沖縄報告 軍事基地・沖縄の現状の転換へ
全国、アジアとの連帯広げよう
沖縄 K・S 1月16日
琉球新報の県民意識調査(昨年10~11月実施)
琉球新報は2001年から5年に一度大がかりな県民意識調査を実施している。昨2021年10月15日から11月15日にかけて、県内41市町村を5区域に分類し、人口比に応じた割合で55地点を抽出するエリア・ランダム・サンプリング法で、調査員が訪問面接し20歳以上の1047人から回答を得たという。調査内容は、しまくとぅばや祖先崇拝、沖縄の文化、料理、郷土意識、天皇、近現代史、米軍基地、自衛隊基地などである。その結果が今年1月1日号の紙面にくわしく報道された。特徴的な内容をいくつかピックアップしてみよう。
県民は沖縄に誇りを持ち、基地問題と貧困問題の解決を求める
①しまくとぅばについてどう思いますか。
愛着がある 33・5%
どちらかと言えば愛着がある 43・5%
何とも思わない
19・8%
その他 3・1%
②沖縄県民であることを誇りに思いますか
とても誇りに思う
40・3%
どちらかと言えば誇りに思う 33・7%
どちらでもない
16・9%
あまり(全く)誇りに思わない 3・7%
その他 5・4%
③沖縄の文化・芸能を誇りに思いますか
とても誇りに思う
60・7%
どちらかと言えば誇りに思う 30・8%
あまり(全く)誇りに思わない 3・2%
その他 5・3%
④気になる問題は何ですか(3つまで)
所得の低さ 74・5%
基地問題 46・1%
子どもの貧困 34・1%
⑤沖縄の米軍基地についてどう思いますか
撤去すべきだ 25・8%
縮小すべきだ 36・8%
どちらともいえない
25・6%
維持すべきだ 7・2%
拡充すべきだ 0・3%
その他 4・2%
⑥沖縄の自衛隊基地についてどう思いますか
撤去すべきだ 9・3%
縮小すべきだ 20・4%
どちらともいえない
34・9%
維持すべきだ 23・8%
拡充すべきだ 5・0%
その他 6・5%
これらの内容から浮かび上がる沖縄県民像は、端的にまとめると、故郷沖縄とその文化・芸能・言葉を愛し、沖縄県民としての自身に誇りを持ち、米軍基地の撤去・縮小と貧困問題の解決を求めるが、自衛隊基地については撤去・縮小か維持・拡充かで分かれる状態になっている、と言える。
4人にひとりが「自治州」「連邦制」「独立国」を求める
さらに、今回の意識調査には、日本における沖縄の立場に関する設問がある。
〇日本における沖縄の立場をどうすべきだと考えますか
沖縄県のままでよい
62・5%
内政上の権限を強化(沖縄単独州、自治州、特別県制など) 10・8%
内政上の権限を強化し、政府と同等の権限を持つ連邦制 9・9%
独立国 3・0%
分らない 12・2%
無回答 1・6%
「沖縄県のままでよい」62・5%に対し、「内政上の権限強化」「連邦制」「独立」を合わせると、24・0%になる。県民の4人にひとりは、今のままの沖縄県ではいけない、中央政府に対する県の行政権力を強め広範な自治を有する、さらに対等の権力を有する連邦制にするとか独立国になるべきだと回答したことになる。こういうところは全国都道府県でただ沖縄だけであろう。
5年前の同じ質問に対する回答を振り返って見よう。2016年10~11月に行われた調査では次の通りだった。
〇今後、日本における沖縄の立場をどうすべきだと考えますか
現行通り 46・1%
沖縄関係予算の編成権を持つなど内政上の権限を強化した制度(道州制の沖縄単独州、自治州、特別県制など) 17・9%
内政上の権限を強化し、さらに外交・安全保障に関しても沖縄側が政府と同等の権限を持つ連邦制にすべきだ 14・0%
独立 2・6%
分らない 18・0%
