36点の証拠が22年ぶりに開示されている。

万年筆は被害者
のものではない
 現在の闘いの焦点は発見万年筆、現場の足跡、スコップに付いた土の3点だ。とりわけ発見されたとされる万年筆のインキは、被害者の所持品とは別物だ。被害者は当時「ジェットブルー」のインキを使っていた。メーカーのパイロットが短期間に生産したもので、極めて限定的な製品だ。ところが発見された万年筆のインキは一般的な「ブルーブラック」。
 弁護団鑑定ではジェットブルーインキに含まれるクロム元素が、発見万年筆からは検出されなかった。検察側は被害者が「立ち寄った郵便局でブルーブラックを補充した」などと主張しているが、インキを注ぎ足してもクロムは必ず残る。これについて検察は2018年から「実験準備中」などと言い逃れをして反証を引き延ばしてきた。結局、鑑定に使うジェットブルーインキが入手できず実験を諦めた。昨年6月には苦し紛れの「万年筆水洗い論」を主張し始めた。
 昨年6月に後藤眞理子裁判長から大野勝則裁判長へと交代になった。これで9人目だ。東京高裁の裁判長はエリートしか就くことができないポストであり、その判決は名実ともに非常に大きな影響力を持つ。地方の裁判所の所長級である。就任すれば定年まで務められる地位である。
 証拠開示が進むことは運動の成果だが、その反面、検察に都合にいい証拠しか出さないという問題がある。こうして長期にわたりえん罪が晴らされないのは、再審制度について、明確な法規制が欠如しているからだ。「証拠開示の法制化」「証拠調べの保障」「再審開始決定に対する検察官抗告の禁止」などの実現が求められている。そして何よりも市民の監視と裁判所への働きかけが重要だ。
(要旨・文責編集部)

狭山再審を求め部落解放荒川区民共闘が年次総会(11.11)

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