政府は埋立工事を即刻中止せよ
防衛局のデタラメがまた発覚
沖縄報告 3月13日
沖縄 K・S
防衛局のサンゴ「移植」とはサンゴ「投棄」
潜水チームが現場の海底で証拠写真を撮影
沖縄防衛局が行っている大浦湾でのサンゴ移植のずさんな実態が明らかになった。ヘリ基地反対協のダイビングチーム・レインボーは、3月2日、大浦湾長島近くの臨時制限区域内のサンゴ移植現場で潜水調査を実施した。この地域は大型サンゴ、ショウガサンゴ、小型サンゴなど、数万個のサンゴ群生地域であり、サンゴの海・大浦湾を代表する海域のひとつである。潜水調査の結果は、添付の海中写真をご覧いただきたい。沖縄タイムス、琉球新報の地元両紙も写真付きで大きく取り上げ、サンゴ投棄の実態を報道した。
大きいものでは直径60㎝ものサンゴを含む様々なサンゴが割られ、裏返しになり、横向けに放置され、藻類が付き死につつある悲惨な現場。防衛局によるサンゴ移植とは、移植したという形だけのアリバイ作りが目的であって、そのサンゴが生きようが死のうが関心外であることを物語るものだ。
ダイビングチーム・レインボーが撮影した写真を公開しているAさんのFBによると、「防衛局はサンゴ移植と言っていたが、わたしにはサンゴの殺戮現場にみえる。臨時制限区域内ならバレないだろうとたかをくくって、意図的に行ったサンゴの大量投棄、大量殺戮のように私には感じられる。ここはK8護岸の延長工事が予定されている場所だが、恐ろしい自然破壊の現場である」と述べている。
今回サンゴ類の大量投棄が発見された場所は、長島の北側で、大浦湾側の埋立予定区域の大半を占める軟弱地盤の南側に位置するサンゴ群生地である。琉球新報に掲載された地図では、護岸予定地の内外に位置する黄色い部分の海域にあたる。
もともと県はサンゴ移植を不許可にした
防衛局が申請したこの海域の約4万群体のサンゴ移植に対し、沖縄県は不許可にしたが、農林水産相が県に「許可するように」との是正の指示を出し、沖縄県が農水省の是正の指示は違法であるとして提訴し、昨年6月の最高裁判決で県の敗訴が確定した経過がある。その後、沖縄県の玉城デニー知事は「司法の最終判断が示された以上、行政である県は是正の指示に従い許可する必要があるが、じくじたる思いがある」としながらも、「高水温や台風の時期を避ける」「移植したサンゴの経過観察を報告する」との条件を付して許可したのである。
沖縄県が条件付きで許可を出したのが2021年7月28日。沖縄防衛局は翌29日、県が付した「高水温や台風を避ける」という条件を無視して、サンゴ移植作業を開始した。沖縄の海の水温はこの時期、30度以上に達する。サンゴに詳しい生物学の専門家・大久保奈弥准教授(東京経済大)が「30度以上が一週間続けば元気なサンゴでも白化する。この時期の移植は論外」と指摘するように、沖縄防衛局のサンゴ移植作業の強行は自然無視の拙速作業であり、無謀であった。
沖縄県の玉城デニー知事は「条件が守られていない。強く抗議する」と沖縄防衛局を批判し、行政指導を行ったが、防衛局が聞く耳を持たないため、翌30日、2日前に出したサンゴ約4万群体の特別採捕許可を撤回した。辺野古・大浦湾のサンゴの海を守り、新基地建設に反対することを行政の柱にしている沖縄県として、当然の措置であった。
防衛局は行政不服審査法の悪用で県の許可撤回をねじ伏せてサンゴ移植を強行した
ところが、沖縄防衛局・防衛相はまたしても、県の許可撤回を覆すために、行政不服審査法に基づく審査を農林水産相に請求した。4年前の埋立承認撤回を無効化するために政府が用いた行政のからくりもこの行政不服審査法の利用だった。同じ穴の二匹のムジナ。同じ内閣の右手から左手への下手な手品のように、国策に反対する地方自治体の抗議・反対を踏みにじる法律上の根拠に使われているのだ。日本政府の閣僚や官僚の厚顔無恥は底なしのように思える。
