12.4仙台PS操業差し止め報告集会

石炭火力から地域と地球を守る
「いったい日本は何をやってるんだ」

多くの人びとが原告団

 12月4日開催された仙台PS(パワーステーション)操業差し止め訴訟報告集会は、原告団を始め多数の参加者のなか中山さんの司会で開催されました。主催者を代表し水戸部原告団副団長は、裁判を振り返りながら「脱石炭という国際的な流れにあっても仙台PSは国の政策を拠り所に石炭火力を見直す考えはない。裁判は終わったが闘いはこれから」とあいさつしました。
 基調講演は「石炭火力を2030年までにゼロに」をテーマに平田仁子さん(気候ネットワーク国際ディレクター/理事)のお話。平田さんは「仙台の運動は多くの人が参加し、超党派での動きが拡がり、メディアが取り上げ『石炭火力発電所問題』が地元の話題になり、多数の人が原告団に加わった。仙台の運動は、全国の人々の気付きと励みに繋がった」と、運動をふりかえった。環境のノーベル賞と言われる「ゴールドマン環境賞」の受賞は「これは地域の皆さんが動き、沢山の発電所の計画を中止させた皆さんに贈られたものだ」と話した。
 そして「石炭火力問題を取り組むきっかけは、福島の原発事故が契機。政府は早い段階から石炭火力に舵を切りアセスの迅速化や電源の入札など、石炭火力発電のゴーサインになるという危機感から取り組みを始めた。今の気候危機の状況をあらためて確認し、私たちはどうしていくのかを話していきたい」と講演の意味に触れました。

2030年までに大きな変化

 CОP26以後「ネットゼロ宣言」の国が135カ国に拡大し、世界のCO2排出量の88%がカバーされたが「それでも1・5℃目標とは大きく乖離して」いる。30年までCO2排出量を80%削減する必要があり、そのために先進国は石炭火力ゼロが絶対的な目標になる。
 そして、COP26の成果として ①1・5℃の気温上昇を目指すことを共有 ②2022年までに2030年目標を見直し強化する ③クリーンな電力の普及を。石炭火力削減・化石燃料補助金の廃止 ④途上国支援の資金は25年に倍増。という4点を指摘した。この合意は1・5℃実現のギリギリの内容だが「政府発表資料」では①〜③について触れていない。一体、日本政府はどうするのか? と疑問を呈した。
 世界の中で日本の現状は「気候変動対策評価65国中45位」。「石炭火力削減への日本評価」は先進国で最下位。国の計画(第6次エネルギー基本計画)は30年時点で41%が化石燃料に依存など地球温暖化に対する危機感が見えてこない。世界から「日本は何やってんですか?」と見られています。基本計画の問題点は1・5℃目標との不整合、限定的な省エネ、原発の問題に真正面から向き合っていない。思考停止状態になっている。そして、解決・整合性を保つために「技術革新に前のめり」になっていると指摘しました。
 165基が運転中・10基が計画・建設中という現状をみれば、本当に石炭火力廃止に進むのか大いに疑問です。政府方針は「水素、アンモニアの混焼容認」など「抜け穴」だらけ。中国新聞の報道では「中国地方の石炭火力28基、休廃止計画ゼロ、混焼推進は70%超」と報道されている。政府は30年にむけ「全廃」どころか新規建設をも容認すると言っています。脱炭素に向けた施策が備わっていないために30年までほとんど減らない可能性が高いと平田さんは指摘しました。50年ネットゼロにむけた基本的な考え方として(1)科学に基づくこと(1・5℃目標の達成に必要な水準とのギャップを埋めること) (2)化石燃料依存からの脱却を図ること (3)弱い立場にある人への支援と一体的に進めること (4)参加・対話・包摂を育み、選びたい未来を実現することの4点をあげました。そして、脱炭素社会へ新しい仕事と雇用をつくりだす「公正な移行」を訴え「いろいろ困難があるかもしれないが、地球温暖化に対する取り組みをやめる理由は全くない」「地域の皆さんが繋がって石炭火力廃止が進んだ。1・5℃を超えると人々が生きて行くことが難しくなるのでは。やるやらない、できるできないの話ではない」「常識が変わっていく時であり変化を生み出す力を後押しし、力を緩めず次なるチャレンジに向かいましょう。仲間を増やし元気に楽しく頑張りましょう!」と講演を結んだ。

