優生保護法問題の早期・全面解決を
5・10院内集会が開かれる
これ以上差別を繰り返すな
全国連絡会も
発足しました
5月10日、「院内集会~優生保護法問題の早期・全面解決を求めて~」が開催された。主催者は優生手術被害者・家族の会、全国優生保護法被害弁護団、優生保護法裁判の勝利をめざす全国集会実行委員会の3つ。集会はメイン会場の参議院議員会館と北海道・仙台・静岡・大阪・兵庫などの各原告団らが集まったサテライト会場、そして個人をオンラインで結んで開かれ、350人以上が参加した。オンラインではメイン会場でおこなっている手話通訳と、UDトーク(*1)によるルビつきの文字通訳が画面に映しだされ、各会場でも大画面で共有された。
各地の原告家族、支援者と弁護団の発言に続き、兵庫県明石市の泉市長が被害者救済条例が制定されたことを報告。また集会では「優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会」の発足が報告された(資料参照)。明石市の条例は強制手術を受けた市民とその配偶者に300万円を独自に支給するというもので自治体としては初。
旧優生保護法に基づく強制不妊手術を巡る国家賠償請求訴訟は全国9地裁・支部で提訴されている。これまでの地裁判決では、強制不妊手術が違憲であることを認めたが、不法行為から20年で賠償請求権が消滅する除斥期間を理由に損害賠償請求は却下され、原告側の敗訴だった。また、これまで25人の原告のうち4人が死亡している。
国は上告を
取り下げろ
今年になり、2月22日の大阪高裁判決、3月11日の東京高裁と2つの控訴審で逆転勝訴をかちとった。大阪では3人の請求5500万円に対し2750万円の賠償を、東京では3000万円の請求に対し1500万円の賠償を国に命じた。除斥期間について東京高裁の平田豊裁判長は「強度の人権侵害をした国への適用は認めない」と判断した。
国は「除斥期間の解釈・適用に関し、法律上の重大な問題を含んでいる(厚労省)」などと両高裁判決を不服として上告した。2019年に議員立法で成立した救済法は被害者本人からの請求に基づいて被害を認定、一律の一時金320万円を支給する。請求後に本人が死亡し、被害が認定された場合には遺族や相続人に支給し、請求期限は法施行後5年間とされている。国は上告する一方で、松野官房長官が「(両高裁判決と一時金の隔たりを)重く受け止め、一時金の水準を含め国会と相談し、対応を検討したい」と会見で述べるなど、制度の見直しの姿勢を示している。
集会の案内チラシには「5月からは超党派議員連盟が動き出します」と書かれていた。集会には自民や維新を含め、延べ16人の超党派の国会議員が参加し、各党の取り組みや決意を表明した。これらの発言に対し、集会の閉会あいさつで全国弁護団の共同代表の西村武彦弁護士は次のような内容の発言をした。「今日の発言を聞くと、この問題の早期解決についての意欲は全員で一致していると感じた。国会議員の話を聞くと、国が上告した裁判で頑張るとか、早期解決にはつながらない方法も述べていた。そのため、被害者と支援者が一致して国会議員に向かって働きかけていかなければならない」。
3月9日、全国ろうあ連盟は「大阪高裁判決に対し、国が上告したことに強く抗議する(声明)」で次のように怒りと決意を表明している。
「国が上告した行為は、再び、被害者に対しての非人道且つ差別的な行いをし、人権回復の芽を摘むという誤りを犯すものです。私たちの思いと願いは再び裏切られたのです。国が今まず第一にするべきことは上告ではなく、これまで行ってきた被害者の調査の結果を公表し、二度と同じ過ちを繰り返さないために、当事者団体や支援者団体と共に検証を行い、全ての被害者への救済に取り組むべきです。全日本ろうあ連盟は、大阪高等裁判所の判決そして被害者の思いを踏みにじった国の上告に強く抗議し、これからも全ての被害者全員の救済を求めると共に、一人ひとりの人権が守られる差別のない社会の実現を目指して、全国の仲間たちと取り組む決意です」。
この怒りと決意にこたえ、国への抗議や自治体へのはたらきかけ、被害者らへの支援をともに行おう。各地の訴訟への支援は、〝社会課題の解決を目指す訴訟(公共訴訟)〟の支援に特化したウェブプラットフォーム「CALL4(コールフォー)」(*2)を通じた寄付として行うこともできる。 (5月16日 KJ)
*1、UDトーク:「音声認識+音声合成」機能を使った視聴覚障害間コミュニケーションや会話のみえる化などのUD(ユニバーサルデザイン)を支援する無料アプリ。
*2、CALL4:https://www.call4.jp/index.php
〈資料〉
「優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会」発足のご報告
共同代表
大竹浩司(一般財団法人全日本ろうあ連盟)
大橋由香子(優生手術に対する謝罪を求める会)
桐原尚之(全国「精神病」者集団)
利光恵子(おおさか旧優生保護法を問うネットワーク)
藤井克徳(日本障害者協議会)
藤原久美子(DPI女性障害者ネットワーク・優生保護法による被害者とともに歩む兵庫の会)
1948年から1996年まで存在した優生保護法について、国は、同法の下で障害等を理由に不妊手術や人工妊娠中絶を強いられた多くの被害者に対し、十分な謝罪や補償をせず、検証や総括もしないまま、いまだに深刻な障害者差別や偏見を生み出しています。
優生保護法がもたらした問題は、日本社会の戦後最大の人権侵害です。先の2月22日の大阪高裁、3月11日の東京高裁での判決では、優生保護法がいかに重い罪をもたらしたのかが、より明らかになりました。
2018年に仙台地裁から始まった優生保護法裁判は、全国8都道府県の地裁へとひろがり、その裁判を支援する運動の輪が各地で広がっています。
2021年12月10日、各地の裁判支援の会や全国規模の障害団体が集まり、「優生保護法裁判の勝利をめざす全国集会実行委員会」として、全国的な連帯と協同の取り組みが始まりました。この間、私たちは、原告、被害者・家族の会、弁護団と共に、2月8日には大阪高裁・東京高裁の勝利判決をめざした院内集会、3月4日、3月17日には、大阪高裁、東京高裁の逆転勝利判決に対し国に上告しないでと訴える院内集会、要請活動、署名活動、議員訪問活動などを行い、3月23日には厚生労働省前でアピール行動を行いました。しかし、国は、両高裁の判決を不服とし上告の申入れを行っています。
私たちは、より早期のそして全面的な解決を求め、以下の理念及び目標を掲げ「優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会」を発足したことを、今日ここにご報告いたします。これからも、共に手を携え進んで行きますので、みなさんのご支援をよろしくお願いいたします。
「優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会」理念および目的
*優生思想に基づきつくられた優生保護法問題の全面解決をめざし、障害者差別をなくすことをめざします。
*全国の関係者が手を携え、裁判の勝利をめざします。
*優生保護法問題の全面解決に向けて、優生保護法被害者・家族や弁護団と連携し、国と交渉を行ないます。
*優生保護法問題や各地裁判についての意見や情報、活動の交流を行ないます。
*市民社会に、広く優生保護法問題を知ってもらう活動を展開します。
以上
週刊かけはし
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009 新時代社