12.2ストップ・リニア!訴訟報告集会

沿線住民の連携で 計画取り止めを!

 JR東海が自・公政権の力を頼んで強行に推し進めようとしているリニア中央新幹線計画は、沿線各地で住民の粘り強い抵抗に会い、その無謀さと無責任さをさらけ出しつつある。12月2日に開かれた標記の集会では、沿線各地から結集した住民がその事実をあらためて共有、計画取り止めに向け連携の一層の強化を確認した。

各地から住民
がかけつけた
 集会は参院議員会館で午後3時半から午後5時半の日程で行われた。前段での「ストップ・リニア!訴訟」第21回口頭弁論(東京地裁・市原義孝裁判長)を受けたもの。集会会場になった相当広い会議室は、この裁判の傍聴を含めて各地から駆けつけた住民で一杯になった。そして同訴訟原告団事務局からは、コロナで沿線の交流を対面で深める集まりができずにきたが、1年半ぶりに一堂に会することができた、今集会を各地の闘いを共有する機会とし、一層確信を持って闘いを進めようと呼び掛けられた。また、日本共産党の本村伸子衆院議員、武田良介、山添拓両参院議員、社民党の福島みずほ参院議員も参加し、各々、この無謀な計画の阻止に向け共に闘うと決意を述べた。
 なお同弁論では、岐阜の原告である大山勝さんが、直前に起きた斜坑工事(岐阜県瀬戸非常口ヤード)における死亡事故について、工事の安全管理におけるJR東海の杜撰さとその責任を厳しく問い質し、工事認可の取り消しを求めた。そして集会参加者には、その力のこもった陳述書が配布された。
 集会ではまず同訴訟原告団長が、JR東海の財務悪化や計画が抱える問題を取り上げた報道の増加を指摘し、推進側の弱点が一層表に出始めた、と闘いの確信を述べた。その上で同訴訟でも、裁判長が山梨実験線の現場検証に意欲を見せていることにふれ、裁判におけるJR東海の対応のいい加減さを徹底的に引き出したい、と決意を込めて語った。
 さらに弁護団が当日の口頭弁論について報告。前述の大山さんの陳述を含め、環境影響評価がまったくブラックボックス状態であることを引き続き徹底的に追及すると決意を述べた。そして山梨実験線の現場検証については、実施の方向で訴訟進行協議が進んでいることを明らかにし、裁判官をどんどん現場に引き出すことが重要、今後共その実現に努力したいと語った。

工事の危険性
さらに鮮明に
 今集会のハイライトは沿線各地からの闘いの報告。川崎(東京・神奈川連絡会)、相模原連絡会、リニア・市民ネット山梨、静岡(電子データでの映像報告)、飯田リニアを考える会、岐阜、愛知、リニア・市民ネット大阪と、沿線8ヵ所から現に起きている工事の問題が具体的に明らかにされ、JR東海はもちろん当該自治体に対しても住民がさまざまに働きかけを続けていることが報告された。
 また東京外環道路に反対する住民のネットワークである「外環ネット」も駆けつけ、同工事で起きた陥没事故が住民に重大な生活被害を引き起こしていることを報告した。さらに同工事が低周波振動により健康被害も引き起こし、それが今表面化し始めていることも付け加えられた。
 この陥没事故および低周波振動の問題は、リニア中央新幹線工事で大々的に採用されている大深度地下シールド掘進が内包する重大問題として、リニアに反対する住民がかねてから指摘してきた問題だ。外環道路工事で起きている問題はリニア新幹線工事が内包する危険性をあらためて突き付けるものであり、問題を広く伝える点でも、ふたつの運動の連携がさらに必要になっていることを印象づけた。

無責任極める
推進派の主張
 時間の関係で報告自体は各7分と制限されたが、参加者には各地域の充実した資料が配布され、運動の共有と各地の連携に力を添えた。特に長野の資料は、残土処理、工事用道路の地滑り、事故など、JR東海がさまざまな障害に突き当たりつつも、それをごまかし工事強行に走っていることを中心に、県内各地の状況を詳細に明らかにしていた。そして口頭の報告では、工事が現実にはべた遅れになり2027年完成はとうてい不可能、自治体首長たちのリニア歓迎とは裏腹に、地元の世論調査でもリニアに「期待しない」が68%に達している(長野県世論調査協会)ことが強調された。
 他にも愛知から、今まであまり知られていなかった問題が報告された。県内の大深度トンネルとなる17㎞のうち、戦後盛んに掘られた亜炭坑地帯を通る部分があるというのだ。しかもこの旧亜炭坑は、老朽化が激しく今もあちこちで陥没を起こしているとして、その様子が写真で示された。振動を含めた工事による陥没発生の危険が大いに危惧される事態だ。
 ところがJR東海はこの地域で十分なボーリング調査をしていないという。大深度工事は地表に影響を与えない、という建前が前述の外環道路事故で完全に否定されている状況の中で、JR東海のこの無責任さ、現実否認は許されるものではない、愛知の報告者はこう力を込めた。
 この日の集会は、沿線各地の住民がそれぞれの行動を通して、この計画の問題点を具体的に表に引き出していることを明らかにし、それらを全体で共有する貴重な場となった。あわせてJR東海を先頭とした推進側がそれらの問題に向き合わず、情報隠しとごまかしに終始していることも共通と確認され、リニア中央新幹線計画の無責任さ、無謀さ、愚かしさを今さらながらに浮き彫りにした。
 すでに見たように、この計画が果たして完成にこぎ着けることができるかどうかも不透明になっている。今や一刻も早い計画の取り止めこそが必要だ。各地の住民はこの確信をさらに強めて会場を後にした。
        (神谷)

「リニア中央新幹線」はいらない!院内集会(12.2)

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