5.3おおさか総がかり憲法集会

自民・維新を厳しく批判
国際連帯の力でウクライナに平和を

 新型コロナ対策のため3000人規模で準備されたおおさか総がかり集会(実行委員会主催:戦争をさせない1000人委員会・大阪、大阪憲法会議・共同センター、しないさせない戦争協力関西ネットワーク)は5月3日、大阪市扇町公園で開かれ3500人の市民が参加した。
 マイク・サン・ライフのラップで始まり、米田彰男さん(戦争をさせない1000人委員会・大阪)が開会のあいさつ、丹羽徹さん(大阪憲法会議・共同センター)が閉会のあいさつをした。野党各政党(立憲民主党・森山浩行衆院議員、共産党・辰巳コウタロウ元参院議員、社民党・大椿ゆう子副党首、れいわ新選組・大石あきこ衆院議員)のあいさつ、3団体からの市民アピールがあった。それぞれの発言は、ロシアのウクライナ侵攻抗議、この危機に便乗して改憲と軍拡を主張する自民や維新批判、大阪カジノ施設の建設反対、コロナ対策、7月参議院選に関するものだった。ここでは川崎哲さん(ピースボート共同代表)のメッセージとミニ講演を行った湯浅一郎さん(ピースデポ代表)の講演内容を紹介する。

川崎哲さんの講演

戦争を止めるのは
対話・外交・軍縮

 今ほど日本国憲法の意義が問われているときはない。ロシアによるウクライナ侵攻は、他国に対して武力による威嚇や行使を禁じた国連憲章の原則を踏みにじっている。第2次大戦後、もう戦争はしないという決意で国連をつくり、日本は武力による威嚇や行使は永久に放棄すると憲法で誓った。私たちは非軍事的な手段による圧力をプーチン政権に対してかけ続け、早期停戦を実現し、あらためて、国際法に基づく国家間の安全の保障を再構築しなければいけない。
 プーチン大統領は核兵器による恫喝をくり返し、事態は核戦争へとエスカレートしかねない。これまで核抑止論、核の力のバランスで戦争は起きないのだと主張する人たちがいた。ところがロシアは、西側の軍事同盟であるNATOを敵に回すとわかっていて、戦争を始めた。核兵器は戦争を防いではいない。戦争を進めるための道具として使われている。核戦争を防ぐ唯一の方法は、核兵器を廃絶することだ。
 核兵器禁止条約の第1回締約国会議が来月オーストリアで開かれる。アイキャンに集う世界のNGОは任意に集まる。核兵器のない世界をめざすのであれば、岸田首相は行動で示し、会議に参加してほしい。政治家たちは、核共有だ!敵基地攻撃だ!軍事費の倍増だ!と扇動している。これらは戦争の危険を高める行為だ。この状況の中で人々が苦しんでいる今、武器を買ったりつくったりするために浪費してはならない。
 冷静に、世界的な視野を持って、進むべき道を考えよう。国連の目標と日本国憲法の原則を踏まえて、対話・外交・軍縮こそが必要だ。私たちが声を上げることが国を動かす。ともに行動していこう。

湯浅一郎さんの講演

国際的合意にことごと
く違反してきたロシア

 ピースデポは憲法9条や被爆体験を基礎に、軍事力によらない安全保障体制の構築を目指す、具体的には北東アジア非核兵器地帯を基礎に東アジアの平和ビジョンをつくることにこだわって活動している。その立場から3月に、ロシアによるウクライナ侵略に関する声明を出した。
 ロシアは、侵攻をウクライナ東部のドンバス地方の住民をジェノサイドから守る特別軍事作戦だと主張している。しかし、武力によって強制的に領土の変更を行うことは、国連憲章第2条4項に違反している。ロシアは核兵器部隊の特別戦闘態勢を敷き、今も継続している。核兵器による威嚇、兵器を使うかもしれないという状況は依然として変わっていない。
 NPT核不拡散条約で核保有を認められている米・露・英・仏・中の特権的5カ国がこの1月に出した共同声明では、核戦争はやってはいけないと明言している。その声明に反することをロシアがやっている。侵攻を始めた直後チェルノブイリ原発を占拠し、さらに稼働中のザポリージャ原発を占拠した。これは、ダムや原発攻撃を禁止しているジュネーブ条約第1議定書の第56条に違反する戦争犯罪だ。
 1914年からの第1次世界大戦、1939年からの第2次世界大戦、戦後の朝鮮戦争その他様々な戦争がくり返されてきたが、人類はこの100年間に苦い体験の中から、国際人道法、国際人権法、ジュネーブ議定書、国連憲章等で、国際的な合意を積み上げてきた。それらをことごとく破っているのが今のロシアだ。今から、以下3点について話したい。