沖縄県は農水相に意見書を提出し、「一度損壊したサンゴの再生は不可能。水産資源の保護のためサンゴ移植許可の撤回は必要」と訴えた。ところが、である。県が意見書を提出した8月4日の翌日、農水相は、県の許可撤回の効力を止める執行停止を決定したのである。日本の国はこんなことだから、「長いものには巻かれろ」「お上には逆らうな」という社会の精神土壌がいつまでたっても根強くて、地方の自主性、国民の自発性が育たない。
防衛局はサンゴ破壊・投棄の証拠隠滅を止め、埋め立て工事をストップせよ
今回ダイビングチームが撮影したサンゴ破壊・投棄を示す写真の数々は以上のようないきさつで防衛局が移植をすすめた現場である。計画されるK8護岸の先端付近の内外、臨時制限区域のフロートの内側約300mの周辺であるため、沖縄防衛局や担当する作業員たちは、サンゴ破壊・投棄の事実が明るみに出ることはないと思っていたのだろう。隠しきれない犯罪現場の証拠写真が明らかになった以上、彼らは急いで証拠隠滅を試みるに違いない。今度は、潜水調査チームが入ってこれないような工事現場のもっと内側の軟弱地盤あたりに投棄するかもしれない。
日本中探しても他にないサンゴの海・亜熱帯の海洋たる辺野古・大浦湾に米軍基地をつくるな。県民の財産であるだけでなく、日本の宝。世界的にも貴重な海の代名詞「ホープ・スポット」に選ばれるかけがえのない海。設計変更を不承認にした沖縄県の判断に従い、日本政府・岸田内閣は埋立工事を中止し、辺野古新基地建設計画を白紙撤回せよ!
千葉さんの国賠請求裁判の第3回弁論
3月3日(木)午後2時半から、辺野古カヌーチームの古参メンバー・千葉和夫さんの国家賠償請求裁判の第3回弁論が開かれた。国側代理人席には7人、千葉さん側の代理人席には本人と5人の弁護士が席に着き、24席の傍聴席が埋まった。千葉さん側は、辺野古新基地建設工事現場の周りにフロートを張り巡らした立入禁止区域内での海上保安庁の活動の権限に関して、海上保安庁法、刑事特別法などに照らしてどこにあるのかと追及した。
裁判後、城岳公園で開催された報告集会で、原告の千葉さんは「雨の日など特に体調が悪い。10カ月間苦しんだ。もう体は元には戻らないだろう。海保の高速ボートとカヌーとでは1000倍の力の差がある。それがまともに突っ込んできた。こんなことが許されるのか。なかったことにされたくない」と訴えた。そのあと、三宅弁護士、山城弁護士、林弁護士がマイクを取り、裁判闘争の決意を述べた。千葉さんを支える会共同代表の鈴木公子さんは「全国各地に呼ばれて話をしている。これからも長い闘いになろうが、支えていただきたい」と語った。
次回弁論は、5月12日(木)午後3時と期日指定された。
南京パネル展、南風原文化センターで開催
3月6日(日)~3月21日(月)、南京大虐殺のパネル24枚と『関東大震災中国人虐殺の図』の展示会が南風原文化センター1階で行われ、連日、観覧の人々が訪れている。3月12日(土)には、映画『NANKING(南京)』の上映と又吉盛清さん(沖大客員教授)の講演の集いが開かれ、125人が詰めかける盛況となった。
県内市町村の中国での戦争体験記を読む(65)
日本軍による戦争の赤裸々な描写
中国侵略の日本軍には、県内各地からも多くの青年たちが動員されて命を落とし、また、戦争の実態を目撃した。県内各地の市町村史の戦争体験記録にはそうした証言が数多く掲載されている。今号は、中国で3年間従軍した後ソ連軍によりシベリアに連行された多良間村の立石さんの証言(下)を掲載する。シベリアでの過酷な労働、地元住民との交流が詳しく描かれている。引用は原文通り、省略は……で示した。
「島びとの硝煙記録」多良間村民の戦時・戦後体験記(1995年発行)
立石〈旧姓大山〉春栄「シベリアに消えた青春」(下)
間もなく750名は運命の地獄の様な重労働、金鉱山の作業を始めることになる。時は昭和二十年十二月一日であった。……
