12.10 22けんり春闘発足・学習集会

幅広い連帯追求し、公正公平な社会を取り戻そう

春闘の
開始を確認
 12月10日午後6時半から、文京区民センターで22けんり春闘発足・学習集会が開催され、各労組代表など90人(主催者発表)が結集、けんり春闘としての22春闘開始を確認した。主催は、全労協、全港湾、全造船関東地協、民間中小労組懇談会、大阪ユニオンネットに結集する労働組合で構成された同春闘全国実行委員会。
 集会は2部構成。まず第1部で春闘方針が採択され、その後第2部として、ジャーナリストの竹信美恵子さんが講演した。テーマは「コロナ禍の非正規労働者 女性・若者の状況と労働組合」。以下で紹介する春闘方針と密接につながる課題であり、参加者にとっては貴重な学習になった。

 春闘方針を採択

 第1部は、22けんり春闘共同代表のひとりである民間中小労組懇談会代表の平賀雄次郎さんのあいさつで始まった。平賀さんはまず、生活苦が広がる中で22春闘が重要な春闘になると強調した。特に連合が4%賃上げを掲げたものの、労働者全体の賃金相場にそれが反映することは危ういとして、大手労組が昨年妥結内容を公表しない動きがあったことを例に挙げた。そしてそのような形で彼らが一層企業内に閉じこもり社会的責任に背を向ける中では、闘う労組の闘い方が問われる、地域共闘の推進に全力を挙げ、同一労働同一賃金を強く主張しつつ実のある賃上げに繋げようと訴えた。
 ついで同春闘事務局長の中岡基明さんが「誰ひとり取り残されない社会、8時間働けば暮らせる社会へ向けて全力を挙げよう!」「8時間働けば生活できる賃上げを獲得しよう!」「政治を労働者市民の手に取り戻すために闘おう!」との標題の下で春闘方針を提起した。
 そこでの強調点はまず「誰ひとり取り残さない」であり、非正規労働者、外国人労働者、フリーランスで働く労働者の生活改善要求を課題とし、全国一律時給1500円要求の全国的社会運動化への挑戦が訴えられた。第2点は、争議件数の激減状況に立ち向かう必要であり、あらためて積極的にストライキを配置して闘いを構えることが必要だと呼び掛けられた。第3点は積極的な共闘追求であり、連合や全労連などの枠を超えて共同行動に挑戦したいと決意が述べられ、各地域でもそこに積極的な取り組みを行うよう呼び掛けられた。
 その上で以下のサブスローガンが提案された。
○労働者の生活とけんりを守ろう!(どこでも誰でも時給1500円、月額25万円以上の賃金保証を、誰でも2万5千円以上の賃金引き上げを、150円/時以上の引き上げを、など)
○公務・公共サービス労働者、会計年度任用職員の雇用保障と処遇改善を!
○外国人労働者に労働基本権と安心して生活できる環境を!
○9条改憲阻止!沖縄辺野古新基地建設阻止!
○原発再稼働阻止!老朽原発を稼動させるな!
○すべての争議に勝利しよう!
 さらに、コロナ生活相談との連携協力や最低賃金を中心とした春期全国キャンペーンを含めて、行動方針と組織体制が提起された。行動の具体化はさらに煮詰められるが、特に経団連抗議行動として来年2月18日(金)のけんり総行動、同3月6日予定のマーチ・イン・マーチは当面確定している。
 これらの提起は、会場からの改憲の危険にしっかり取り組む必要があるとの補強意見を含めて、満場の拍手で採択された。

