福島第1原発 過酷事故から11年

東電・国の無責任は変わらない
再稼働やめろ! 避難者の差別分断許すな!

棄民政策そのものだ

 自公政権は地球温暖化を口実として原発利用を継続し、再稼働政策をとっている。それは無責任極まる政策である。2011年福島第一原発過酷事故は、東京電力が事故対策をサボタージュし、旧原子力安全保安院がそれを放置した、その結果として事故を惹起させた。そして福島原発事故を生じさせた原因たる、東京電力・国の無責任・隠蔽体質は事故後の廃炉・復興対策へと引き継がれ、国・東京電力の無責任、隠蔽体質は温存助長されたのである。現行、国の事故処理対策は、被害が起きても損害賠償を放棄し、被害者を置き去りにするする棄民政策そのものなのである。現在国・東京電力は「復興と廃炉の両立」として、対策を進めている。その結果福島においては、過酷事故発による固有の事態のみならず、原発利用により生じる事態も併存しているのである。

責任放棄と差別・分断


 2007年に発生した中越沖地震により、東京電力柏崎・刈羽原発は「黒煙が上る火災事故を発生」させた。震源は原発の目前まで伸びた活断層だった。事故処理の渦中であった東京電力は経費削減を目的に津波対策をサボタージュした。また国は自ら作成した「安全神話」に取り込まれ、災害対策を怠っていた。それは県原子力災害対策センター(オフサイトセンター)が機能不全に陥った事態が示している。この施設は1999年JCO東海村核燃料加工施設で発生した臨界事故を契機に原子力災害に備え建設された。この施設に外部から入る空気に対する放射性物質除去機能を備えなかったためであった。何回か町・東京電力が防災訓練をした経験はあっても、想定は精々ボヤ(小規模失火)程度であり原発からの放射性物質流出ではなかったことも同様にまさに「仏作って魂入れず」的事態だったのである。
 2011年3月東日本を襲った東日本太平洋沖地震による津波により東京電力福島第一原子力発電所に事故が発生した。運転中だった3基(1~3)の原子炉核燃料が冷却不能となり燃料が熔けるメルトダウン状態に陥った。チェルノブイリ事故に匹敵する過酷事故であった。4号基も例外ではなかった。運転停止中であったが、爆発事故が発生し、燃料プール中にあった使用済み核燃料が冷却不能に陥る危機が迫ったのである。
 放射性物質による汚染は、双葉郡のみならず県境を越えて拡大し、過酷事故は双葉郡住民はもとより、県内16万人(民友新聞webより)の住民が、避難を強いられた。そして、多くの人命が避難の渦中で失われた。また生活環境の激変により、望みを失った、転居中に亡くなった。…こうした方々もまた原発事故による被害者なのである。原発事故による人命への打撃は未だ継続中なのである。国・東京電力には加害者責任が存在している。彼らはそれを放棄しつづけている。避難者設定は放射性物質汚染の実態と住民の事情と乖離していた。見逃された人たちは不当にも「自主避難者」と命名され差別された。その事態により生じた損害の補填は保障ではなく賠償が本質的性格である。
 国・東京電力には損害賠償義務が存在するのである。しかし国・東京電力は被災者を差別選別し、あまつさえ、県は「自主避難者」に対して避難先からの退去を迫り、家賃値上げ、訴訟等の退去の強要まで実行したのである。国・東京電力による福島原発事故に対する責任の放棄は糺されなければならない。