丁度金鉱山の作業を始めて十日目頃、機械修理工と仕上工の経験者は申し出よとの命があり、入隊前の会社で機械を扱ったことがあったので、さっそく申し込んだら運よく採用され、若い少尉を隊長に各十名づつ計二十名が編成された。作業所は収容所から約2キロに金の精錬所があり、さらに1キロ上の丘に仕上工場があり、各十名づつ分かれての作業となり私は仕上工場に務めることになった。仕事は単純の軽作業で、我々日本人は手慣れたもので能率もよかったので、現場責任者や同職場の現地人から喜ばれた。食事は現地人と一緒の食堂だったので、私達の給与のパン200とカーシャ(少々の肉入り雑炊)を見て少ないと思ってか、現地人の作業員や女子工員達がパン等をくれたりするので、空腹ばかりの我々は最大の楽しみであった。……
数日後、1キロ下の精錬所に同じ職場の職人さんと二人で部品(仕上用)取りに行ったことがあり、2~3日して今度は信用した同僚と二人で仕上品を持って行くことになったので、無事届けて深い雪の中をトボトボ歩いての帰り道、ある一軒の民家の前に来た時、頭からネッカチーフを被った若い女性がさかんに呼んでいるので、二人共近づくと笑顔で自宅に案内された。入口の土間で着衣の雪を払っていたら、母親らしい優しそうな方と妹さんの可愛い方もさあどうぞと迎え入れてくれた。
土間から上がった板張りの間に通されてテーブルの前の腰掛に勧められて座った。母親がさかんにジェスチュアや手話で話しているが残念ながら分かりにくい。ただ父親は戦死か病死かで母子家庭らしく生活は苦しい様に感じた。間もなく二人の娘さんが手早くご馳走を作り、テーブルの上に並べて、さあ食べて下さいとジェスチュアで。私達は遠慮なくいただく。御馳走は黒パンと肉の入ったキャベツと馬鈴薯のスープに馬鈴薯の油いため、それにお茶代わりの温かい牛乳で、日本のご馳走の様な贅沢なものではないが、真心のこもった温かいご馳走で、空腹のためおいしそうに食べているのを母娘は眺めながら楽しそうに話していた。捕虜の私達に心のこもった温かいもてなしに数年ぶりに人間らしい温かい家庭に触れ、国境もない捕虜の身でもなく同じ人間としてこの北国の母娘に出会って知ることが出来た。時間の経つのも忘れ、帰りが遅れたのを心配して姉の娘さんは、帰ったらソ連兵から叩かれるでしょうと言って、目にいっぱい涙をため、名残を惜しみながらお礼を言って別れる。お互いは彼等に深く感謝し、この厚情は忘れることは出来ない。今あの親娘達はどうなったかと思い出し、生きている間に行ってお礼を申したい気持ちにかられる場合がよくある。……
今度は中央シベリアの大都市でソ連軍司令部もあるクラスノヤルスクの第4収容所に入った。この収容所には数千人の日本兵が収容されており、作業の種類も多くあり工場作業と土木作業が主な作業だった。……工場の各職場ではソ連労働者の中には多数の女性がおり、若い女性よりも中年女性が多く、すべてノルマが与えられているのでよく働くのには感心させられた。後で知ったが、独ソ戦で夫を亡くした多くの未亡人と聞き、あらためて戦争の悲惨さを知り気の毒な思いがした。ソ連人はドイツ人をゲルマンと呼んでおり、彼女達の会話の様子ではドイツ人を大分憎んでいるようであった。私達日本人には好意をもって仕事もよく教えてくれた。幸い仕事は軽作業でノルマを達成したら少しは給料が貰えたので、空腹を満たすためパンや馬鈴薯も買い入れることが出来、これまでの収容所に比べて恵まれ、衰弱した身体も次第に回復して来た。
……
【訂正】かけはし前号(3月14日号)2面「国内NGOによる抗議声明・行動よびかけ」記事2面最上段の最終行から。前号に記載した「ICANロシア」は存在しません。「ICANロシアは、対話と外交に戻り……」を「ICANの声明は『 ロシアは、対話と外交に戻り、国連憲章を再び遵守し、国際人道・人権法を尊重し、リスクを削減する諸条約――核兵器禁止条約を含む――に加わるべきです。私たちは国際社会に対して、ロシアにそのように強く圧力をかけることを求めます』と結ばれている。」に訂正します。
週刊かけはし
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