11.22 怒りの不当判決!!その後の報告集会

労契法20条裁判メトロコマース事件最高裁判決から1年

 11月22日午後6時45分から、日比谷図書文化館小ホールで「労契法20条裁判メトロコマース事件最高裁判決から1年 怒りの不当判決!!その後の報告集会」が女闘労倶楽部(めとろくらぶ)の呼びかけで行われ、70人が参加した。メトロコマースを引き継ぎ女闘労倶楽部をつくり、闘いを継続、広げている熱意に対して、参加した同じような気持ちで闘う人々の熱気が伝わる集会になった。コロナ禍での差別や貧困がとりわけ女性に対して襲いかかる現状を改善しようとする意志も表明された。以下の報告は発言のみでなく、配られた資料なども紹介しながらとした。

怒りがつのる
不当差別判決
 司会を柚木康子さんが行い、最初に女闘労倶楽部(めとろくらぶ・旧東部労組メトロコマース支部)の後呂良子さんが「『最高裁判決後、その後どうなっているか』と問い合わせがきた。いっしょに闘っていけたらいいと思い、報告会を企画した」と主催者あいさつをした。
 続いて、最高裁判決日から女闘労倶楽部立ち上げまでのDVDが放映された。以下、その内容。
 非正規労働は仕事の調整弁と言われた。それに対して正規職との均等を求めて地裁、高裁と闘い全面棄却されたがあきらめないでやってきた。最高裁に向けて、「希望の持てる判決をあきらめないぞ、女性たちの力を信じたい」と6年半闘ってきたが最高裁判決は不当判決だった。住宅手当と報奨金は認めたが、退職金は認めなかった。高裁判決より後退した。原告の名前を読み間違える不誠実な裁判官たち。司法は最低だ。怒りのシュプレヒコール「最高裁は恥を知れ。あきらめないぞ」。
 判決後、「販売員の皆さんへ。住宅手当9200円が取れた」というチラシを知り合いの販売店のいるところにまいた。反響が大きかった。やめないで次につなげていく。2021年3月、女闘労倶楽部をつくった。

野党議員から
支援の発言
 次に、国会議員の宮本徹さん(共産党、衆議院議員)は「均等待遇に向けた法制化が必要だ」と発言。福島瑞穂さん(社民党、参議院議員)は「均等法20条ができ、踏み込めると思ったができなかった。住宅手当、すべての人に支給されるので、他の人に影響を与えている。同一価値労働・同一賃金の法制化を求めたが実現していない。女の人があたり前の食べていける賃金を」と訴えた。大河原まさ子さん(立憲民主党、衆議院議員)はビデオメッセージ。「共通の思いで、怒りを代表して闘われた。人間らしい働き方を保障しなければならない。働き方を改善するために、いっしょに闘っていきたい」。

最高裁判決か
ら1年経って
 女闘労倶楽部の後呂良子さんがその後の1年間の闘いを報告した。
 最高裁の後、ビラを配った。最初、なかなか反応がなかった。今、メトロの職場には派遣と外国人が多い。外国人は様々な国の人たちで、週20時間以内となっており、違う売店にいつも移動しているのでなかなか会えない。
 1月28日院内集会を開いた。その時は現役だったので退職金をもらっていない。退職になった今提訴しても旧20条でしかできない。6年半の働き方改革が反映していない。それなので、提訴するのをやめた。住宅手当と報奨金は支給させた。定年になったから、組合員がいなくなった。
 2021年2月、ある売店で働く人に会社から書類が届いた。「過去2年にさかのぼって、住宅手当・報奨金を払った。このことは外に出さないでくれ」。「コロナ禍で、生活がたいへんなので確実に支給されるまで行動しないでくれ」と言われた。そして5月17日、売店員の募集記事の中に、4月から住宅手当月9200円が支給されるとあった。会社は隠そうとしたが全国に広がった。11月10日、今年の退職者は住宅手当・報奨金を受け取った。会社を動かすことができる。拡散してほしい。
 