「共通の安全保障」

 ①このようなときだからこそ、米ソ冷戦の終結を導いた共通の安全保障(コモンセキュリティ)の価値をあらためて認識する必要がある。1990年代に冷戦が終わり、これからはヨーロッパでは大きな戦争は起こらないと考えられてきたが、ロシアのウクライナ侵攻はそれを幻想として退けた。
 冷戦の終結を導いた共通の安全保障はどこへ行ったのか。この概念は、1982年国連の軍縮と安全保障特別委員会が提唱したもので、全ての国は安全に向けた正当な権利を有するという原則だ。軍事力は国家間の紛争を解決する正当な道具ではないとした。
 しかし、冷戦終結後の30年間、共通の安全保障は十分機能せず、おざなりにされてきた。
 1991年ワルシャワ条約機構がなくなったが、もう一方のNATOは拡大し強化されてきた。米国は冷戦終結により自分たちは勝ったと考えたのだろう。冷戦終結後のロシアが経済停滞と混乱に陥って弱体化したことに乗じて、米国はロシアからの安全保障に対する懸念や要求を一切無視してきたのではないか。1995年にできたОSCE(欧州安全保障協力機構)にはロシアも参加している。ОSCEを強くしていく外交政策を進めていれば今日の出来事は起きなかっただろう。プーチンがウクライナ侵攻に踏み切った背景にはNATOの東方拡大がある。そこには共通の安全保障を無視してきた米国の対応があったと思う。
 この30年間をふり返り、共通の安全保障が機能してこなかったことを反省することから始めなくてはならない。この概念は、これから先、人類が軍事力によらずに安全保障体制をつくっていくための重要な考え方だ。

東アジアの平和ビジョン構想

 ②ウクライナ危機を利用して世界中で軍拡に拍車がかかるかもしれないと懸念されている。ドイツが国防政策を転換し、国防費をGDPの2%以上に増やすと社民党の党首が言ってしまった。フィンランドやスエーデンがNATO加盟を検討している。日本では安倍元首相や維新の会が、米国の核の共有を主張している。
 確かにヨーロッパには約100発の米国の戦術核がドイツなどに配備され、ある種の共有が続いてきたが、これは冷戦の産物であってNPT後は縮小している。日本が核共有を選択したいとしても、日本はNPTから脱退しない限りそのようなことはできない。そうすると一番深刻なのは、自民党が敵基地攻撃能力保持や、防衛費をGDP2%以上にする・憲法改悪すると本気で言い出している問題だ。なんとしても止めないといけない。軍拡を世界中に広げていけば、軍事力による安全保障ジレンマという悪循環はより深刻になる。
 東アジアで重要なことは、ロシア・北朝鮮を敵視して、軍事的に対抗する道を選ぶのではなく、共通の安全保障を念頭に東アジアの平和ビジョンを作り出す取り組みを強めていくことだ。その立場は、憲法9条による。重要なことは、9条の精神を外交政策として具体的な形で示すことだ。朝鮮半島の非核化と平和を含む北東アジアの非核兵器地帯条約を切り口としながら、東アジアの平和ビジョンを構想することが答えだと思う。

共通認識について

 ③私の持論だが、地球を外から眺める自然観が必要だ。この星には人類を含め約800万種の動植物が共存している。このような星は、太陽系の中には地球以外にはない。銀河系は1000億の太陽でなり立っていると言われるが、この地球のような生物の多様性を持った星を保有している太陽はやたらあるわけではないと思う。地球で展開されている多様な生物と自然の相互作用、食物連鎖、人間がつくっている社会、これは奇跡のような存在だ。私たちが生きていること自体が奇跡的だ。この認識を世界中で共有することができれば、国境というものの意味はなくなるのではないか。国家間の争いがなくなることを目指したい。
 平和憲法施行75年、憲法9条に依拠し軍事力によらないでともに生きていく有りようを一刻も早く実現することにともに尽力して行こう。
        (T・T)

大阪総がかり憲法集会─ロシアは侵略止めろ(5.3)

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