その他 1・3%
「現行通り」46・1%に対し、「自治州など、連邦制、独立」を合わせると34・5%に上った。前回調査の2016年秋は、翁長知事による埋立承認取り消しに端を発する裁判で「和解」が成立し辺野古の埋立工事が中断している時期であり、県民の日本政府に対抗する意識、沖縄の政治的自立を求める意識が高揚していた。
あれから5年。日本政府による強権発動により沖縄の声がことごとく踏みにじられてきた中で、現状の行政の仕組みを打ち破ることの困難性の感覚が今回の調査における「沖縄県のまま」の割合の増加と「連邦制」・「自治州」の割合の低下に現れたと言えるかもしれない。
軍事植民地・沖縄の打破に向かって
日本国家にとって沖縄は、収奪の対象であると共に常にアジアにおける軍事基地であった。明治の天皇制から始まる大日本帝国にとっては「帝国の南門」として天皇制国家を守る防波堤であり、南方進出の砦となった。そして沖縄戦を起こした。敗戦後の米軍による直接占領と米軍政の時代には、「極東の要石(Keystone of Pacific)」として米国によるアジア支配の軍事拠点とされた。沖縄の本土復帰後は、米軍の世界への出撃基地であり続けると共に日米共同の軍事拠点として軍拡競争の最前線に押し上げられている。一言でいえば沖縄は継続して軍事植民地なのである。
この沖縄の現状を変えようとする日本政府が成立することができるだろうか。辺野古新基地の県外移設を試みた民主党鳩山内閣はあっけなく倒れた。日本国家指導層の意志は、昭和天皇のメッセージから始まり、中心的な政治家、官僚、自衛隊、軍需産業、マスコミなどすべてが軍事基地・沖縄の維持を望んでいる。軍事基地・沖縄があってこそ、日本本土の安泰がはかれるとの固定観念が支配している。
立憲民主、共産、社民、れいわと市民共闘の枠組みだけが軍事基地・沖縄の桎梏を取り除こうとしている。体制に一体化した連合は立憲民主をこの枠組みからはずそうと懸命だ。とはいえ、立憲民主、共産、社民、れいわと市民共闘の枠組みによる政権奪取の可能性は当面ないだろう。そうすると、沖縄は自力で闘う以外にない。世界各地の自治・独立の闘いを学ぶと共に、日米両政府に対峙する県行政を維持・強化し、現場と地域での大衆運動を続け、全国との連帯の輪を広げることに力を注いで決して屈しないことだ。
情勢は必ず変化する。不意に好機が訪れることもある。闘争隊伍を強めよう。アジアとの連帯・共同の思想を深めよう。
木村浩子さんがよんだ新年の短歌
締めくくりに、伊江島の土の宿をながらく営んでいた画家・作家・アーティストの木村浩子さんが新年にあたってよんだ短歌を紹介しよう。
新春の 海輝きて 大空を 鳥よ羽ばたけ 軍機消すまで 木村浩子
チーム・レインボーが新年の初潜水
カヌーメンバーAさんの報告
1月9日、ヘリ基地反対協のチーム・レインボーが辺野古・大浦湾で、サンゴの海の状態を確かめる新年の初もぐりを行った。辺野古・大浦湾のサンゴの海は日本中どこを探してもない宝の海だ。無理で無謀な埋め立て工事によって破壊してはならない。
この日のダイビングに参加したAさんが次のように報告している。
「初潜りに参加しました。日差しもあり、凪で温かい大浦湾のサンゴ観察となりました。大きなテーブルサンゴや、いろんな魚と出会えたけど、まだ私は名前をお伝え出来ないのが残念。安部真理子さんの報告がとても詳しいので是非見て下さい。
だが日曜日なのに、同じ大浦湾の数百メートル先で沖縄防衛局のサンゴ移植船が7隻出ていました」
第32軍司令部壕の模型の展示会
県庁ロビーと南風原文化センターで
沖縄戦に対する第32軍司令部の責任