ますます悪く
なる格差状況
 労契法20条裁判元原告から。大阪医科薬科大学労契法20条裁判元原告のMさんがオンラインで訴えた。
 5年2カ月の裁判。途中で何度もやめようと思った。正規と非正規職の格差をなくしたいと思う。しかし、ますます悪くなっている。
 2020年10月13日、私の提訴した最高裁で不当判決が出された。アルバイト職員の原告が正職員と全く同じ時間で仕事をしていた状況で提訴。大阪地裁では敗訴、大阪高裁では賞与6割(正職員新入職員の48%。基本給80%×賞与支給率60%ほか)を勝ち取った。しかし、最高裁では不公正な比較で違う仕事とされ、長年同じ仕事をしているのに配置転換の可能性がある、アルバイト職員就業規則にも配置転換の記載があり実績もあるのに認めなかった。
 アルバイト職員の賞与は0円とし、「不支給は不合理であるとまで評価することができるものとはいえない」と、年収で正職員新入職員の55%でかまわないという極めて不当な判決。ILO提訴に向けて準備している。2月12日(土曜日)午後5時ころ、大阪人権フェスタのドキュメンタリー朗読でこの問題が取り上げられるので、ぜひ見てほしい。

日本郵便労契法
20怒りの不当判決!!その後の報告集会条元原告
 元原告の浅川さんは「郵政当局は正規職の処遇を落とすことによって、均等待遇だとし、より待遇を悪くしようとしている。JP労組もその改悪を認めてしまっている。郵政ユニオンは追加訴訟をしている。市民の力で企業をただしていかなければならない」と述べた。元原告の宇田川さんが、「159人の集団訴訟で最高裁判決を郵政全体へ波及させる。もうひとつは東日本の3人の追加訴訟と2つの闘いを行っている」ことを報告した。
 郵政ユニオンが郵政当局の不当な提案を次のように批判している。
 郵政労働契約法20条裁判の最高裁判決は、5つの手当てと休暇制度について正社員との格差が不合理であると認定し、正社員と同額の手当などの賠償金支払いを命じた。明確に格差を否定した判決だ。
 しかし、判決から1年、日本郵政グループ各社から「労働条件の見直しに関する基本的な考え方」が示された。
 ①勤続3年を超えた時点でアソシエイト社員に希望しない場合及び転換時点でスキル評価Cの場合は雇止め
 ②アソシエイト社員に有給の病気休暇が15日付与されるが、正規・非正規社員ともに病気休暇を申請できるのは暦日31日以上の療養が必要なときだけに変更
 ③正社員の夏期・冬期休暇を各3日から各2日に削減し期間雇用社員に新たに各1日付与
 ④正社員の年始勤務手当(1月2日、1月3日)について割増分を廃止(支給率を135/100→100/100に減額)したうえで期間雇用社員などの年始勤務手当を増額(正社員5000円→6500円、期間雇用社員など4000円→5200円)にする
 郵政ユニオンは正社員の労働条件を引き下げた「均等待遇」は認められない。

公務非正規
女性労働者
 非正規の現場から。瀬山紀子さん(公務非正規女性全国ネットワーク『はむねっと』)が発言した。
 「11月21日、なくそう反貧困集会に参加し、活動の広がりをつくった。公務職場は非正規が支えている。4月にウェブアンケートを行った。連日多くの声が届いた。1305件の回答があった。1年ごとの契約で、低い賃金で心身の疲弊が激しい。半数が年収200万円未満。不安定雇用。会計年度任用制度。使い捨ての働き方だ。アンケートの結果を国に伝えていく。運動のつながりをつくっていく」。