加害責任を問う裁判


 その意味合いからも現在行われている福島原発事故に対する東京電力3幹部の責任を問う裁判は重要である。裁判は検察庁による起訴放棄を検察審査会が二度覆し強制起訴として勝ち取られた。東京地方裁判所は公判の傍聴に駆け付けた傍聴人に対して、ボディータッチによる身体検査まで行う不当な規制を実施した。そのあげく、検察の役割の指定弁護団による現場検証の要求をも拒否し、下した判決は被告3人全員無罪であった。指定弁護団は「判決は不当」と控訴し、控訴審に向けて、東京高裁に対して、一審が拒否した現場検証を要求している。裁判官は現場検証に対する判断を次回に持ち越すと述べた。2回目の公判は2月9日である。次回公判までの間に何をするのか、そして公判への参加もまた重要である。2月公判傍聴行動に参加」しよう。
 加害者責任の放棄は、避難者への仕打ちに留まらず、原発事故に対する処置すべての領域に波及している。その第1として損害賠償問題が存在する。原発事故に対する「被害者の損害を迅速に弁済する」との位置づけから「裁判外紛争手続き(ADR)」との措置が採択された。しかし東京電力による「ADR」が提示する「斡旋案の拒否」が相次ぎ斡旋案は東京電力の意向を忖度するものに変質していった。しかし東京電力はそれさえも拒否する事態が発生しているのである。また賠償額の値切りは「除染廃棄物貯蔵施設」問題に価格評価方式変更による土地価格の「不当な低評価」として発生している。
 第2に「廃炉・復興」問題がある。」現在国は「廃炉・復興の両立」とする政策をとっている。しかしその内実は住民を犠牲とする「復興」及び実態のない「廃炉」に他ならない。先ず「復興」だが、復興を名目に現在国は原発事故避難者に対して「帰還困難区域」を再編すると共に「帰還政策」をとっている。県もそれに追随している。

汚染水を海に流すな


 以下は11・13「汚染水を海に流すな!海といのちをまもる集い」(主催「これ以上海を汚すな市民会議」)の場における双葉郡住民の訴えである。ここに来て発言した結果、何か言われるか心配です。「原発建設のため立ち退き、転出先も原発事故による避難そして帰還と、5世代にわたり生活が翻弄された」「私たちのこうした苦しみから解放させて欲しい。市民の意識が未来を決定する」。「町は帰ったら!と誘う。ピカピカの新しい校舎、大熊の梨はおいしい。帰りたい」「しかし帰れない。放射能が怖い」(同市民会議は毎月13日「汚染水海洋投棄反対」のスタンディング実施を全世界に呼びかけている)。
 避難者は犠牲者である。その居住は自ら決定する権利がある。そして国・東京電力には賠償する義務が存在する。それは「保障」ではないのである。国・東京電力は「復興」の名を借りて、被災者への賠償義務を投げ出し、権利を踏みにじっているのである。
 次に「廃炉」だが、東京電力は冷却期間を設けない「即時廃炉」方針により福島第一原発において工事を施工している。その結果多くの「被曝労働者」を発生させているのだ。「原子力資料情報室通信570号」(原子力資料情報室発行)に掲載された2020年度労働者被曝データによると、18商業用原子炉施設18中被曝者総数が5千人を超える施設が4であり、うち福島第一のみが1万人超となっていることを示している。
 また即時廃炉方針は、汚染水海洋投棄強行問題も発生させている。放射性物質を環境から隔離するのは加害企業=東京電力及び国に課せられている第一義的義務なのである。しかし彼らはいわゆる「廃炉と事故処理の同時遂行」施策を採用し、その結果汚染水対策はおろそかとなり、放射性物質の垂れ流しは止まっていないと言わなければならない。

