サイト紹介「反天ジャーナル  天皇制を知る 考える」 

天皇制問題の様々な論点を紹介

 反天皇制運動を闘っている仲間たちによるサイト「反天ジャーナル」がこの3月から始まっている。ご存じだろうか。
 サイトは、天皇制反対の立場から「目的を共有し集まった有志」によって「・状況批評・天皇制問題のいま・メディア批評・皇位継承問題・オリンピック関連・眞子結婚問題・反天チャット」などのテーマごとにビビッドな反天皇テーマを取り上げ、論評記事を掲載している。
 編集委員会は、言う。「わたしたちは天皇制に批判的な見解に立ち、たくさんの疑問を持っています。なぜ1945年の敗戦後も天皇は在位しつづけられたのか、その戦争責任問題はどうなったのか、マスコミはなぜ皇室に対して敬称・敬語を使うのか、なぜ『国民』が選んだ国会議員や三権の長よりも高いところに位置し、国を代表する地位にいるのか、等々」。
 「わたしたちはそうした疑問点、問題点を整理するため、天皇制に関する一次資料、批評や分析、客観報道の紹介、その他を取捨選択し、コメントをつけ、あるいは記事を書き下ろします。もちろん、掲載記事・資料に対する見解は、編集委員全員の見解とは一致しない場合もありますが、天皇制についてさまざまな議論の幅があることを紹介してゆく方針です」。

女性・女系天皇に
ついて触れない
 直近の天皇制動向について、天野恵一さんが「皇室情報の検証② 」で「『皇位継承』に関する『有識者会議』の『最終報告』をめぐって」というテーマで次のように批評している。
 岸田文雄首相に提出された(21・12・23)「安定的な皇位継承のあり方を議論する政府有識者会議」最終報告は、「安倍から菅へそして岸田に継承された女性・女系天皇については触れないという『基本方針』に基づいて、①女性天皇皇族が結婚後も皇室にとどまる、②旧宮家の男系男子が養子として皇族復帰、この2案を軸とすることを決定」し、「世論調査では圧倒的多数の国民が支持する『女性(女系)天皇制』は神権主義天皇制論者たちが大反対、天皇をめぐって大きな議論は避けたいのが政府」だと整理した。
 そのうえで天野さんは「女系天皇制というのは例えば、天皇の娘が女性天皇となり、彼女が天皇家の血族でない『民間』男性と結婚してできた子供が次の天皇ということになれば天皇の男系の『血』が途絶えてしまう、男系『万世一系』の神々の一族の血の入っていない天皇ができてしまう、これが『女系天皇』。こんなことは絶対許されない、これが神様天皇主義者の『国体』論。だから、女性(女系)天皇にだけは踏み込まない、というのがこの『最終報告』を支配している論理です」と分析している。
 支配者たちが今後の天皇制存続のために男系天皇制派と女系天皇制派の引っ張り合いがこのような構造の中で展開されていることを分析対象として踏まえつつ、反天皇制運動の方向性をいかに掘り下げていくか、あらためて問いかけている。
 さらに天野さんは、「最終報告」は「内親王・女王は結婚後も皇族の身分を保持することとし、婚姻後も皇族としてさまざまな活動も行なっていただく」という打ち出しとの関連で「『文藝春秋』(2021年12月号)の「秋篠宮家『秘録──この三年間で何が起きていたのか』」という特別取材編のレポートを取り上げ、「『眞子』さんも『佳子』さんも、こういう制度がつくられて、皇室という『不自由』な世界から脱出できなくなることを以前から予測して、動いていたんですね。『眞子』さんは取りあえず、いそいで結婚して、ニューヨークにまで逃げて脱出に成功したんですね。脱出願望は姉以上のようだから、『佳子』さんはあせっているでしょうね」と述べ、「超特権的奴隷制度」を批判している。
 「マコ脱出劇」をネタにして天皇ビジネスを繰り広げてきた週刊誌などは、あいかわらず「マコ脱出劇」後も含めて記事を垂れ流し続けている。
 関連してサイトでは、このテーマを取り上げ批判している。

