11.8女川原発再稼働差し止めを
住民の思いに応えよう
【宮城】石巻市民17人が東北電力を相手取り、避難計画を焦点に女川原発の再稼働をするなと求めて今年5月28日に仙台地方裁判所へ提訴した「女川原発再稼働差止訴訟」の第1回口頭弁論が11月8日に開催された。
傍聴抽選券受付は、開廷前2時間40分前に開始され、宮城県内はじめ各地から39席の傍聴席を求めて約90人の傍聴希望者が並び、関心の高さを示した。
原告団は、午後2時から裁判所前の公園で60人を超える支援に駆けつけてくれた市民と開廷前集会を開催した。女川原発の再稼働を許さない! みやぎアクション共同代表の多々良さん、村井宮城県知事と知事選を闘った石巻の医師長純一氏も駆けつけ、医師として避難の難しさや現場の実態を語り裁判を注目していきたいと連帯のあいさつを述べた。
女川原発建設時、差止訴訟を家族三代で原告となり闘った女川町議の阿部美紀子さんは、「裁判は勝てなかったが、皆さんにはぜひ私たちの意思を引き継いで闘ってもらいたい」と原告団に激励を送った。福島からも原発被害訴訟団や子ども脱被ばく裁判を闘う原告らも参加した。
集会のまとめとして訴訟原告団長の原伸雄さんがこれまでの経過、9月末に出された被告東北電力の原告主張に対する反論への批判、原告団の思いと裁判に対する決意を述べて集会を終え、「女川原発を再稼働するな」の横断幕を先頭に裁判所へ向い、傍聴できない支援者は拍手で原告らを送り出した。
徹底審理と
明確な判断を!
第1回口頭弁論で意見陳述に立った原告団長の原さんは、避難計画には実効性がないこと、避難計画の決定過程で「住民の関与」が全くなかったこと、深層防護第5層に関して「第三者の審査」がなかったことを指摘し、「住民にとって避難計画は最後の砦だ」と述べ、避難計画の実効性について、裁判での徹底審議と明確な判断を求めた。
原告らは、計画を策定した宮城県と石巻市、内閣府に対して裁判所が質問する「調査嘱託申立」を提出した。調査嘱託を裁判所が採用するかどうかでこの裁判の方向が決まる。宮城県や石巻市から「検討中」とか「確認していない」「わからない」とか回答してくるのであれば、実効性がないことの裏付けになる。
調査内容は、退域時検査場の処理能力や要員確保、避難車両の路上での待機可能時間、避難受付けステーションの受付能力、バスの確保と手配、バスに添乗する職員数、避難に要する日数などを挙げている。
また、被告東北電力は、避難退域時検査所の要員派遣を600人程度行うと主張しているので、その概要についての「求釈明」も行った。
計画を作成し、実行する当事者を議論に引きずり込み、徹底した審議を実現するよう求めていこうとしている。
被告東北電力
争う姿勢!
東北電力は、答弁書のなかで、エネルギーの安定供給、地球温暖化対策、発電コストに優れていると必要論を、さらに様々な安全対策を並べて原発の安全性を強調し、原子力規制委員会が許可を出したとして原発の安全論を展開している。その上で「事故が発生する危険性について、原告側が立証すべきである」と原告側に立証責任を求めてきた。
一方、避難計画については、「深層防護第5層(避難計画)に不備があっても、それによって住民に放射線被害が及ぶわけではない」と、避難計画はあってもなくてもいいような主張である。東海第二原発の再稼働を差し止めた水戸地裁判決に対しても「矛盾している」と否定してきている。
また、避難方法について「緊急時モニタリング測定の結果から対象地区を特定して『段階的』に一時移転をするのだから、UPZ住民が一斉に避難することを前提とした原告の主張は誤りだ」として棄却を求めている。
さらに、避難計画は女川地域原子力防災協議会で「具体的・合理的」と認められ、政府の「原子力防災会議」で「了承」されたものであること、渋滞も、避難途中で体調不良者が続出することもないと主張している。また、退域時検査所の運営について、被告が600人程度の要員を確保するから十分だとし、原告が示した実効性がない理由については「否認ないし争う」と全面的に争う姿勢である。
原告らの反論
原告らは、被告東北電力の答弁書に対して、自治体に避難計画の策定を求めているのは「深層防護第1層から第4層(原発敷地内の防護)が突破される可能性を前提にしていること」であり「(第5層は)あってもなくてもよいもの」ではないと反論している。
各々の防壁は、独立して機能することが前提で、他のレベルに依存してはならない信頼性が要求されている。第5層レベルは、絶対的安全が達成できない原発には不可欠である。
また、交通渋滞で段階的避難は不可能であること、自主的避難を食い止める有効な方法がないこと、退域時検査場、避難受付ステーションでの交通渋滞など実効性がないと反論した。
被告東北電力は、この原告側反論に対する反論を11月末までに提出し、それを受けて、原告側の再反論の準備書面を12月中旬まで提出することになった。それを受けて2022年1月12日午後2時から第2回口頭弁論で審議されることになる。
実効性を審
議する場に!
口頭弁論終了後に、仙台弁護士会館で開催された報告集会では、原告団長の原さんは「避難計画の実効性をとことん審議する場にしていきたい」とその決意を語った。弁護団長の小野寺信一弁護士からは、上記に示した被告答弁書の特徴と原告反論についての解説があった。
裁判支援に駆けつけた「女川原発の再稼働を許さない!みやぎアクション」、放射能汚染廃棄物の焼却を止める裁判を闘っている大崎住民訴訟原告団、子ども脱被ばく裁判原告団代表の今野寿美雄さん、脱原発をめざす宮城県議の会の佐々木功悦県議から連帯のあいさつが述べられた。
あいさつのなかで、3・11当時、女川原発で働いていた今野寿美雄さんの話は、「放射性物質は女川まで飛んで来て、作業員に外出禁止令が出た。道路が地震でひび割れて、津波で流された。そのような状況でどうやって避難するのか。できるわけがない。避難計画は絵に描いた餅だ」と再稼働を止める判決を勝ち取る裁判にしてほしいと訴えた。福島原発事故の実態をみれば、実効性ある避難計画などそもそもできるわけがない。再稼働を止める訴訟に注目と支援を!
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