総選挙 福島では野党3勝、自民2勝
共同戦線を強めよう
【福島】県内5小選挙区は、立憲民主党が3選挙区で勝利、全選挙区で前職を擁立した与党・自民党は2選挙区での議席獲得にとどまった。
県内すべての選挙区で統一候補を実現させた野党が、政権交代を成し遂げた2009年の第45回衆院選以来、12年ぶりに自民を上回る議席を獲得した。前回に続き、1区(県北と相馬地方)は、立民の金子恵美が再度、自民の亀岡に競り勝った。
2区(二本松市、郡山市など)では、岸田政権の生みの親と自任する自民の根本に立民新人29歳の馬場雄基は敗れたが、公示直前に共産予定候補平善彦が立候補を取り下げ文字通り統一候補となったことで支持を広げ比例復活当選を果たし最年少議員となった。
3区(白河、須賀川、田村市等)では、立民玄葉が、自民上杉に勝利した。
4区(会津)では、立民小熊が野党共闘を背景に自民菅家を制した。
5区(いわき双葉)は自民吉野が、県内初の共産で野党統一候補となった熊谷を下した。2区5区での得票を増やしての自民勝利は根本も吉野も復興相を務め、莫大な復興マネーを差配して支持基盤を拡大してきたことによる。コロナ下で苦境にある人々が権力にすがらざるを得ない状況が拍車をかけた。
コロナ禍の
下での活動
リアル集会が開けない、チラシの戸別・街頭配布を遠慮してしまうなど、どの陣営も選挙前段の活動が制限された。こういう時は、組織基盤が大きい方が俄然有利だ。自民党2区の根本匠はもっぱら企業回りを続け、公明党が協力し支持を広げた。
野党共闘を推進してきたふくしま県市民連合は、9月中旬に野党各党代表と予定候補者、県民代表が参加してオンライン討論集会を開催した。市民連合の地域組織ミナセンなかどおりは10月初めに候補者と市民の対話オンライン集会を開催。2区3区及び東北比例候補が登場し、市民8人の意見を受け質疑応答、その模様はユーチューブで配信された。汚染水、避難者支援、バリアフリー、食と水の安全、米価・農業危機、消費税、非正規貧困、憲法と平和など喫緊の課題が浮かび上がった。運動は、プラカードスタンディングのほかはSNSでの拡散であった。
ブレーキと
なった連合
県市民連合と立民・共産・社民との政策合意は5月にはまとめられていたが、協定調印は公示直前の10月17日だった。ミナセンの郡山駅前全野党・市民・馬場候補街頭演説会はかろうじて間に合って開かれた。連合がブレーキ役を果たし続けていた。市民連合やミナセンの存在感が日増しに大きくなる中でも、決起集会や街頭演説会では、あいさつはさせず、「出席紹介」にとどめられた。福島入りした連合芳野会長は候補者の名前を連呼しても立憲の党名を口にせず、記者団には立憲共産の接近に残念と語り、野党連携に冷水を浴びせた。
5区では
共産熊谷が善戦
野党統一が合意されても、連合は5区を自主投票として、立憲県議の選挙区入りさえ難色を示した。が、熊谷が前回比4万票増であったことに示されているように統制は効かなかった。他の選挙区でも集会や街宣に参加するのは特定の幹部だけであり、現場組合員の姿は見えなかった。これはしかし、連合の問題というより他のローカル組織、労働組合にも共通している運動の低迷を表すものである。
都市部では
維新が伸長
福島県内で維新の姿かたちは見えていないが、支持は広がっている。特に郡山市など都市部で伸びた。背景には官民問わぬ非正規拡大、分断の深まりがある。何しろ今や、民間で5割、市役所で4割が非正規(郡山市20年度労働基本調査)という現実がある。
共同戦線強化
のチャンス
一方、今回の活動を通じて、市民連合・ミナセンと残留社民党、れいわ新選組との結びつきが新たにつくられたことは、共同戦線強化のチャンスと捉えることができる。維新伸張で改憲発議が現実化しつつある今、原発汚染水、貧困格差、気候危機、女性差別、税制そして憲法などの課題で共同の闘いを前進させ、立憲内外の人々をも引き寄せて運動空間を拡大することは、来る参議院選に取り組むうえで必須の条件である。
政策討論を
進める必要
政権交代がスローガンでもあったが、良く論議された末のことではなかった。かつて自社さ政権時に消費税、小選挙区制導入、社会党の安保自衛隊容認と党そのものの解体に至った教訓、民主政権時の尖閣国有化、消費税引き上げ方針が自民政権復活と右傾化を招いた負の歴史について向き合わずに政権交代の言葉が躍っていたように思う。参院選に向かっては政策討論と一致を粘り強く進めて行く必要がある。
労働運動再生
への挑戦を!
そして何より、労働運動再生なしには、投票率向上も社会の分断克服と民主化も、生活向上もない。難しいけれど熟まず弛まず努力を重ねよう。
(世田達)

【訂正とお詫び】①「かけはし」(21年11月15日号/1頁)に掲載した「選挙結果速報」で「2021年総選挙」の速報が欠落していました。上記のように加えます。②「かけはし」(21年11月22日号/2頁)の下2段目の「②ヨーロッパ極右台頭の要因」を「②〜ヨーロッパ極右と維新との共通点と違い」に、(21年11月29日号/1頁)下から5段目の小見出しを「争点としての『ジェンダー平等』」に訂正します。(編集部)
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