ホームヘルパ
  ー国賠訴訟
 次に、伊藤みどりさん(ホームヘルパー国賠訴訟裁判原告)が報告。
 「10年前にホームヘルパーになり2級をとった。それまで民間で働いてきたが年金が10万円に満たないということで危機感を抱いた。それから女性問題を取り組んできた。2015年、60分、90分、時給1600円が法改正で15分、30分、45分と細切れにされた。自転車で訪問先に行くのに30分ぐらいかかり、7軒受け持っている。移動時間そして突然のキャンセル。それは賃金に入っていない。拘束時間が長いのにヘルパー時間が細切れになった。藤原るかさんは公務員だった時は年収440万円だったのに、民間では200万円になった」。
 「私はいろいろな裁判をやってきたが裁判は本当にたいへんだ。今回、原告は藤原るかさんと佐藤昌子さん(以前派遣切り裁判で勝ったひと)と私。ヘルパー裁判をやった弁護士がいないので、私たちといっしょに弁護士が勉強した。2019年12月に国を提訴した。介護保険法は労基法を前提にしていない」。
 「職場の人はみんな応援してくれる。それ程ひどい実態なのだ。しかし、裁判官はそれが分かっていない。映像で見せないとダメだ。裁判で証人申請し、それを調べるのが当然のことだ。しかし、国は必要がない、事業所が問題だと主張した。裁判所が原告の意見陳述、尋問も却下するというので『忌避(きひ)宣言』をした。いま裁判は次の裁判官を決めるまで動いていない」。
 「国は月9000円の賃上げを言っているが、これは利用者負担になり、家族の負担になる。財務省交渉では財源がないから介護ヘルパーをボランティアでやれと発言した。短時間労働でも生きていける労働を保障すべきだ」。ホームヘルパー国賠請求訴訟原告団の訴えを別掲載する。
 次に、竹信三恵子さん(ジャーナリスト・和光大学名誉教授)が「非正規労働者は子育てなどがあり、シフト労働しかできず低賃金で正社員になれない。労使交渉権を持たせない。しかし実は基幹労働として社会を支えている。女性、アルバイトは『非正規でも仕方がないという偏見に基づいている』。ILOはやっている労働の中身を見ろ、と言っている」と現状を批判した。そして、「同一価値労働・同一賃金の法制度が必要だ。また、賃金だけで解決しない、教育費・住宅費問題は公的にまかなうべきだ」と指摘した。
 最後に、女闘労倶楽部の3人が今後の活動への抱負を述べた。     (M)

メトロコマース最高裁反動判決から1年。闘う非正規労働者団体がたくさん集まり、次につながる報告を行った(11.22)

資料

ホームヘルパー国賠請求訴訟原告団の訴え


 ヘルパーが安心して働ける労働環境を! 国賠訴訟にご支援・ご協力ください
私たちホームヘルパー3人と弁護団は、現在の在宅介護における「人手不足」を作っているのは「労働基準法」(移動・待機・キャンセルは賃金)も守れない「介護保険法」に原因があり、国はその責任を事業者に押し付けている【規制権限の不行使】と、国を相手どり昨年11月1日に訴訟を起こしました。
 介護保険が始まって20年。在宅ヘルパーの労働環境は良くなるどころか、訪問時間は90分が60分となり、2015年からは45分、20分と要介護高齢の方をケアする労働とは言えないような、分刻みの時間まで給付が減らされてきています。月の収入は利用者の方の入院やご逝去などで2万円~8万円単位で減り、常に不安定です。
 ケア労働は本来、人間が人間らしく生き抜くことをサポートする仕事です。「明日の朝、息をしているか分からない」と話す要介護者の一日、一カ月先、一年先の生活 を共にイメージして、最後まで生活の主人公として生きて頂ける様、精神面へのサポートも 必要とされる、やりがいのある仕事でした。主に生活(家事)援助を通して行われることか ら、「誰でもできる仕事」という評価が続いています。
 今では仕事のやりがいさえ奪われ、求人倍率 13・1倍となる程、働き手不足の現場になっています(2018年度調査)。このような状況に追いこんだのは、働いているヘルパーや事業所の責任でしょうか? 私たちは、裁判を通じて在宅ケア労働の現状だけでなく、「生産性や効率」ばかり重視する政策の下で、生活の質、豊かさが奪われた超高齢社会で良いのか?、強く問題提起したい。いま本当に瀬戸際にある危機感から国に挑みます。ご理解・ご支援よろしくお願い致します。(ホームヘルパー国賠訴訟 原告団)
 

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