仙台の裁判・5つの特徴

 弁護団の横田弁護士から「裁判の特徴」として5点にわたって報告された。
 ①気候変動を差し止めの理由にしたこと。②専門委員が裁判に関与したこと。③健康被害のシミュレーションを中心に主張、立証を行ったこと。④被告社長の尋問が行われたこと。⑤判決で「被告の環境コミュニケーション不足」が指摘されたことを挙げました。
 そして「運転差し止め」はかなりハードルが高いものであり、止めるためには政治の力が必要であり、市民がしっかりと政治に関与することが重要だと指摘しました。
 続いて長谷川原告団長は、建設計画を聞き最初に思ったのは「被災地に火力発電所を建設することが許されるのか?」の自問が出発だった。石炭火力問題と地球温暖化を考えるなかで、仙台の運動が最初から蒲生干潟を守る会と一緒にやってきたのが特徴です。関電100%出資会社による仙台PSは11・2万kw(アセス逃れ!)と小規模だが、年間67・2万t(CO2排出)=19・3万所帯分。仙台市は53・3万所帯だから一世帯当たりCO2排出は38・2%増加し、県全体の温室効果ガス排出量の3%に相当する。だが日本独自(インチキ!)の「間接排出量勘定」で、電気は首都圏売電のため計算上は「東京で発生したCO2」とみなす。つまり「電気は東京へ!儲けは関西へ!汚染は仙台へ」なのです。地元には健康被害、環境・生態系に悪影響をもたらす環境汚染物質だけ。原告124人による「仙台PS(パワーステーション)の運転差し止め」の提訴は17年9月27日でした。裁判の運動の意義は、石炭火力問題への関心を高め2基目以降の石炭火力計画を止めたこと。運動が全国のモデルとなり神戸、横須賀の裁判の引き金となった。そして石炭火力の「訴訟リスク」を顕在化させたことなどです。
 今後は「気候危機との闘いに終わりはない」「地域の環境くらしを守る闘いにも終わりはない」「仙台PSを早期に操業停止に追い込む」ことを目指していくと報告しました。

闘いの現場から

神戸裁判報告「石炭火力野放し!ゼロを求める!」

 「神戸の石炭火力発電を考える会」の久保はるかさんは「既設、新設の4基合計で270万kwの巨大石炭火力発電所が灘浜に出現する」とし、立地地域の環境について「住宅から400m、3㎞以内に保育所、幼稚園、小中学校(17校)が多数。もともと深刻な大気汚染に悩まされていた地域で行政も含め改善途上にある地域で、新設により汚染物質が大幅増(Sоx70%増、Nоx60%増、煤塵4・5倍)。「最悪の立地に、最悪の燃料」が神戸製鋼石炭火力の問題点と指摘。現在の神戸市のCO2年間排出量1200万tで新設+既設1400万t神戸市の年間排出量を上回る。大量の環境汚染物質が放出され地域環境や地球の温室効果に繋がると報告した。既設の2基は「阪神淡路大震災からの復興」を錦の御旗に建設され反対しずらい雰囲気があり反対運動は大きく広がらなかった。仙台と同じく「復旧」のドサクサ紛れにです。17年に「神戸の石炭火力を考える会」を立ち上げ、最初は500人の市民が調停申請人となって「公害調停」を申し立てました。しかし「手続きの非公表」「調停中も神戸製鋼は着実に計画を進める」という限界もあり訴訟に至りました。
 神戸の闘いは「神戸製鋼、関西電力」を相手取った「建設・稼働差し止め」の民事訴訟と、「国」を被告とする「環境アセス評価書確定通知取り消し」「CO2排出規制がない事の違法確認」を求める「行政訴訟」の2つです。行政訴訟は「温暖化対策の実施を国に求める」日本で初めての行政訴訟です。3月の大阪地裁(行政訴訟)の「判決」にPМ2・5健康影響評価がないことは「違法ではない」「温暖化については争う資格がない」としたことに、地元神戸新聞の社説は「PМ2・5による被害は世界的問題になっている。司法が踏み込んだ判断をしなかったことは残念」とし、原告適格を認めず却下したことに「門前払いの判決は国民が疑問を抱く」「CO2排出は気候変動による災害の原因になり『公害』と言える段階」と指摘した。神戸の裁判も控訴審に進んでいます。訴訟を通じて社会に訴えかけることも大事と考えている。皆さん一緒に頑張っていきましょう! と結んだ。