無視できない
〝亀裂〟の可視化
 中嶋啓明さんは、「表現規制を後押しする眞子結婚スキャンダル」に対して第一声が「鬱陶しい以外の言葉が見つからない」である。まさにその通りだ。
 中嶋さんは、「今回のスキャンダルが一つのきっかけになって、天皇制の基盤に無視できない〝亀裂〟が生じたのも、見逃すことのできない事実ではあろう。〝亀裂〟は従来から存在していたが、それが社会的により見えるようになった。だがそれは基本的に、あくまで天皇制の存続を前提にして、男系維持を金科玉条に掲げる神道主義右翼と、女系もやむなしとヨーロッパ王室型の天皇制を追求する、より幅広い〝大衆〟との間の〝矛盾〟でしかない。
そんなコップの中の争いに囚われることなく、〝亀裂〟の可視化という現実にも介入しながら、天皇制などいらないとの声を強めていきたい」と指摘している。
 「〝亀裂〟の可視化」によって天皇制積極支持派も含めた分厚い基盤の分解は発生しているのか、メディア・民衆の受け止めからどのような戦略・戦術が導き出されるのかなど分析課題は様々だ。メディアの流れは、ニューヨークの「小室圭・眞子」の動向追跡だが、かならず「皇室側近や友人たち」のコメントを出し、視聴率
・購買部数上昇をねらっているのがみえみえだ。ウンザリだと投げ出さないのが反天皇制運動の粘り強さだ。

天皇制の矛盾の噴き出しを明らかに
 桜井大子さんも「眞子結婚騒動:天皇制の自壊につながるか!?」と問題設定し、「天皇制はいよいよ窮地に立っているように見えるが、実際のところどうなのだろう」と下向分析を試み、「天皇制の矛盾の噴き出し」について明らかにしている。
 第一は、「眞子の『駆け落ち婚』などと揶揄される周囲の反対を押し切っての結婚は、天皇制、天皇家が必然的に作り出すほころびが露呈したというふうに見るべきだろう。そしてこのほころびは、皇位継承者枯渇問題とはやや次元が違うが、同様に自己崩壊の大きな端緒となりうるし、大きく広がっていく可能性もある」。
 つまり、「眞子」に続けと踏ん張っていく関係者たち、そのベクトルを強引に押さえつける者たちなどの軋轢が再発するということだろう。表面化しなくても底流で育ち続けている。このマグマが今後どのように噴火するのだろうか。
 第二は、天皇制と家父長制のインチキなあり方が暴露されたということだ。
 桜井さんは、このことを「天皇家の伝統である家父長制は、眞子の『わがまま』でその威厳を潰され、明仁が望んだ皇族と皇位継承者減少対策としてある『女性宮家・女性天皇』容認論は、期待の眞子も遁走するし、有識者会議の議論は旧態依然を脱しない。残りわずかな皇族の中からも眞子の後を追うものが出てこないとは限らない。すべて天皇制の理不尽な制度の結果である」とまとめた。
 第三は、「強固な天皇制社会」についてだ。
 「ちまたには眞子結婚騒動で皇室の尊厳に傷がつくといった言論が溢れている。まだまだ強固な天皇制社会である。だが一方で、本人が幸せになるのであればいいんじゃない? 応援しますという街頭の声も多い。天皇制の維持強化を真面目に考えるならば出てこないセリフだ。強固な天皇制社会とはいえ、ほころびは転がっている」と分析し、反天皇制運動の次へと向かうステップを指示した。
 つまり、「眞子」は、スマフォ時代において「『世間の自由』と皇室の不自由を簡単に比較できる世代」だが、「おそらく特権的不自由はただの理不尽な不自由であり、特権的自由を求めるしかない。そして眞子は一つの前例を作った。自由は自力で獲得する」ことだが、そのような在り様さえも天皇制社会は統合してしまうシステムである。
 このようなグロテスクなものを打倒していくために地道に論議とスクラムを広げていこうではないか。本サイトは、そのための討議資料として活躍してくれるはずである。    (Y)

「反天ジャーナル」のサイト
https://www.jca.apc.org/hanten-journal/

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