「凍土遮水壁」の問題点


 そもそも東京電力・国が汚染水対策として採用している「凍土遮水壁」は「恒久」的な対策ではなく、3年程度限定の極短期対策でしかない。彼らは「カッチカチ」に凍らせる!とまで強弁し凍土遮水工事を強行した。その結果、凍土遮水壁は一部に2021年8月以降温度上昇が発生。11月18日には13・4度にまで上昇し、原因は未だ特定不明である。
 小野明「東電廃炉推進カンパニー」最高責任者は11月20日いわき市「廃炉・汚染水・処理水対策評議会」で「将来的に凍土遮水壁の使用継続は議論が開始されたばかり」と発言した(2021・12/3福島民報)。
 また凍土遮水壁については、「東京電力・国は地下水・地質の実態把握を軽視している」として「100年耐える恒久的遮水壁を造成するべき」(政経東北2011年11月号)、との提言も発せられた。
 提言は「福島第一原発地質・地下水問題研究グループ」が発し「地下水の通り道=地層の位置の正確さに欠ける」とも指摘している。彼らは、「汚染水放流について「廃炉の着実な進行のため避けられない。トリチウム以外の放射性物質は除染機器で除去。希釈するから安全。万が一被害が生じた場合は賠償実行」としている。
 しかしこれらはすべて論拠が貧困なのである。そもそも今般問題となっている、福島第一原発汚染水は事故により、冷却不能に陥った核燃料が炉内構造物をも熔かし、燃料デブリと接触し発生している物質なのである。したがって他の稼働原発が排出する汚染水とは全く性質が異なる。含有放射性物質は数・量共に圧倒的に膨大なのである。現在東京電力はこれを除去装置により除去しているが、汚染水問題の根本的解決策ではない。
 放射性物質の「所在」をフィルターへ移動させたに過ぎない。放射性物質を含んだフィルターは溜まり続け、問題が除染ゴミ問題として姿を変えただけなのである。現在国・東京電力は、放流水は「除去作業繰り返し」による「処理水」「汚染水」は誤りと強弁するがそれは完全除去では無い。
  最後の手段は希釈でしかない。この希釈安全論だが、汚染水は環境との隔離を達成しない限り発生・流出は継続し、従って流出する放射性物質の量は青天井となるのである。希釈安全論は「総量規制」の観点を欠く暴論と言わなければならない。総量規制は水俣病を経験した結果反公害運動が公害防止の為に獲得した教訓なのである。

加害責任から逃れるな


 次に賠償云々だが、これもまた全く不誠実な暴論である。完全賠償を述べるなら、先ずは東京電力に福島原発事故に由来するADRによる損害賠償斡旋案拒否行為を止めさせなければならない。そして政府・東京電力が述べる汚染水放流必至論は空疎でもある。彼らは論拠として、タンク設置用地枯渇、デブリ保管庫設置用地必要、デブリ取り出し装置の試験装置設置用地等を挙げ、「廃炉の着実な推進のため海洋投棄は不可避」としている。
 先ず「廃炉」だが、実態が不明なのである。資源エネルギー庁は「廃炉の大切な話2021」(廃炉資料館配布)中で「廃炉が終わった後の姿は具体的に提示不能」としている。「タンク設置用地枯渇」にしても用地交渉すらも実施形跡はなく、「原子力市民委員会」による大型タンク設置提言については、「門前払い」同然の発言者不在の「欠席裁判」であった。
 燃料デブリに至ってはその形状、性質共に不明であり、当然使用工具の開発も「開始時期不明」が実情である。付け加えると原子炉建屋、格納容器の解体に関する論議は全く先行き不明である。彼らが「廃炉」完了後の姿を提示出来ない大きな原因は、燃料デブリの処理、及び放射性廃棄物、及び使用済み核燃料の処分に全く見通しが立たないことなのである。
 使用済み核燃料・原子炉解体ゴミ・高レベル放射性廃棄物・これ等核のゴミを如何に処分するのか? 
 それは福島第一のみの問題ではなく、すべての原発に存在する根本的問題なのである。これらの難問をどう解決するのか? 論議の前提として国は原発利用を止めなければならない! 国は原発再稼働を止めろ! 汚染水海洋投棄計画を撤回せよ! 廃炉工程は崩壊した! 即時廃炉方針から撤退せよ! 恒久的遮水壁を造成せよ! 国・東京電力の加害責任放棄を許してはならない! 国・県・東京電力は福島第一原発事故避難者への差別分断攻撃を止めろ! 1月15日東京高等裁判所に証人尋問を求める! 東京集会(連合会館16時~18時)に集まろう! 2・9東電刑事訴訟控訴審公判を傍聴しよう!
(浜西)

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