サイパン島での日本軍の全滅のあと沖縄戦がいよいよ迫ってくる中で、1944年10月10日、米艦隊による沖縄全域に対する大空襲が行われた。米軍機の延べ出撃回数は、1396機。飛行場、港、軍施設さらに各地の人家が炎上、とくに那覇の被害が大きく、1万1010戸が全焼ないし全壊した。死傷者は軍民合わせて668人の死者を含み約1500人。軍の損害は、航空機51機、船舶155隻、弾薬100万発、軍用食糧米30万俵、など甚大であった。那覇市安里の養蚕試験場にあった32軍司令部も焼けて、11月から松代大本営の着工と同時に首里城地下に人工壕を掘ることになった。龍潭池のほとりに位置していた沖縄師範学校の学生たちも大挙動員された突貫工事であった。
この第32軍司令部が「60万県民の総決起」「軍官民共生共死の一体化」の下、各地に陣地構築を進め地上戦を行い壊滅的的な敗北を被ったにもかかわらず戦争を止めず摩文仁の洞窟に移動してさらなる住民被害を生みだした沖縄戦の現地最高指導部なのである。言うまでもなく、日本全体の最高指導部は天皇とその政府だった。
保存・公開を求める会による展示会
第32軍司令部壕の保存・公開を求める会は1月4日から7日まで沖縄県庁一階ロビーの一角で、第32軍司令部壕の模型展示会を開催した(現在は、南風原文化センター)。首里の森の表層・石灰岩層の下に広がる粘土層に掘られた司令部壕の姿は500分の1の精巧なジオラマでよく分かる。さらに段ボール紙を用いて長さ、高低も正確に表現した壕の模型や段ボールと細木で再現した司令部壕中枢部の模型が展示された。司令官室は守礼の門の真下あたりにあったことが分かる。
首里城と共に世界遺産に登録された園比屋武御嶽(そのひやんうたき)石門横の階段を下りたところに司令部壕についての説明版が設置されている。この説明文をめぐって、新城俊昭さん(『琉球・沖縄史』の著者)ら4人の検討委員全員の抗議にも関わらず、当時の沖縄県は「壕内に慰安婦なども雑居していた」「壕周辺でスパイ視された住民の虐殺があった」との二つの内容を削除した説明版を設置した。2014年、仲井真知事の時である。公約を覆し辺野古埋立承認を行なった仲井真知事は、沖縄戦の日本軍の戦争犯罪の隠蔽にも加担していたのだ。
壕の保存・公開・活用へ向けて
沖縄県は昨年1月、沖縄戦研究の吉浜忍元沖国大教授や土木・地盤・トンネル工学・戦跡文化財の専門家らで構成される第32軍司令部壕保存・公開検討委員会を発足させた。昨年12月27日の第4回委員会に壕の基礎調査の中間報告が行われた。それによると、業者がレーザー測量などを実施した第2、3、5坑道について来年度にもWEBツアーを公開するとのことである。未発掘の第1坑道については今後4年間で調査・試掘を行い、その上で全体の壕の保存・公開の基本計画をまとめるとしている。
首里城の再建は地下の司令部壕の保存・公開と一体のものである。ユネスコの世界遺産に登録された地上の首里城に対し、日本軍の戦争犯罪の現場・地下の司令部壕跡は反戦平和を発信する歴史遺産とならなければならない。牛島満司令官のお孫さんの牛島貞満さんは、東京での教員時代にながらく沖縄戦の平和学習を続けていたが、沖縄の戦跡にも度々足を運び祖父牛島満の調査研究を重ねてきた。牛島さんは「司令官として牛島満は住民に多大な犠牲を強いた二つの命令を下している」として、「南部への撤退命令」と遺言「最後まで敢闘し悠久の大義に生くべし」をあげ、「沖縄戦の過ちを学ぶ場」として第32軍司令部壕の保存・公開・活用の意義があると述べている。牛島貞満『第32軍司令部壕―その保存・公開・活用を考える』(高文研、2021年)を参照。
首里城の再建と共に地下司令部壕の保存・公開を。



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