投稿 11.25「人間の鎖」で石木ダム建設反対

不要なダムで集落と自然壊すな
11月25日、長崎県川棚町川原に結集
K・K

長崎県はじめ
全国各地から
 長崎県川棚町に国などが予定している石木ダムの建設を阻止しようと11月25日、予定地の同町川原(こうばる)地区で、長崎県ほか全国各地から230人が集まって人間の鎖を作り、ダム反対の決意を示した。住民や支援者でつくる実行委員会が主催。集会では「川原の集落を水の底には沈めません」といった「川原まもりびと宣言」が高らかに発せられた。
 朝10時半から始まった集会は、リレートークで口火を切った。千葉県から駆けつけた「水問題と八ッ場ダムを考える会」の中台ひで子さんや地元の石木川まもり隊代表の松本美智恵さんらが仲間からのメッセージとカンパを渡すとともに「ここ(川原)に来ると、幸せを追求する権利を守るため、半世紀にわたる反対運動をしているみなさんに元気づけられ、弱気も吹き飛んでしまう」「私たちが集まってダム反対の声を上げることが力になります。これから2回3回と集会を続けていくことが力になります」などとあいさつした。
 東京都八王子市にある高尾山の自然を守ろうと闘っている「虔十(けんじゅう)の会」代表の坂田昌子さんは、「圏央道(首都圏中央連絡自動車道)の工事で、強制代執行により高尾山の自然を守れなかったが、必ず再生させたい」と振り返りながら「川や樹木を失うことの怖さ、カネに換算できない自然とのやり取りという文化が失われてゆくことの怖さを知った。川原にダムを造らせたくない。これは自分たちの問題だ」と訴えた。

必要なのは
「流域治水」
 この後、この度の総選挙の比例九州で当選した地元の立憲民主党の山田、末次衆院議員らが激励あいさつをした。
 この間全国のダム反対運動に関わってきた嘉田由紀子参院議員は「ダムは止められます。私は滋賀県知事時代に県営・国営の計3つのダム建設を中止・凍結出来ました。50年以上たっても出来ていないのは石木ダムが必要ないダムだからです」と前置き。無駄遣いをやめさせようと訴えた。
 さらに、昨年発生した熊本県の球磨川流域氾濫で50人の犠牲者を出したことから上流の川辺川ダムの必要性が浮上していることに関連し、災害現場を視察し犠牲者が出た時間や国土交通省のデータなどで検証した結果、「例えダムがあっても48人の命は残念ながら救えなかった。今の気候変動による豪雨災害については河川の制御だけではなく、流れや流域の小水路などまで含めた『流域治水』が必要なのです」と訴えた。
 リレートーク後、参加者がピンクのビニールテープの端を持って人間の鎖をつくり「川原まもり人宣言」を叫んだ。宣言の内容は①私たちは川原を守ります②川原の里山を、石木川の清流を子どもたちに引き渡します③川原の集落を水の底には沈めません④川原の人びとを、その暮らしを私たちは守ります。力を合わせて守りましょう、となっている。

座り込む住民
を全体で激励
 集会後、参加者は石伝いで石木川を越え、住民らが座り込みをしているダム迂回の県道付け替え道路建設現場へ行進し、毎日座り込みを続けている住民らを激励交流した。現場に至る住民が普段使う生活道路の周辺は多くの樹木が切り倒されており、参加者からは「殺風景な山になっていく」「なぎ倒すように樹木を切っている」「山や樹木がかわいそう」といった声が聞かれた。
            

解説 石木ダム計画と反対闘争

 石木ダムは国土交通省と長崎県、佐世保市が同県川棚町川原(こうばる)地区に計画している。同町を貫く川棚川の支流石木川に、堰堤の高さ55・4㍍、長さ235㍍、湛水面積34㌶、有効貯水容量518万立法㍍を予定。総事業費455億円(2019年再評価による)。
 その目的は佐世保市の水需要に応えるためとしているが、佐世保市の人口は減っており水は十分に賄われている。むしろ老朽化した上水道設備による漏水を防ぐことが急務とされている。また、計画していた工業団地のために必要ともされたが、計画は頓挫し、テーマパークのハウステンボスが進出、今も水は十分に足りている。
 次いで持ち出したのが治水。しかし、石木川は川棚川の最下流の支流であり目と鼻の先は大村湾、それに見た人は誰もが「小川」と呼ぶ程度の流れで、流域面積も川棚川全体の1割程度しかない。今年8月の豪雨は「100年に1度あるかもしれない」降水量を上回ったが、川棚川は無事だった。
 全体的にその必要性が疑問視されており、今や「ただ造ることが目的のダム」と化している。
 県は住民の強い反対意思にもかかわらず、2年前に予定地を強制収用で法的に買収している。川原地区の13戸の住民は「絶対反対」の姿勢を崩さず、強制収用による買収費の受け取りを拒否しているため法務局に供託されている。現住人家に対する強制代執行は三里塚闘争における大木よねさん宅に対するもの以外にはないのだが県は「強制代執行も辞さない」と住民に脅しかけている。
 住民は裁判闘争も行いながら、農地を耕し生活を続けている一方、中村法道・長崎県知事に「工事を一時止めて真摯な話し合いしよう」と求めている。知事はこの夏話し合い日の1日だけ工事を止めるから県の指定した形で話し合いに応じろと言い、しかしダム工事が遅延しないよう工事を止めることはできないと工事を強行し続けている。これでは話し合いにならないと住民は記者会見で述べている。
 粘り強い川原地区住民の闘いに、長崎県内はもとより、佐賀や福岡など九州各県のほか全国に支援と共感の輪が広がりを見せている。まったく無駄な公共事業・石木ダム建設をやめさせよう。

「石木ダム」関連年表(太字は訴訟関係)

1962年    県が川棚町や地元に無断で測量。住民らの抗議を受け中止
  74年12月 国が石木ダムへの補助金決定。住民は石木ダム絶対反対同
         盟を結成
  82年 5月 県、機動隊を導入し強制測量
2009年11月 県、事業を申請
  10年 3月 県道の付け替え工事が着工 住民の座り込み始まる
  14年 9月 第一次収用裁決申請
  18年 7月 長崎地裁 事業認定取消の訴え認めず(住民は控訴)
  19年 9月 県、全ての土地を強制収用(所有権は国)
  20年11月 強制収用による明け渡し期限が来るが、住民は拒否し住み
         続ける
  21年 1月 座り込み1000回目。
     10月 福岡高裁が工事差し止めの訴えを棄却。住民は上告

週刊かけはし

購読料
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009  新時代社