横須賀裁判報告「国は石炭火力の新設を止めて!」

 東京湾周辺に4カ所6基の石炭火力発電所計画が明らかになり、その後千葉の3カ所が「中止」になり、今は横須賀火力発電所2基が建設中という状況です。横須賀は東電・中部電力が出資し合計130万kw、年間360万tの石炭を燃焼する。運転開始予定は23~24年。横須賀石炭訴訟は「国」を被告とする行政訴訟で計画地近隣の漁師、未成年も含む48名の原告団が提訴した。
 主な理由と争点は「確定通知」は「評価書」の瑕疵を見逃しているとして① アセス手続き不履行(配慮書でCO2の排出量が少ない発電方法の比較検討なし)②比較のゴマカシ・すり替え(環境負荷が低減できるとして「アセス簡略化」の合理化ガイドラインを不法適用)③その結果、環境への配慮が不十分(健康被害、漁業被害、気象災害熱中症被害、パリ協定/国の削減目標が未達成のおそれ 国際公約不履行)等などを争点とした。環境アセスメントは「手続き」を決めた法律であり「ベスト追求型」の法だ。だから「配慮書」において複数案を検討することが「アセス制度の核心」。基準では見えない環境影響が可能な範囲で回避・低減されるものです。「石炭ありき」の配慮書で「複数案なし」で国が石炭を評価しているとの理由は許されるものではない。
 裁判の現状は被告「国」は、処分性、原告適格の欠如を理由に門前払いを主張していたが「反論」を始めています。(21年1月に「横須賀市ゼロカーボンシティー宣言」が出された)いま、建設工事が進んでいるが環境アセスの「確定通知」が建設工事の前提になっている。つまり「確定通知」の取り消しによって建設工事・運転の法的前提が失われ「違法」になるということです。報告は以上です。
 仙台・神戸・横須賀の裁判の現状と報告は、世界的な視点でみると重要な闘いであることを各々に表わしています。地球温暖化の元凶である石炭火力を止める闘い。現地で声を挙げている仲間との支援・連帯の行動が大きく求められています。

各団体からの
連帯の挨拶
 宮沢民医連会長からは、患者を生活の中で捉えることを基本にしてきた、相次ぐ火力発電所の建設に民医連内で論議し裁判にも一員として関わってきた。「環境問題を考える会」を立ち上げ今後とも連携を取って頑張りたい、との発言が行われた。
 冬木みやぎ生協理事長からは、「石炭火力問題を生協として取り組み6000筆を超す署名集約を行った。PS問題で生協学習会を130人規模で実施。過去にエネルギーとしての石炭を一旦捨て去った環境問題を含め一体として政府は考えていない。生命と暮らしを守る生協として一緒になって頑張る」との発言。
 鈴木あいコープ理事は、あいコープは一万人の組合員を持つ宅配専門の生協。設立から40年環境問題に積極的に取り組んでいる。約2千筆の署名を集め『何が起きている?石炭火力発電所』の学習会や『におい110番』への参加、考える会と共に裁判官へ『操業差し止め判決』を要請する〈裁判官へハガキを出そう!〉運動を行った。住民運動は抑止力、これからも社会問題に対しアクションを行っていく」と決意。
 池澤FFFSendaiからは、未来のための金曜日(FFFの意味)はグレタさんのストライキをきっかけに全世界に広がった。判決後の集会で、運動を続けるという力強いアピールを聞いた。21年2月FFFの『STOP脱石炭全国アクション』を蒲生で一緒に学習会を開いた。より弱い立場の人により多くの被害が押し付けられる。私達も頑張ります、一緒に頑張りましょう!」と呼びかけられた。
*地元紙にCOP26(グラスゴー)に参加したFFFSendaiの方が報道されました
 集会の最後に千葉副団長から閉会のあいさつが行われた。会場・ZООМ参加者の皆さんへの御礼と基調講演の平田さんの報告を聞いてあらためて意を強くし、多くの報告を受け有意義な報告会となったことに各団体への感謝と共に「私たちの闘いも仙台PSを止めるまで頑張ります。どうも有難うございました」と締め括りました。(朝田)

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