社会的セーフティネット
としての労働組合を
 第2部の竹信さんはまず、端的に非正規労働者として取り残される人々が出るのはなぜか、という問いかけから講演に入り、日本の公的セーフティネットがそもそも非正規労働者を対象にしない歪んで脆弱な設計になっていること、またこの層には労働組合もセーフティネットになっていないことを、具体的な資料を示しつつ明らかにした。そしてこの欠陥をコロナが直撃し、特に女性の苦境として表に引き出したとして、いくつかの事例に沿って解説を加えた。
 その上で、これらの苦境を前に厚労省はあわててドロ縄的な対策を打ち出したものの、現行セーフティネットの歪み、この間の非正規化という労働政策との矛盾等からさまざまな問題が噴出した、と続けた。コロナ禍が突きつけたその一例が「休業手当」が支給されないという問題、あるいはコロナ発病時に健康保険から給付される「傷病手当」が、非正規労働者の多くが加入する国民健康保険では対象外になっている問題。
 そして「休業手当」問題では、雇用主にすり込まれている「便利に切るための労働力」との非正規雇用認識、さらに「シフト」制が雇用責任回避の構造になっていること、が問題の根源にあると指摘し、そのような観点で雇用政策を進めてきた厚労省の矛盾が手当不支給を広げた、と問題の構造を明らかにした。
 その上で竹信さんは特に女性に集中する困難をいくつかの例を示しながら取り上げ、社会的主流層に深くすり込まれている「夫=セーフティネット」認識を何としても打破し、普遍的な公的セーフティネットの確立へと進めなければならない、と強調した。
 そして結論的に、コロナ後の働き方としてこれらの問題に正面から取り組まなければならないと提起し、そこでは労働組合も変わらなければならない、と強調した。たとえば非正規労働者の「休業手当」では、労働組合の介入で支給につながった事例も紹介しつつ、従来の労働者概念をもっと広げ多様化し、企業を超えた広いネットワークを作りながら、NPOなどとも連携して労働組合がまさに社会的セーフティネットという本来の機能を回復してもらいたいと結んだ。

 まさに「誰をも取り残さない」を課題にするに当たっての前提となる認識を提供するこの講演を受けて、最後に東水労、全国一般東京南部、全統一労組ピードア分会の代表が22けんり春闘に向けた決意表明に立った。
 東水労からは、業務転換と称する民間委託が進められていることに対し、危機管理も含めて安心安全なライフラインを守る必要を都民にも訴えて、委託先への組織拡大を進めつつ、持続可能な公共サービス確立の闘いを貫徹する、と決意が述べられた。
 全国一般東京南部からは、民間中小の組織率が1%でしかない実情への危機感が表明され、労組をどうやって広く知らせるかにもっと意識的になる必要があると強調された。。そして、中小に共通する低賃金、低処遇、ハラスメントの3点セットに具体的に対抗する闘いの展開を訴えた。
 全統一労組ピードア分会はホテルで働くフィリピン人労働者の労組だが、昨年全員が解雇された(日本人労働者は解雇されていない)。休業給付金不支給に対し労組を結成しその支払いを行わせたことに対する仕打ちだった。労働者が権利を主張し行使することに対する外国人差別も加わった無法な攻撃であり、彼らは団結して現在も闘っている。発言に立った代表は「希望をもって働いてきたが解雇された。会社に人を潰す権利などない。奪われた権利を取り戻すために全力で闘う」と力強く決意を述べた。

労働組合に問わ
れていること
 最後に22けんり春闘全国実行委員会共同代表の渡邉洋全労協議長が、闘いのすそ野を広げる視点をもって、労働者の総行動めざしさまざまな団体や労組への働きかけを積み重ねよう、と集会を集約、全体の団結ガンバロウで22けんり春闘への決意を確認し合った。
 22けんり春闘が第1に掲げた「誰をも取り残さない」闘いは、今現在、そしてこれからの時代より切実な課題であり続ける。短期的にはコロナ禍が残し癒えることのない生活の傷があり、その上にインフレの足音が近づいている。長期的には、脱炭素という全人類的課題が否応なく産業転換を迫っている。それらは支配階級に任せている限り確実に、多くの労働者民衆を取り残すことに、さらにより一層の破局的事態への転落になるからだ。
 まさに労働組合がそうさせないための武器にならなければならない。そしてそのためにこそ労働組合も、幅広い連帯と新たな団結のために自ら変わらなければならない。そこでは必然的に、公正な産業転換の要求を含めて、積極的に自らどのような社会を求めるのかを訴えることも不可欠になるだろう。22けんり春闘と連帯した闘いを積極的に展開しつつ、労働組合の脱皮に向けた模索を共にしよう。       (神谷)     

 

週刊かけはし

購読料
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009  新時代社